灯 斗南はいたって無趣味な男だ。音楽にもオシャレにも部活動にも勉強にも興味がない。そんな彼だが毎週必ず欠かさず見ているのが特撮ヒーローもの、「マスカレイダー」シリーズである。元々は昭和に作られたマスカレイダーを平成になって復活させるとそのシリアスな展開と主人公ダイゴ役の俳優の熱演から人気沸騰、以降シリーズ化されている。
日が落ち、落ち込みながらアパートの自室に帰ろうとする途中、昼間の老人が現れた。「あ、てめぇは!」
「すまない、それで、昼間渡したものは?」「ん、ああ、これね」鞄から老人に渡された包みを取り出し、それを開く。そこには一枚の白い仮面が入っていた。「なんなのこの仮面…」次の瞬間、ジリリリリリリと開幕の合図が鳴り響く。『見つけたぞ裏切り者、さあ、その仮面を返してもらおうか』蛇の仮面をつけた男が姿を現す。
「どこ見てるんだ爺さん!」「す、すまない」老人は怯えながら周囲を見回し、星児に「こ、これを預かってくれないか?」そう言って懐から何かの入った包みを取り出し星児に押し付けて、そのまま逃げて行った。「あ、こら、待てよ、なんだよ一体…!?」追いかけようとしたがバイトに間に合わなくなりそうなので諦めて喫茶店に向かい走り出した。
なお、結局遅刻してマスターに叱られる星児であった。
そんな中、一人の若者が街を愚痴りながら歩いていた。「また不合格…これで17回目だよ!」
火村 星児。21歳、役者志望の青年である。「はーあ、さて、バイトの時間も近いし気落ちしてられないな」そう呟いてバイト先の喫茶店にむかって走り出す。だが、脇の方から一人の老人がぶつかってきて共に転倒してしまった。
翌朝、サラリーマンは何か巨大な動物に噛み千切られたような状態で発見された。警察はただちに現場検証を行ったが何も有力な手掛かりは見つからなかった。
そして、事件は一夜だけで終わらなかった。街のあちこちで同じように殺される人が続出した。
『これより”舞台”』を開演する』どこからともなく聞こえる声にサラリーマンは驚き周囲を見回した。
そこに、一人の男が姿を現す。男は奇妙な仮面を被っていた。『第一幕、蘇りし蛇アペプの復活』【アクト・アペプ!】次の瞬間、男の姿は変化し巨大な蛇へと変貌した。「う、うわぁぁぁぁ」サラリーマンは逃げようとするも見えない壁に阻まれ逃げる事はできなかった。そして…。
(第一話はOPはカットされ、夜の街からスタート)一人のサラリーマンが酩酊しながら家路についている。だが、そこで見えない壁のようなものに阻まれ先に進めなくなった。「ああん?なんだこりゃぁ?ヒック」そこに突然ジリリリリリとまるで劇場の開園の合図のような音が鳴り響く。「なんだぁ?うるせぇぞ!?」
そして今日から始まるのが新番組、マスカレイダーマルスである。前作が鬱展開で有名な脚本家を登用したせいで子供がついていけなくて色々問題が起き、今回は正統派ヒーロー物として回帰すると評判だった。
「いや、僕はあれも好きだったんだけどね」そう言いつつテレビの電源を入れる。