夜の面だけが目立つ第3倉庫ではあるが、昼間も時折誰かがやってくることがある。
野良猫がくつろいでいたり、昨日の夜はなかった落書きが追加されていたり、探検目的で誰かが来るのだ。
鍵はかかっていないし、セキュリティーもなにもない。出入りは自由。咎める人はどこにもいない。
………んぁ、朝か。さすがに寒いな。
(入って来てノビーとせのびをする)
ふぅ、やることなくて暇だからきちまった。
ちょっとのんびりしていくか
【ポケットからタバコを取り出し火をつけ、吸い始めた】
(外国人の少年が倉庫を見上げている)
ふっふっふ、廃倉庫……若い時を思い出してわくわくするでありマスね
しかし本当に朝は人影がないでありマスか?
ハナネコ…。
どこに行ってしまったの?
もう貴方はここにいないの…?
私、貴方とお友達になりたかっただけなの…。
本当よ…?
私が容易く正気を失う様な、弱い人間だったから
貴方は逃げていってしまったのかな…。
(倉庫の中に佇み俯いて、悲しげに呟く
終わりは新たな始まり。
確かに、そういう考え方もあるわね。
でも私は、何かを捨てて前進することより
今のまま停滞を続けていたい。
…人の繋がりは、儚く、脆い。
人は忘れる生き物だから
長く離れ離れになってしまえば
共に時間を過ごしたことさえ、忘れてしまうわ…。
…私が失いたくないのはね、
本当は、たった一つの繋がりだけなのよ。
その繋がりを守る為なら
私は何もかもを捨ててしまえるの。
手にある全てを繋ぎ、護ろうとする程
私は善良な人間ではないのよ。
うーん・・そもそも終わりってなんなんだろうね?
僕は思うんだ・・終わりってのはお終いって訳じゃなく
新しいスタートへの一区切りなんだって・・
だからもし、冴来さんにとって終わりだと思う出来事が例え訪れたとしても・・
何もかも無かったことになんてならないさ。
少なくても今君との付き合いを大事だと思う沢山の人達との繋がりは
そう安々と潰える事はないんじゃないかな?
…それはとても、素敵な願いね。
(青薔薇の絵を描き終わり、溜息をつき
ずっと笑って過ごせたら…。
どれだけ、幸せなことでしょう…。
いつか終りが来るだなんて
そんなことを考えずにいられたら、どれだけ…。
僕の願い・・?
あ、何も考えてなかったよ。
(はにかみ笑いで誤魔化しながら)
うーん今は特には・・あ、じゃあこう願おう。
僕と繋がりのある皆の願いが少しだけ叶いますように。
そんでもって皆で笑って寝子島で暮らせますように
・・とかどうかな?
願いが叶います様に、ね…。
ねむるの願いは一体なあに?
へぇ・・青薔薇の花言葉。
初めて知ったよ。それじゃ、僕も
(カバンから青のスプレーを取り出し)
見よう見まねで薔薇の花を描いてみるよ。
灰色のキャンバスに咲き誇る青いバラの花畑・・
願いが叶いますようにって祈りながら描いてみるっ
(あまり上手とはいえないバラの花の絵を描きつつも)
分かったわ。
スプレー、借りるわね。
(スプレー缶を手にして立ち上がり
青薔薇…。
花言葉は奇跡、神の祝福、
夢 かなう、不可能、有り得ないこと…。
私にも、いつか奇跡や神の祝福があるといいけれど。
(壁に青薔薇の髪飾りの絵を描きながら
そうだなあ・・それじゃあね。
(自身のこめかみ辺りを指差し)
冴来さんのその青い花飾りの絵・・
見てみたいかなあ。
…うん。可愛いわね。
(穏やかに微笑み
そうね、私も何か描こうかしら。
貴方は何の絵がみたい?
私、貴方が見たいものの絵を描くわ。
(つづいて肌色のスプレーで顔、グレーのスプレーで枕を描き)
じゃじゃーん!眠り舎の看板イラストの完成~。
我ながらよくできてるなあ・・
冴来さんも何か描いてみる?
他にもいろんな色が入ってるよ?
(カバンの中にねじこまれた大量のスプレー缶を見せながら)
白のもこもこ…。
羊…?
(落書きする様子を眺めながら
へー・・そっか。
それじゃあ壁だけちょっと明るくしてみよう。
(しょってたショルダーバッグからカラースプレーを取り出し)
さて、問題です。
今から僕は何を描くでしょーかっ・・
(壁面に白のスプレーでもこもこしたものを描き出し)
ん、こんにちは。
そうね…。
私が過ごした場所は、もっと狭くて暗い場所だったけれど
壁と地面の冷たさは似ているかしら。
あら、冴来さん・・
(そっと手を振り
ここは、冴来さんが昔過ごした場所に似てるのかい?
地面と壁が冷たい…。
どうしても、戻りたくなるなあ…。
(倉庫の隅で地面に座り込み、壁に身を寄せて
ふぅ・・お昼はさすがに静かなんだなあ。ここ・・
(コンテナ脇の日陰に移動し、床にそっと座り)
おや?地面が冷たくて、ちょっと気持ちいいかも・・