灯 斗南はいたって無趣味な男だ。音楽にもオシャレにも部活動にも勉強にも興味がない。そんな彼だが毎週必ず欠かさず見ているのが特撮ヒーローもの、「マスカレイダー」シリーズである。元々は昭和に作られたマスカレイダーを平成になって復活させるとそのシリアスな展開と主人公ダイゴ役の俳優の熱演から人気沸騰、以降シリーズ化されている。
そして。舞台は再び倉庫街に移る。その中の一つに入った星児と忠光は奥の方におかれていたケースから数枚の仮面を取りだす。「ふう、無事でよかった」「どれどれ…赤い仮面に犬っぽい仮面、それに…」
「いやぁ、こんなところにあったのか。探す手間が省けたよ。」「!?」倉庫の入り口から何者かの声が響き渡る。
その頃、玲は街のあちこちで私服警官らしい男たちを目撃していた。「日本の警察もそれほどバカじゃないみたいね。」アペプの起こした事件で大勢の犠牲を出した以上、同じような事件を防ぐため警察が動いているようだ。
「でも、とりあえず今のところ演神者が動いている様子は無いわね」そう言って玲は携帯を取り出し忠光に電話を掛ける。その会話を離れたところから聞いている者がいると知らずに。
そして、部屋を出た星児と忠光は町はずれの倉庫へと向かっていた。
「ところで、玲は何してるんだ、今?」「玲なら演神者の手掛かりを探すため街を調べて回っている」
「大丈夫なのか?女一人で」「何、演神者からすれば玲など取るに足らないちっぽけな存在。よほどのことが無ければわざわざ始末しに行くこともあるまい」「そういうもんかねー」
「いいのか?君は関わり合いになりたくなかったのでは?」と聞く忠光に「しゃーねーだろ、爺さん一人で外に出て、また演神者?とかに襲われたら大変じゃないか」「それはそうだが…。」
「それに、変神してる時の気分がなんか気に入っちまってさ。なんか正義のヒーローになった感じ?」
「むう…」忠光はしばし考え込み「わかった。一緒に来てくれ」と星児に同行を頼んだ。
「ん、待てよ?ってことはマルスの仮面以外に他にもあんたが仮面持ってるって事か?」と星児が質問する。「うむ、だが、今は手元にない。だからそろそろ回収しようと思っている」「ほーう、そんじゃま俺も一緒に行ってやろうか?」と、星児が思わぬセリフを口にした。
「…私は父の最期を見て、マギウスの仮面を悪用させてはならないと決心し、それからの人生を仮面を回収、もしくは破壊することに費やしてきた」老人…本名は神室 忠光は星児に合うまでの事を語り続けた。
「そして、ようやく奴らの手からいくつかの仮面を奪うことに成功した。その中の一枚が…」
「マルスの仮面、って事か。」星児が呟く。
ある職人が太古の秘術の持ち主に依頼されて作り出した「マギウスの仮面」それはまさしく着けた人間に神や悪魔の力を与えるものだった。だが、職人は自分の作品が悪用されることを恐れ仮面を依頼主に渡そうとしなかった。
その結果職人は殺され、仮面は謎の依頼者の手に渡ることとなる…。
仮面とは元々儀式において神官などが神の代理人として儀式を行うために使われたものである。
無論儀式が終われば仮面を取ってただの人に戻る。
だがもし、本当に神や悪魔になりきれる仮面があったら?
第三話【表と裏】
平和な街。だが、その裏で演神者達(プレイヤー)が行おうとしている”仮面舞踏会”それはいったい何を意味するのか。
そもそも演神者とはなんなのか。
マスカレイダー・マルス 書いてて需要あるのかどうかわかんないけどとりあえず1クールは書いておきたいものです。ので続きを書きます。
だが、二人は気づかなかった。マルスの戦いを監視していたものがいた事を。
その人物も仮面を着けていた。だが、そこには目も鼻も口もない、つるりとした白い仮面であった。だが次の瞬間、仮面のあちこちから口が現れ一斉にしゃべりだす!
「マルスが勝ったか」「アスラが負けたね」「どうする?始末しちゃう?」「いやいや、我々の仮面舞踏会で彼にも出番を与えよう」「面白い事になりそうだね」「うんうん、楽しみだなぁ」
そして無数の口が喋り終えると消えて元の無貌の仮面にもどり、そしてその人物はその場を後にした。
【第二幕 主役と舞台】終
「ところでよ、こいつどうするんだ?」仮面が砕け人間の姿になったアスラを指さす星児。
「力の源の仮面を砕かれたら大抵の演神者はしばらくは再起できない。役になりきればなりきるほど仮面を失った時の反動も大きくなる、それがルールよ」と、言いながら携帯で救急車を手配する玲。
その威力に吹き飛ばされるアスラ。そして次の瞬間、仮面が砕け元の人間の姿に戻った。
その戦いを黙って見守っていた玲にマルスがビシッっとサムズアップする。
「どうよ、見事な逆転勝利。やっぱ悪役の見せ場を乗り切って勝つのがお約束ってやつだよな?」
そう言って仮面を外し元の星児の姿に戻る。
「何言ってんのよ、相手が仮面を回収しようとしてたから…」「とにかく!俺の勝ち、やっぱり主役は勝つ!!」
「ごふっ…!?」「へっ、俺がパンチしか能の無い雑魚とでも思ってたのか?」腹部を抑え先程とは逆の構図となるマルスとアスラ。「いくぜ、止め!」
マルスが腰の入ったパンチをアスラの顔面目がけ繰り出す!慌てて腹を抑える二本を除いた四本の腕で受け止めようとする。だが、そのガードを突き破り、ついにアスラの顔面にマルスの拳がさく裂した…!!
「負け惜しみを…」「主役の特権、ピンチからの大逆転ってのを見せてやるぜ!」再びアスラに向かって拳を振るうマルス。だがアスラは先程まで同様巧みに捌いていく。「何が主役だ!結局同じ…」
だが、次の瞬間、アスラの腹部にマルスの膝が強烈に突き刺さる…!!
だが、マルスは倒れない…!よろけながらも立ち続ける…!
「なに?今の一撃を受けてなお立っていられるだと…!?」
「わざと食らってやったんだよ…お前の見せ場も作ってやらなきゃならねぇからな…!」不敵に言い返すマルス。
「どうした?威勢よくかかってきたがその程度か」アスラはマルスの拳を六本の腕で捌き反撃を加えていく。そしてアスラの拳がマルスの腹部に打ち込まれる…!
「マルスの仮面を回収せねばならんからな、気絶させてしまえば”役を降りた”事になって仮面を回収できる」
「マスカレイダー・マルス?ふざけてるのか?」
「本気も本気、今回のやられ役さんよ、いい感じにも盛り上げてくれよ?」と言ってアスラに突っ込むマルス。パンチを繰り出すが六本ある腕で確実に受け止めていくアスラ。
「いくぜ…変神!!」仮面を着け叫ぶ星児。その姿は昨夜と同じローマの拳闘士を思わせるものに変化していた。
そして、「待たせたな、主役の出番だ!!」とアスラに指を突きつける。「俺は主役のマルス、いや、マスカレイダー・マルスだ!!」
「主役…?」主役という単語に反応する星児。「人間の力では神になりきっている演神者には勝てない!だから…」
「要するに、主役の座をもぎとれって事か」星児の目からさっきまでの怯えの色は消え、強い意志の輝きを発している。「わかったよ。やってやるよ。さっさと仮面を出せよ」
「え、ええ。」星児にマルスの仮面を手渡す。