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【寝子祭】歌って踊って楽しんで
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軽音楽部のライブ
:メインステージのラスト
呉井 陽太
は北校舎の屋上に向かって手で合図を送る。ゆっくりと巨大な白い布が下りてきた。地面から一メートルくらいで止めて維持するように声で伝えた。急いで南校舎へと向かう。
「用意ができたよぅ」
陽太の声に
蜂矢 時生
が着物姿で顔を覗かせた。モザイクアートの手を休めて頼まれていた紐を下ろした。同じように数メートルの間隔を空けて紐がぶら下がる。そこには一人の協力者がいた。
陽太は紐を握ると別の者に大きく手を振った。一時的に左右の人の流れを断ち切る。その間に紐を持って北校舎に急いで戻った。布の端に空けた穴に紐の先端を結び付ける。横手を見ると協力者が親指を立てていた。
「引っ張っていいよぅ!」
南校舎の時生に向かって大きく両手を振ると左右の紐は同時に引っ張られた。間もなく水平になった布はするすると伸びて固定され、巨大な天幕へと変貌を遂げる。
陽太は左右の止めていた人の流れを復活させた。
それを機にステージに大量の機材が持ち込まれた。スタッフジャンパーを着た人々が手際よくセッティングしていく。全体を見渡せる位置には
羽黒 空
がいた。小声でスタッフを呼び止めては端的な指示を出す。
一目で出演者の一人とわかる。黒い衣装は艶やかに光るノースリーブワンピース。同色の紐の無いスリッポンを履いていた。
数人掛かりで大きな円盤状の物体を運んできてステージの中央に慎重に下ろした。その上にドラムセットやキーボードを設置した。野外用のスピーカーをステージの両端に据える。音量の大きさで音が聞き取り難くなるのを防ぐ為にモニタースピーカーも用意した。
ステージの奥にスチール製の骨組みを作る。天井に当たる部分にはステージ全体を照らす量のスポットライトを取り付けた。ステージの縁に近いところには二つのムービングライトを置いた。
照明の動きは全て一台のコントローラーで行う。スピーカーの裏には陽太がいて練習の日々を思い出すように指を動かしていた。
ステージは真の姿を人々の前に見せようとしている。
ステージ裏に軽音楽部の部員が集まって円陣を組んでいた。
雨寺 凛
が発破を掛けるように強い口調で言った。
「中庭メインステージのラスト! 軽音楽部のメドレーライブだよ! 皆、心の準備はできてるよね!」
「メインステージのラストとか、ヤベェな」
吾妻 優
の表情に硬さが見られる。
仲村渠 鳴
は笑みを浮かべた。
「ここまできたら、やるしかないわね」
「僕はメインでやるの初めてだから楽しみー♪」
千明 優輝
の無邪気な笑みに優は、ああ、と答えた。
「やるだけやってやるさ!」
黒依 アリーセ
は静かな口調で想いを語る。
「幾つものライブをこなしてここまで来たけど、今日は特別よ。曲数は過去最高で一つ一つに皆の想いが詰まっているわ。音を大事にして表現しなくては」
その言葉を噛み締めるように聞いていた
羽黒 空
が口を開いた。
「そうですね。最初は小さなライブから始まりましたが、ここまで大規模になりました。いずれ、あたしも学校を卒業したら」
「卒業したら、どうなるの?」
夢宮 瑠奈
が不思議そうに聞き返す。空は薄い笑みで左右に頭を振った。
「いえ、なんでもありません」
ふと頭に全員の作った曲が過る。
――皆の歌詞には『空』という文字がありました。奇しくも自分の名前にも……。
とても不思議な縁を感じます。このメンバーでもしかしたら……。
突然、瑠奈は思い出したという風に声を出した。
「歌う順番は覚えているよね!」
そこで
呉井 陽太
が軽く手を挙げた。
「オレが担当だから心配しなくていいんだよぅ」
「そうだったね。もう一つの照明は?」
