灯 斗南はいたって無趣味な男だ。音楽にもオシャレにも部活動にも勉強にも興味がない。そんな彼だが毎週必ず欠かさず見ているのが特撮ヒーローもの、「マスカレイダー」シリーズである。元々は昭和に作られたマスカレイダーを平成になって復活させるとそのシリアスな展開と主人公ダイゴ役の俳優の熱演から人気沸騰、以降シリーズ化されている。
「冗談じゃねぇ、俺は逃げるぞ…」と、その場から去ろうとする星児。しかしまたしても昨夜のように見えない壁に阻まれてしまう。
「無駄だ、開演した舞台から逃げられると思っているのか」
「これも演神者の力の一部!自分を主役にした”舞台”を作り出し、その中で絶対的な主導権を得る力!!」
「…!?」二人の前に仮面の男が姿を現す。「マルスの仮面、返してもらおうか」
「だれが渡すものですか!あなた達は正気じゃない!神様になりきって自分の好きなように暴れて…」
「そうか、ならそこの男と一緒に死んでもらおう」ジリリリリリ…。「第二幕の始まりだ」【アクト・アスラ】次の瞬間、仮面の男は三面六臂の姿に変貌した。
「今は困難だけど、俺はいつか主役になってビッグになるって夢があるんだよ」
「夢はあっても実現できそうには見えないけど」「…生意気な女だな」
「…痴話喧嘩はそこまでにしてもらおうか」
「これからもマルスになって戦うつもりはない?」「はぁ?」「初めての戦いで下級の怪物とは言え倒すことができた。あなたには演神者としてのセンスがあるのかもしれない」「そんなセンスいらねーよ」
玲の言葉を冷たくあしらう星児。
工房を飛び出した星児。オーディションを受けるが結局落選となる。
「はあー、うまくいかねえなぁ…」「あなた、役者志望なんだ」落ち込む星児の前に、老人から玲と呼ばれた女性が現れた。「…何の用だよ」「あなた、マルスの仮面を着けて普通に戦えたのよね」「ん、まあ、確かに、で、それがなんなんだよ?」
「よくわかんねーけどなんとなくはわかった。特に俺には関係無い事だってのがな」星児が冷たく言い放つ。
「そうか、そうだな、君は私が一方的に巻き込んだだけの一般人だからな」
星児が腕時計を見ると「あ、やべぇ、オーディションの時間だ!」と、言って慌てて工房から飛び出していった。
「おお、玲。帰って来たのか。」「ええ、お爺ちゃん。それよりこの冴えない男がマルスの仮面を?」
「いきなり出てきて冴えないって言うな!ってか爺さんの親父があの迷惑な仮面を作ったのか!?」
「…うむ。父が殺され仮面が奪われたのを知り、世界中を回って仮面の所在を探し、なんとか何枚かの仮面を取り戻すことができた。そのうちの一枚がマルスの仮面だ」
「だが、その職人は殺され、作られた仮面は何者かに奪われた。」「何者か?」「そして長年行方不明になっていた仮面は、危険な集団の手に渡っていた」「危険な集団?」「自らを神や悪魔の化身となる道を選んだ者たち、演神者(プレイヤー)…」
「プレイヤー…?」「演神者の目的はまさに神や悪魔を演じ自らの望みを叶える事」
「で、あんたは何でそんな事を知ってるんだ?」「それは…」
「それはお爺ちゃんが仮面を作った職人の息子だったからよ」突然若い女の声がした。
「うむ、君は仮面とはそもそも何のために作られたか知っているかね?」「しらねーよ」「ではそこから説明しよう」
「元来仮面とは儀式の際神や悪魔になりきるために作られたもの、しかし、昔ある職人が本当に神や悪魔になりきれる仮面を作り出してしまったのだ」
「仮面を着けたものはその神や悪魔の持つ力を身に着けることができる。その職人は狂ったように世界中の神話、伝承の中から選んだ神や悪魔、怪物の仮面を作り上げた」老人はそこで言葉を一旦切った。
場面は代わりとある裏路地にある工房。そこで元の姿に戻った星児が老人に事情を聴いていた。
なお、元に戻るのは仮面を外すイメージを浮かべればいいとの事。
「で、結局何がどうなってるんだ?」頭をかきながら老人に尋ねる。
「どこから話せばよいやら…」「あの怪物になったやつの事、それにあの仮面の事!」イラつきながら老人を問い詰める星児。あのような状況に巻き込まれては誰だろうとそうなるだろう。
第二幕「主役と舞台」
どこかの闇の中、二人の仮面を付けた男が会話をしている。「アペプの奴、調子に乗るからあんな目にあうのだ」「裏切り者の持ち出したマルスの仮面にそれだけの力があったという事だ」「どうする?」「無論、我々の演ずる舞台に余計な役者は必要ない」「では、この俺が」「うむ、全ては我らの仮面舞踏会(マスカレード)のために」そうして二人の男は闇に解けるように消えていった…。
その前に第一幕の敵について解説
・アペプ
エジプト神話において太陽神ラーが地上を照らしながら進む際、それに噛みつき弱らせ夜をもたらす毒蛇。なおそのアペプの天敵は悪神として知られるセト神だったりする。
なんか人気があったので第二話以降も書いてみます。
マスカレイダーマルス公式HP
・第一話はいかがでしたでしょうか?視聴者からの感想をお待ちしております。
次回【第二幕 主役と舞台】乞うご期待!!
(バキィィィン)蛇の顔面が砕け散った。そしてみるみる萎んで変貌する前の姿に戻り、倒れた。
「や、やったのか?」「うむ、演神者(プレイヤー)にとって仮面は力の源であると同時に弱点でもある」
「なあ、爺さんいろいろ聞きたいことがあるんだけどよ…まず元の姿に戻る方法教えてくれない?」
【第一幕 英雄神の仮面】END
「え?もしかしてあいつすごく弱い?」「いや、君が演じている神マルスは仮にも英雄神と称えられた神。格が違うのだよ」吹き飛ばされた蛇がむくりと動きだす『てめぇ、やりやがったなぁ…!』再び星児に襲い掛かる。「よくわからねえが、だったら…!」今度は顔面めがけて拳を振るう。そして次の瞬間…。
「ちょ、まて、俺は巻き込まれただけで…」逃げようとする星児。だが見えない壁に阻まれる。
「無駄だ、一度幕が下りたら”舞台”からは出られない」「そ、そんな…」『シャアアア』迫る巨大な蛇、とっさに拳を突き出す星児。その拳が命中した瞬間、巨大な蛇は吹き飛んでいった。「え?」
光が収まった時、星児の体はローマの拳闘士を思わせるスーツのようなものに包まれていた。
「な、なんだよこれ?」「ローマ帝国の軍神にして英雄神、マルス、今君がそれを演じているんだ」
老人が星児に説明する。『おのれ、まあいい”舞台”からは逃げられん。仮面を剥がして餌にしてやる』そう言って蛇となった男が襲い掛かる…!!
(CM中)結構強引な展開だなぁ。まあ期待して見ていよう。
「こ、これ以上お前たち演神者(プレイヤー)」を増やすわけにはいかん!」老人は蛇の仮面の男に向かって叫ぶ。「なら、お前も神話の蛇の生贄になってもらおう」【アクト・アペプ!!】次の瞬間男は巨大な蛇に変貌した。「!?」その様子を見て驚愕する星児。そこで老人が「仕方ない、君がその仮面を付けてくれ!そうしなければ君も奴に…」「え?え?」老人に無理やり仮面を付けられる星児。そして…【アクト・マルス】そして星児の体は光に包まれた。