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自動販売機の前
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遠い夜空に、電車の音が響いて去る。
シーサイドタウンの住宅地、仕事を終えて帰路を辿りながら、
日向 透
は深い碧の瞳を不快気に細める。
海からの風に冷たい雨の匂いが混ざっている。冬が近づいてくる。
潮の匂いが鼻先を掠めた瞬間、最近に見た終焉の世界の夢が脳裏を過ぎった。夢だというのに、あの時嗅いだ血臭が鼻の奥を突く。血を塗りたくったように赤い空の色が瞼の裏を染める。
金の髪が触れる白い眉間に深い皺が寄る。
(あの夢……)
透を不機嫌にさせるのは、けれどあの終末の光景などではない。あの世界はむしろ心地よいほどだった。
(何故、俺が好きなんだ)
夢の中、ひとりの少女の死に出くわした。
顔を知るその少女の死の直後に届いた、少女からの恋心綴ったメールを受け取った。
潮風に血臭にも近い生臭さを感じて、マフラーを引き上げる。夢の中とは言え、少女から向けられた理解しかねる好意を、息を吐きだし胸から追い出そうとする。意味さえ解せぬ夢など捨てて帰ろうと普段は近道であろうと通らぬ公園へと靴を向ける。
足早に歩を進め紅葉散らばる公園を抜けようとして、月光とは違う眩しい光に足元を照らされた。不審に瞬いて上げた視線の先、閑静な住宅地の片隅に明々と光を放つ自動販売機の前、
「……日向さん?!」
何故だか驚いた顔をして、淡い茶の髪の少女。
今の今まで心を占めていた夢に出て来た少女、
塔尾 松生
と偶然出くわして、
「こんばんは」
けれど透は何食わぬ笑顔で挨拶をする。
「散歩ですか?」
「ルーズリーフの用紙が足りないことに気がついて」
ふわり、少女の頬が桜色に染まって見えるのは、自販機の眩しすぎる光のせいだろうか。
「散歩がてらコンビニまで」
その途中、あんまりな寒さに何か温かい飲み物が欲しくなって通りがかりの自販機で足を止めた。いつもの品揃えの中にお汁粉缶を見つけて、見た目からして甘そうな缶に、
(日向さんもこういうの飲むのかな)
いつだったか向日葵畑の甘味処で出会った想い人の顔を思い浮かべていた時に現れた、当の本人。偶然だと分かっていて、その偶然が嬉しくて頬が緩む。
(けど)
うっかり不審な笑みを浮かべてしまう頬を片手で押さえ、松生は視線を泳がせる。彼を思い浮かべると同時、出会うと同時、心に浮かんだあの夢が胸をどきどきと鳴らす。
(あの変な夢)
人が次々と死んで行く恐くて変な夢で、自分は今目前に立つ彼に恋を打ち明けるメールを送っていた。あれは、己が彼に恋心を抱いている暗示ではないのだろうか。
(……強すぎる憧れじゃないの?)
不思議に高鳴る胸を冷静に見下ろし、松生は己が心を制する。住んでいる場所が近いからか、この人とは偶然出会うことが多い。けれど、言ってしまえばそれだけ。
(あたしは彼をあんまり知らない)
そう思って、ならば、とも思う。
(もっと知ってみたら)
そうすれば、気持ちははっきりするのだろうか。
「前にも言いまたしが、一人歩きは危ないですよ」
呆れた口調で透に声を掛けられ、その辺りに関して全く危機感のない松生は小さく肩をすくめる。でも、だからこそこんなところで彼と出会えた。
(折角会えたんだものね)
夢と深層心理の解析のために変にぎくしゃくするのは嫌だ。
(いつも通りにしてよう)
いつも通りに、どこか嬉しそうに微笑む松生に、透は金色の睫毛を伏せる。
(『好きです』)
終焉の夢に見た、彼女からの真直ぐな恋慕。
(ここは寝子島だ)
不思議な事象がフツウのように起き得るこの島で見たあの夢が、ただの夢だったとは到底思えない。
(ならあの言葉は)
ひとの悪意など知らぬようないたいけな少女を瞳に映す。
自販機の光を金色に透かす、色素の薄い茶の髪の下、心からの笑み浮かべる素直そうな黒の瞳。寒さのせいか薄紅に染まる、片手で縊れそうな細いうなじ、線の細い華奢な手指。
少女の頬を染める桜色に、瞳に浮かぶ喜色に、透は彼女が己へと向けてくる好意を確認する。
(なんで……)
少女から真直ぐに向けられる思慕が心底不思議でならなかった。
(猫を被っているからか)
心に秘めた醜い内面になど気付きもせず、温和に微笑むばかりの外面に惹かれているだけなのだろう。
(俺の本当を知ったらきっと距離をとるだろう)
冷え切った内心をおくびにも出さず、透は微笑んでみせる。
「寒いですね」
「寒いですよね」
他愛もない言葉に対し嬉しそうに弾む返事と少女の笑みに、
「飲み物、何を飲みたいですか」
自販機へと視線を移しながら、透は内心冷笑する。
ひとは、己に見たいものだけを見る。騙すことなど容易くできる。
「お汁粉缶とか良いですね」
「この時期ならではですね」
言いつつ財布を出そうとする松生を押し止め、透はお汁粉を二本買う。取り出し口の前に長身の腰を屈め、一本を松生に差し出す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