「操作方法は完璧に覚えたねぃ。あとは皆の曲のイメージに合わせてタイミング良く照明を当てて、ステージを盛り上げていけるように頑張るよぅ♪」
アリーセは自身の左胸に掌を当てた。
「最初が私ね」
「黒依の歌で客を魅了したあとは俺の全力の声をぶつけてやる!」
時間が迫るに連れて優の士気が上がってきた。陽太は嬉しそうに笑う。
「赤い照明に相応しいテンションだわー」
そこに空の連れてきたスタッフの一人が現れた。ステージの準備が終わり、ビデオ撮影も可能であることを告げた。
凛は円陣で肩を組んだ。一つの輪になって最後の言葉を掛ける。
「軽音部の部長として最後に決めるね! このライブ、皆の力で限界を超えるよ!」
それぞれの想いが重なり、弾け飛ぶように円陣が崩れてステージへと向かう。
太陽の残滓が空に微かに残る。仄暗いステージの中央に白いスポットライトが当たった。
吉祥寺 黒子
がマイク姿で現れた。
「中庭メインステージはこれで最後だぜ。お前ら、まだ力は残っているよな!」
肌寒い格好で観客に向かって熱く語る。観客は歓声の大きさで余力を伝えた。その中にはジャージを着た
十文字 若菜
の姿もあった。わくわくした様子でステージを見詰めている。
壬生 由貴奈
が小走りでやってきた。遠いところからステージを眺める。
「司会は任せちゃいますかねぇ」
その場で観客の一人になることを決めた。
「じゃあ、始めるか! 最初はしっとりと聞かせるぜ。闇の中に咲く、一輪の赤い薔薇だ」
黒子は薄闇の中に消えた。観客のざわめきも囁きへと変わる。
青白いスポットライトが中央に当たり、
黒依 アリーセ
が出現した。着ているビスチェは赤い。羽織る黒いボレロ、それにロングスカートの組み合わせは闇を纏った一輪の薔薇のようであった。
マイクスタンドの前でアリーセは何かを求めるように手を伸ばす。そして一言、『Light』と曲名を告げて独唱に入る。
「
沈む夕陽 伸びた影の中 ひとつ ひとつ 光が灯る
映し出す 虹色の光 ひとり ひとり 笑顔が浮かぶ
」
ゆっくりとしたドラムに鳴くようなギターが追い掛ける。厚みを増すベースの音で重いバラードへと導く。
「
溶け合う光が 照らすステージ 触れ合う肩が 伝える温度
夜の帳が 降りるけれど 祭の幕は まだ降りない
」
アリーセは微かに顔を上げた。空の彼方に届くような澄んだ高音に心を乗せる。彼女を照らしていた青白いスポットライトは幾筋にも分かれ、観客の方へと緩やかに広がっていく。
「
音の波紋が 重なり合う リズムに乗って 体を揺らす
弦の響きが 重なり合う 皆に届いて 心を奪う
澄んだ声が 重なり合う 空に溶けて 星を降らす
カケラを集めて 皆で乗せる 飾りの頂上 輝く星を
この先ずっと 心に残る 祭りの最後 輝く笑顔
」
アリーセに微かな笑みが浮かぶ。静かに手を下ろしてマイクに唇を寄せた。
「ありがとう」
その一言で観客は我に返った。
収まらない拍手の中、円盤状の舞台がアリーセを乗せた状態で回り始める。
黒子はマイクを握り締めて叫んだ。
「お前ら、熱い炎に焼かれたいよな!」
観客が声にならない叫びで答えた。
「熱い魂は不滅だぜ!」
観客を焚き付けて黒子は速やかに場を譲る。
「次は俺の番だぜ!」
吾妻 優
は興奮の極みにあった。拳を突き上げた姿でマイクスタンドの前にきた。
「今の俺は最高に熱いぜ!」
スポットライトが一瞬で赤く染まる。のろのろとステージ上を動いて爆発の時を待った。観客の心にも飛び火して火柱のような声援が上がる。
「最初から全開で限界の『Blaze』だあああぁぁ!」
シンバルの乾いた音から重々しい連打が始まる。ギターが空間を切り裂き、けたたましいキーボードが無邪気に暴れた。ベースの音も重なって熱い声が火炎と化して観客に襲い掛かる。
「
赤く心を燃やして 闇を切り裂け Fire!
恐れるものは何もない
Get out! Get out! Get out!
