祈りの家を隠すように、又は縛るように
白を纏った野薔薇が生い繁る。
入り口付近の外壁には薄汚れた小さなプレートが嵌め込まれており
「九夜山勿忘草教会」という文字が刻まれているのが確認出来る。
この教会の正式名称らしい。
(繋いだ手をそっと解き、薔薇へ近づいて)
花言葉って本当に沢山あって
贈る本数で意味が変わったり
花以外の部分にも言葉がつけられていたりもするの。
薔薇なんて、特にそう。
(ごめんね、と彼に聞こえるか聞こえない程度の
極小さな声で薔薇へと語りかけ
手を傷つけぬよう気を配りながら棘を1つ1つ折り
大切そうに一輪手折る。
摘んだ薔薇を眩い月光に翳し、棘が残されていないかを
よくよく確認し終えれば静かに安堵の息をつき)
はい、白露さん。
これをどうぞ。
(摘んだばかりの薔薇を手に彼の元へと戻り
柔らかな微笑みと共にそれを差し出す)