手渡された温かい缶を両手に受け取り、松生は出来るだけ丁寧に頭を下げる。下げて隠さなくては、この満面の笑みは流石に不審に思われてしまう。
好きなひとに買ってもらったお汁粉缶を開ける。傍らに立ち、同じように缶を開けて口をつける好きなひとの横顔をそっと盗み見る。
春に咲く蒲公英の花のような柔らかな金髪も、透き通るような、それでいて深い碧の瞳も、異国の血を引いているからか高い鼻梁も、透き通るような白い肌も、穏かな笑みを絶やさぬ唇も、細身でいて筋肉質な体躯も。綺麗なひとだと、つくづく思う。
そんな綺麗なひとに買ってもらったお汁粉缶を肩を並べて飲んでいることが何だか不思議に思えて、松生は淡く微笑む。
「そういえばそろそろ寝子祭ですね」
「ああ、もうそんな時期ですか」
「いろいろな出店が出るらしくて、楽しみなんです」
たこ焼きとかクレープとか、チョコバナナとか。
楽しげに話す女子高生に一見愛想のいい相槌を打ちながら、日向はお汁粉を飲み下す。
こんな味だったのか、冷えた内心で虚ろに思う。
「日向さんは何が好きですか?」
無邪気に問いかけてくる少女を見下ろして、ふと、
(本当の自分を知ったら)
彼女はどう思うだろう。
穏かな笑みを絶やさず物腰も柔らかく、ひとを傷付けたりなど決してしない温和な性格だと思い込んでいた人間が、真実は全く違うと知ったら。
思っていたひとと違う、と今は笑顔浮かべるばかりの顔を醜く引きつらせるだろうか。こんなひととは思わなかった、呻いて顔を背けるだろうか。好意を寄せた人間に、この己の本性に嫌悪抱くだろうか。
そうして、美しいものばかりを望んで見てきた自分自身に気付くだろうか。そんな自身に絶望するだろうか。
首筋を不意に撫でる冬風のような冷たい考えが心を過ぎって、透は小さな笑みに唇を歪めた。
(見たい)
少女の心が傷付き、傷ついたが故に曝すだろう醜い姿を、見たくて堪らなくなった。
(……俺は、……)
それと同時、己の歪みに対する自覚を深める。
人前に出せぬ、素の己。
それを敢えて見せようとしていることには思い巡らせぬまま、
「塔尾さん」
透は優しく松生に呼びかける。缶を捨て、淡い笑みさえ滲ませて松生と向き合う。
松生と視線が合わさるまで待たず、松生の華奢な肩に手を伸ばす。目を瞠る少女の体を自販機に押し付ける。片手を自販機につく。
「え? ……え?」
困惑の声洩らすばかりの少女の柔らかな髪に覆われた冷たい耳に唇を寄せる。
「暗い夜道で男と二人きり」
囁きかける。
「どんな目にあってもしかたないと思いませんか」
「日向さ、ん」
缶持つ両手を胸の前に、松生は瞬く。
今の今まで穏かに話を聞いてくれていたはずの透の突然の変貌に、瞬くしかできなくなる。今の今までの、ふわふわした気持ちが急速に萎む。乱暴に押さえつけられて、彼の様子がいつもと少し違うことに初めて気付いた。
息が交わる近さに、深い碧の瞳。その瞳にうっすらと浮かぶ、残酷な笑み。
(前にも、そういえば、)
己の息が男に触れぬよう、一心に息を詰めながら、松生は深碧の瞳を見遣る。
(夜出歩くのは危ないって言われてたんだった)
叱られてしまった、と肩を落とす。優しい人に、心配をかけてしまった。
(でも、急にどうしたんだろう)
謝るよりも先に、心配になる。優しい人にこんな顔をさせてしまって、どうしようもなく申し訳なくなる。
それと同時、心の片隅が跳ねる。今までと違う彼の姿を見られたことが嬉しくて。もっと知りたい、もっと触れたい、そう思ってしまう。
「ごめん、なさい」
熱帯びた白い息と共に少女が零した言葉に、混乱しながらもこちらを気遣うような真直ぐな眼差しに、透は戸惑い眉を顰める。
欲しい反応はそれではなかった。もっと怯えると思っていたのに。もっと恐がると思っていたのに。
(どうして貴方は)
こんな俺に、そんなに真直ぐ信頼を寄せてくる?
胸と胸が合わさるほどに寄っていた身体をそっと離し、透はいつも通りの笑顔を貼り付ける。
「すみません」
いつも通りに笑おうとする。いつも通りの穏かな声を出そうとする。
「ちょっと貴方に危機感がないので意地悪をしてしまいました」
それでも足りず、出来るだけさり気なく、松生から視線を逸らす。踵を返す。
「俺もそろそろ帰らないといけないので失礼します」
「え? あっ、お汁粉、ごちそうさまでした!」
あんなことをされても態度を変えない女子高生に、
「貴方も気を付けて帰ってください」
肩越しに手を振るしか、今は出来ない。
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年07月27日
参加申し込みの期限
2015年08月03日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年08月03日 11時00分
参加キャラクター一覧
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