走れ!光を目指して
叫べ!声をからして
歌え!想いを重ねて行け 必要なのはその心だけ!
夢と希望を胸に抱き 壁を超えて行け Haigher!
さぁ拳を振り上げろ
Rise up! Rise up! Rise up!
走れ!この道を真っ直ぐに
叫べ!魂を震わせ
謳え!歌声を集めて
空の果てまで 繋がる Melody!
」
スポットライトの全てが激しい明滅で観客を襲う。二つのムービングライトが暴れ回り、布地の天幕を焦げ付かせるような光を浴びせた。観客は熱狂の渦に引き込まれ、全身を燃え上がらせて暴れた。
優はマイクスタンドに倒れ掛かるような姿勢で荒い息を吐いた。
「お前ら、サンキューな」
「面倒臭がり少年よ、最高に熱かったのである!」
独特な言い回しが
ン・ガイ
を彷彿とさせる。回る舞台の上で優は観客の方を見て笑った。
「……シロネコ、どこに埋まってるんだよ」
黒子は落ち着いた調子でスポットライトを浴びる。
「細身の身体に熱い魂を宿して静かに燃やす。大人しそうな見た目に騙されて鮮やかなスティック捌きを見逃すんじゃないよ!」
すっと黒子は暗がりに消えた。
代わってドラムセットに囲まれた
羽黒 空
が現れた。手を高々と上げてスティックを回す。腹に響くバスドラムの連続にシンバルを合わせた。ブラックライトの明滅が音と同調する。
言葉は必要なかった。原始的な響きに観客はその場で跳んだ。誰よりも空に近づこうと身をぶつけて競い合う。
千種 修也
はサッカーで鍛えた脚力を活かして跳んだ。
「青春してる感じですげー楽しいし、あの人かっけー」
隣にいるはずの兄の反応がない。修也は顔を傾けた。
千種 智也
は普通に立った状態でステージを眺めていた。考え込んでいるような表情にも見える。
俺が軽音部に入っていたら、あのステージに立っていたのかな。やっぱり、輝きが違うよな。……別に今の生活に不満があるわけではないんだ。俺は普通を満喫している、はずで――。
ふいに智也は横を向く。一瞬、修也の驚いた顔が見えた。
「べ、別に兄貴なんか見てねぇよ!」
「俺は何も言っていないが」
二人が言い争う声は激しいドラムの音に消し飛ばされた。
嵐は過ぎて音が小さく洗練されていく。空はドラマー専用のマイクに向かって歌う。アリーセがひっそりと寄り添うように声を合わせた。
「
全ての空が 今、一つに
やがて黒い雲の空も まるで夜明けの 心地よい天空
」
全ての楽器の音が合わさる。静かでいて力強い。目的に向かって前進する感覚を共有した。
汗なのか、涙なのか。目尻で混ざり合って一つになった。空は心地よい音に乗る。皆と一緒に雄大な空をどこまでも旅をした。
最後は小気味よいドラムの音で戻ってきた。
沸き起こる拍手に空は軽く手を上げて答えた。
舞台が回り始める。僅かに起きる風を空は火照った顔で受け止めた。
スポットライトが黒子を照らす。マイクを握る手の小指を立てた。
「次の曲はいろんなアイに溢れているぜ! お前らのアイはなんだ!」
黒子は耳を傾けて飛び交うアイに頷いて見せる。
「いいぜ、いいぜ、最高だぜ! そろそろ始めるぜ! アイに溢れたアイドルの歌だ!」
黒子がステージの中央を指差した瞬間、ピンクと緑の派手なスポットライトを浴びて
夢宮 瑠奈
が登場した。
ふんわりとした白を基調にしたブラウスにスカートの一部の緑が映える。袖やスカートの裾にはバッジが付けられていた。曲のテーマに沿ったハートもあった。
「みんなー、あたしのアイを受け取ってー」
受け取る、と野太い声の大合唱。アイドルのコンサート会場に様変わりした。
瑠奈はキーボードを弾き始めた。指は鍵盤の上をスキップした。ドラムやベースが付いていく。ピンクと緑の照明が彼女の周りを軽やかに踊った。
「
キミがいるこの場所で ユメを見るこのときに
ボクといて感じよう アイに染まるこの空を
きっかけは小さなことなんだ
それでも間違いないんだ
気づいたら消えないんだ
君のことが消えないんだ
キミといるこの場所で ユメへ向かうこの時
ボクのそばに居てよ アイが闇に溶けても
キミといるこの場所は ユメのようなひととき
