祈りの家を隠すように、又は縛るように
白を纏った野薔薇が生い繁る。
入り口付近の外壁には薄汚れた小さなプレートが嵌め込まれており
「九夜山勿忘草教会」という文字が刻まれているのが確認出来る。
この教会の正式名称らしい。
「親密な人をあまり作らない」って、そう言ったものね。
誰にでもこんなに親切なわけじゃなくて
私を気に入ってくれたから良くしてくれたの?
もしそうであれば…うん。とても嬉しい。
ええ、「奇跡」。
それ以外にも、「喝采」「夢叶う」「神の祝福」…。
(すらすらと幾つかの言葉をあげて)
僕も楽しくて話し込むのはお嬢さんが初めてかもしれない。
(無邪気に笑う少女に、自分も笑いかけ)
青い薔薇の花言葉は聞いたことがある気がするよ。
確か「奇跡」というんだっけ?
ふふ。大袈裟に言っているわけじゃないのよ。
本当に、本当に、初めてなの。
白露さんは親切な人ね。
(裏表なく、ただただ無邪気に楽しげに笑い)
ねぇ、青い薔薇の花言葉ってご存知?
(唐突にそんなことを聞く)
お嬢さんのお気に召したようで何よりだ。
(嬉げに笑いながら)
そこまで評価してもらえるのは嬉しいよ。
僕も冴来嬢の笑顔が見れて良かったしね。
ああ、やっぱり。
(手の中の仕掛けをみて口元に手をやり可笑しそうに笑い)
私もね、前に何処かで同じものを見たの。
ろっこんじゃない、って言ったから
そうじゃないかなって思ったのだけど、やっぱりそうだった。
仕掛けは知っていたけど実際に見たことは無かったから
一度目の前で見てみたかったの。
白露さんは不思議な人ね。
私、こんなに楽しい気持ちでいられるのは
きっと生まれて初めてだわ。
おや、ばれてしまっていたか。
(そう口にしながらも、悪戯が成功した子供のように笑う)
前に本か何かで目にしてね、一度やってみたかったんだ。
(そして青いインクを染み込ませた綿を手のひらを開いてみせる)
ありがとう。
(差し出された薔薇を受け取り、大切そうに胸へ抱き)
そうね。少しの間だけ。
だってこれは魔法じゃなくてマジックだもの。
種も仕掛けもあるんでしょう?
(そう言って擽る様にくすくすと笑う)
ふふふ、僕の魔法じゃあ少しの間だけなんだけどね。
(そう笑いながらどうぞと少女にな差し出す)
ーー凄いわ、白露さん。
まるで魔法使いみたいね。
(そんな感想と共に、とろりと微笑む)
うん…。………。
(指示された通り彼が持つ薔薇の花をじっとみつめる。
緩やかにと白が青へと染まっていく光景を見れば
静かに感嘆の息を漏らして)
調べるだけでも楽しそうだね。
(薔薇を丁寧に扱っている少女の姿を、
後ろから腕を組み、柔らかい笑顔で見守る)
ありがとうお嬢さん。
それじゃあこの白い薔薇をよーく見ててご覧。
(受け取った白い薔薇の茎を握り、少女に見えるように持つ。
じっと見つめるならば、しばらくの時間が過ぎた後、
ゆっくりと白い薔薇が青く染まっていくのが見れるだろう)
(繋いだ手をそっと解き、薔薇へ近づいて)
花言葉って本当に沢山あって
贈る本数で意味が変わったり
花以外の部分にも言葉がつけられていたりもするの。
薔薇なんて、特にそう。
(ごめんね、と彼に聞こえるか聞こえない程度の
極小さな声で薔薇へと語りかけ
手を傷つけぬよう気を配りながら棘を1つ1つ折り
大切そうに一輪手折る。
摘んだ薔薇を眩い月光に翳し、棘が残されていないかを
よくよく確認し終えれば静かに安堵の息をつき)
はい、白露さん。
これをどうぞ。
(摘んだばかりの薔薇を手に彼の元へと戻り
柔らかな微笑みと共にそれを差し出す)
花言葉は色だったり、人に贈るときにも意味がある花とかいっぱいあったよね。
よく知られてるものしか耳にしたことないけどね。
ありがとう。
薔薇を摘んだことがないから助かるよ。
(そう言いながら邪魔にならないように手を離そうとする)
私も花は好き。
見た目も綺麗だし、花言葉も色々あって飽きないわ。
趣味で時々調べたりしてるの。
…そういえば、薔薇を摘みにきたのよね。
今取ってくるから少し待っていて。
知る人ぞ知る、って場所なわけか。
こちらこそお嬢さんに教えてもらえてうれしいよ。
花は色々種類があって、見頃があるから飽きないね。
薔薇に限らず、花を見るのは好きかな。
世話されて咲いたものも、自然に咲く花も、どちらも綺麗だからね。
春夏秋冬、朝昼晩にも色々な表情を見せてくれるからね。
独り占めは勿体無いけど
変に知られて人が押し寄せる様になっても困るし
他の人には余り教えていないの。
気に入ってもらえて嬉しい。
品種にもよるけど、薔薇は大抵5月ごろ一斉に咲き始めるの。
枯れ始めるのはもう少し先。
だから、今が一番綺麗。
この島には他にも綺麗な薔薇が咲く場所があるのだけど
白露さん、薔薇は好き?
こんな綺麗な薔薇に招待してもらえるなんて嬉しいな。
あまり花には詳しい訳では無いけど、
……うん、とても綺麗だ。
(月光の下で咲き誇る野薔薇を見渡し、素直な言葉をこぼす)
薔薇は今の時期が見頃なのかい?
うん。
ずっと昔からあるみたい。
今は薔薇が一番綺麗に咲く時期なの。
独り占めするのは勿体無いし
散ってしまう前に貴方を案内できて良かった。
(嬉しそうに笑って、そう)
お嬢さんが言っていた通り、薔薇が綺麗に咲いているね。
(ふわりと少女に笑いかける)
僕のろっこんは僕が怪我したりとか、調子が悪い時に使えるんだけど、
あまり怪我しないようにしてるから、使う時があまりなくてね。
ここが話してた、薔薇が綺麗に咲いてる教会かな?
(手を繋いだまま見渡し)
随分と昔からあるのかな、この教会は。