ツキと星の光 アイを守る切り札
今ホノオを燃やして アイを迎えに行こう
」
ピンクと緑のスポットライトが観客に向かって交互に点滅する。噴水はほんのりとピンクに染まり、愛に溢れているようだった。
遠巻きに眺めていた
本条 小萩
は腕を組む。品定めするような目を向けた。
「ふむー、大切な人の存在をイメージした歌なんですね。切ないけど前向きです。小萩が求愛されているみたいで少し恥ずかしくなりますね。何か冷たい物でも飲みに行きます」
誰かに断りを入れるような口調で歩いていった。
「みんなー、アイを大切にー!」
瑠奈が手を振ると観客は両手で返した。
舞台が回ると同時に黒子が現れた。前髪に手を入れて顔を僅かに上げる。憂いを帯びた目でマイクに口を近付けた。
「心は死なねぇんだよ。そいつは生きてるんだ。そんな絆の歌だぜ」
しんみりした言い方で黒子は闇に消えた。
鮮やかな紫のスポットライトが
仲村渠 鳴
を照らし出す。白を前面に押し出したワンピースに紫のラインが入っていた。
キーボードの鍵盤に指がそっと触れる。鳴はマイクに口を寄せた。
「曲は夕暮れをイメージした『たそがれ』です。激しくはないけど静かな情熱を秘めた曲を聞いてください」
少し畏まった言い方に観客は姿勢を正した。
乃木 成美
は買い込んだジュースの袋を足元に置く。中程よりも後ろのところで鳴の演奏を待った。
電子音とは思えないピアノの音が悲しさを奏でる。紫のスポットライトが水面の波紋のようにゆっくりと広がっていく。歌い始める直前に音に力が宿り、アリーセのコーラスが柔らかく包み込んだ。
「
ひらり 木の葉が舞い落ちる たそがれ
草木も海も紫に染まり 私の影にも色を落とす
優しい風に包まれ 空と溶け合う一瞬
幾重もの想いが重なり 弾けゆく
届け、私のコトバ
星の瞬きより早く 消えゆく声だとしても
届け、あなたのココロへ
奏でる想いは永遠 決して朽ちることはない
その先にあるのは光 無限大の未来
この翼が闇に溶けても 歌い続けよう
いつか絆は繋がる そう信じて
」
人の心に寄り添うような歌い方にすすり泣く声が聞こえてきた。ピアノの音色が余韻を高めていく。
成美は黙って聞き入った。反対に心の中では饒舌で応援の声を送り続けた。鳴の視線がこちらを向いた時には懸命に瞬きをしたが、まるで見えていない様子であった。
「でも、表情がいいね」
笑顔で頷くと周囲に倣って大きな拍手を送った。
スポットライトに照らされて黒子がステージに現れた。目元を擦っていた姿を見られ、バカ、早ぇよ、と照明係に悪態を吐く。
「ま、まあ、なんだ。目にカブトムシが入っただけだ」
黒子は軽く錯乱していた。数回の深呼吸で立ち直り、紹介を始めた。
「ああ~、俺も空に飛び立ちたいぜ。無性にそんな気分なんだぜ。お前ら、爽やかロックで昇天だぜ!」
水色のスポットライトの中から
千明 優輝
が、わーい、と声を上げそうな姿で現れた。ウィッグの装着で髪は長い。衣装は単なるTシャツではあったが一部の大人を狂喜させた。丈が長いせいでスカートのように見える。その中はどうなっているのだろうか。想像は尽きない。
「ちゃ、ちゃんと穿いてるもん!」
恥ずかしそうな顔でショルダーキーボードを肩に掛け直す。その愛らしい仕草に声援とは微妙に異なる声が上がった。
優輝は練習の日々を思い出した。
心が軽くなったよ。飛んでいるのかな。今度は僕が飛ぶ番だね。
「それじゃあ、盛り上げていくよー」
優輝はキーボードで前奏を繰り返す。音に馴染んだ身体が滑らかにスイングを始めた。
「『Fly to the Sky』、聞いててください♪」
前奏から抜け出して広い世界に飛び立った。音の広がりに観客の身体も自然に揺れる。心地良い風に吹かれていた。目に優しい水色のスポットライトが真昼の大気の色のように思えた。
優輝は空色の目でマイクに向かう。
「
「どこへ向かえばいいの?」
何もわからなくなって 暗い部屋で 一人立ち止まっていた
カーテンを開けたら 一筋の光が差し込んできた
あの空はどこまでも広がっていて どこまでも続いているから
空に向かって飛び出せば 未来へと飛んで行けるかな?
迷わずに駆け出して あの空を目指して一歩踏み出そう
余計な悩みも不安も 邪魔なものは全部投げ捨てて 空へ飛び立とう
間違いなんてないから 自分の信じる方へ Fly to the Sky
」
優輝は歌いながら空を飛んだ。心だけでは無くて自身の力で飛翔した。
ろっこんが発動した自覚はなかった。大勢の人達が原因で不発に終わったのかもしれない。何故か、そのことが嬉しく思えた。
「ありがとう、みんなー。僕はちゃんと飛べたよー!」
踵を上げて両手を大きく振った。舞台が回って別れを惜しむ拍手がいつまでも続く。
ステージの明かりが一斉に消えた。端の定位置にスポットライトと共に黒子が出現した。
「お前ら、わかっているよな! これが最後だぜ!」
声援の塊が飛んできた。黒子は真正面で受け止めて表情が生気に満ちる。
「ここはパーティー会場だ! あとは入り乱れて踊るだけだ! サイケデリックを貫こうぜ!」
場は十分に温まった。歓声が収まらない。膨大な熱量を孕む。
ステージ全体がオレンジの光に包まれた。
雨寺 凛
がTシャツ姿で中心に立つ。袖にはオレンジ色の虹が描かれていた。胸には
相棒のギター
が赤く燃えて見える。
凛は手前のマイクを掴んだ。
「みんなー、今日は軽音楽部のライブを見に来てくれてありがとー! ここまでの私達の曲、楽しんでくれましたかー!」
言葉の意味がはっきりと聞き取れない。砕かれた感謝の言葉が怒涛のように押し寄せてきた。
凛のマイクを握る力が強くなる。
「ラストは文化祭のテーマ『ダンシング人類愛!』をイメージして、踊れるロックな曲を作ってきたよ! それでは聞いてください、『Sunshine Rock』を!」
凛は出だしのタイミングを計る声を出し、勢いよくギターを掻き鳴らす。ドラム、ベース、キーボード、全ての音を引き連れて走り出した。先を照らすようにスポットライトが一斉に伸びる。二つのムービングライトは止まることを許されず、天幕や校舎を引っ掻き回した。
観客は音と光に身を委ねてひたすらに踊る。
横嶋 下心
は周囲と尻をぶつけ合って暴れた。光の乱舞と激しく入れ替わる立ち位置に性別を確認する間もない。
「イエーイ!」
自然に叫んでいた。発熱した頭の片隅にギターの音が届く。
俺もギターとかやってみようかな。
仄かな思いは弾ける歌声に呑み込まれていった。
「
輝く空の下へ 駆け出せ!
集まった仲間と 声を交わせ!
秘めた思い全て 曝け出せ!
何もかもを忘れて 踊り明かせ!
Sunshine Rock! 響くメロディ
音に身を任せ 全力でDancing!
Sunshine Rock! 溢れる光
太陽のような 笑顔がShining!
じっとしてなんかいられない!
Sunshine Rock! 弾けるリズム
勢いに任せ 空高くJumping!
Sunshine Rock! 輝くイノチ
太陽のような 魂がBurning!
この気持ちは止められない!
じっとしてなんかいられない!
」
軽音楽部の演奏の全てが終わった。
鳴り止まない拍手の中、全員がステージに横一列に並んだ。誰ともなく手を繋ぎ、高々と両手を上げた。全身に浴びる称賛がじんわりと身体に沁みていく。心の奥底から溢れる感情は笑顔と嬉し涙になった。
黒子は司会としてマイクを握る。
「今日は皆、本当にありがとう! 最高に盛り上がったぜ! まだ寝子祭は終わりじゃない。最後まで楽しんでいってくれよな!」
陰の功労者にも分け隔てない拍手が送られた。
軽音楽部の部員、全員がステージ裏に集まった。各々が労いの言葉を交わす。
そこに
乃木 成美
が大きなビニール袋を提げて顔を出した。鳴の姿を見つけて駆け寄った。
「とても良かったよ」
「成美、聞いてくれたのね。どういう感じで?」
「歌声が良かった。なんていうのかな、強い思いを感じ取れるというのかな?」
黙って聞いている鳴に成美は困った顔で笑った。
「ごめんね、あんまりいい言葉が思い浮かばなくて」
「いいよ。聞いてくれてありがとう」
「あと、これ」
「お疲れ様ー!」
呉井 陽太
がクーラーボックスを持ってきた。中身はジュースで成美と種類までかち合った。
微妙な空気になる前に陽太が機転を利かす。
「オレのジュースは空ちゃんのスタッフに飲んで貰えばいいよぃ」
「なんか、ごめんなさい。あの、鳴さん、時間があるなら喫茶店なんてどうかな?」
「ここでジュースを飲むのよね?」
「あ、ああ、そうだよね。なんか、さっきのライブが凄すぎて頭がぼーっとしてたみたいだ」
陽太は目を細めて成美に耳打ちした。
「キャンプファイヤーが残ってるんだよぅ」
一瞬、表情が明るくなったものの、成美は否定の意味で頭を振った。
「ライブのあとだから」
「真面目だねぃ」
陽太は成美の肩を励ますように軽く叩いた。
「あー、忘れてたよ!」
ライブ直後、若干、テンションの高い瑠奈が走り出す。似たような状態の凛が叫んだ。
「どうしたの、瑠奈ちゃん!」
「モザイクアートの写真を撮り忘れてたのよぉ。今から行ってくる!」
ステージ衣装のまま、瑠奈はスカートを翻して走っていった。
後ろに結んだ赤いリボンを弾ませて
結城 日和
が南校舎の中を歩いて回る。スカートは本人よりも雄弁でそわそわと揺れて行き先に惑う。廊下を行き交う人数は減って見通しはそれほど悪くない。
「どこにいるのかなぁ」
駄々をこねる子供のように廊下の左右を何度も見て、いた、と一方に声を上げて駆け寄る。向かう先にヴァイオリンケースを持った
神嶋 征一郎
が歩いていた。
「神嶋くん~って、わっ、その姿……書生さんだよね! 神嶋くん、似合ってるね!」
「そうか。意外な反応だな」
「そうだ! 上級生連合の喫茶店で『ミルクホール』ってお店があるんだよ! そこに行こう! きっと雰囲気に合って素敵だと思うから!」
反論を許さない早口で日和は征一郎の手を掴んだ。先頭に立って廊下をずんずんと歩く。
「積極的だな」
征一郎の一言に日和は瞬間的に手を離した。赤らむ頬を掌で挟み込み、奇妙な踊りを披露した。
「行くんだろ」
3年1組の教室に征一郎は入っていった。空いている席に勝手に座る。遅れてきた日和に正面を手で勧めた。
古めかしい着物にフリルエプロンを付けた
丹羽 紅葉
が小股で歩いてきた。
「神嶋君、勝手に座らないでよ。接客のしようがないわ」
「手間が省けただろ」
「はい、こちらがメニューになります」
紅葉はにこやかな顔でメニューを日和に渡した。
「ミルクホール、素敵なところだねー。メニューメニューと。私は、このシベリアって言うのとミルクにしようかな? 神嶋くんはどれにする?」
「少し演奏で疲れた。甘い物だな」
「じゃあ、プリンアラモードとレモネードだね!」
「レモネードはいいが」
「はい、わかりました。少しお待ちください」
紅葉は早々に引っ込んだ。横目で睨み据える征一郎に日和が聞いた。
「私が勝手に頼んだけど、神嶋くんってどんなものが好きなの?」
「甘過ぎねぇものだな」
「えーと、プリンアラモードはどうなんだろう?」
「自分に聞くんじゃねぇ」
征一郎は素っ気なく返した。日和は突然の笑顔で言った。
「私の好きな食べ物はグラタンだよー。ちなみに甘いものは別腹!」
「自分が質問したか? それでなんの話だ。ここまで強引に引っ張ってきて何もないことはないだろ」
「あ、響也くんとの演奏、すごくよかったよ!」
日和の喜ぶ姿に征一郎の表情が少し和らいだ。
「篠崎との演奏に自分も悔いはねぇ」
「うん、すごく素敵だった。これが一番、伝えたかったことなんだけど」
注文していた品々がテーブルに運ばれてきた。征一郎はレモネードに口を付けた。喉を通る感触が気持ちいいのか。少し目を細めて日和に厳しい表情を向けた。
「結城、二番目に伝えたいことはなんだ」
今までの言動とは打って変わって日和は少しの間を空けた。
「私の演奏に、神嶋くんや響也くんみたいな人を引き付ける力あったらなぁ…ううん、本当は違う。素敵な音楽を楽しむだけで私は満足なのにね……」
言葉が途絶えた。征一郎は先を促すことなく、黙って状況を見ている。自然と日和の口が開いた。
「ただ、お父さんが認めてくれなくて…高校で結果が残せなかったらバイオリンをやめろって。私はそんな気はないんだけど……。お父さんとの音楽の価値観が違い過ぎて、ちょっと悩んでる」
「反対されてやめられるぐらいならやめろ。でも、てめぇはそうじゃねぇ筈だ。今の、その気持ちが答えだ。大事にしろ」
日和は大粒の涙を零した。征一郎に非難の目が集まる。
「……結城、自分のプリンアラモードをやるから泣くんじゃねぇ」
「え、くれるの? ありがとう」
神嶋くんの言葉だけでも涙が出るくらいに嬉しいのに…ありがとう。
心の中で感謝しながら日和はスプーンを手に取った。プリンと生クリームを同時に掬って口に入れる。
「とっても甘くて美味しいよ」
「そうか、助かったな」
「ん、なに?」
「なんでもねぇ」
征一郎はレモネードを一気に飲み干した。
八神 修
は正門に足を運んだ。電動式のアーチは煌びやかに稼働していた。中央にはアフロを着けた校長が躍る。四匹の子猫は周囲を飛び跳ねて場を盛り上げた。更にバンドを象徴するギターやドラムの動くギミックが音でなく、目を楽しませる。
「これは俺の……」
自作の踊る猫バッジを見つけて、そっと取り外してポケットに入れた。
篠崎 響也
は受付で集めた大量の写真を持って南校舎に走った。休むことなく屋上まで駆け上がるとさすがに息が切れた。他の者達は黙々と手を動かして写真を貼り付けていく。
「これが残りの写真だ」
大量の写真を渡して瞬時に作業に加わった。日が落ちて懐中電灯を持っての作業になった。緊張で指が震える。
「演奏以上だ」
雑にして一枚でも剥がれれば、その一人の好意が無になる。その思いに突き動かされ、夢中になって貼り付けた。
「これでいけるはずだが」
今度は下ろす作業が待っていた。第一グラウンドの方に向かってゆっくりと下ろしていく。急ぎたい気持ちを抑えて、同じ速度を意識した。下で待機していた者が叫んだ。
「オッケーです!」
その声に響也はその場にへたり込んだ。
「……間に合って良かった」
眠るように項垂れた。
生徒達は心地よい疲労の中にいた。出し物の売り上げを共に喜び、記念撮影をする者達がいた。残った食材を使って腹を満たす。手作りの物を仲間達に配る。そのような者達もいた。当然、打ち上げを考えている者も少なくない。
祭りに関わった全ての者達が力を出し切って今を噛み締めていた。
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担当ゲームマスター
黒羽カラス
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
学校生活
定員
1000人
参加キャラクター数
145人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年08月22日
参加申し込みの期限
2015年08月29日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月29日 11時00分
参加キャラクター一覧
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