＜鈴島海賊の秘宝III＞海へ｜リアクション

＜鈴島海賊の秘宝III＞海へ

●戦いを終えて

「っちち……もちっと優しくたのむよ」
　リ・ボーン号操舵室。舵を握る坂内梨香の傍らで、骨削瓢は鬼崎あやめの手当てを受けている。
　瓢の顔はボグルに十字に引っかかれ、真っ赤なみみずばれが出来ていた。
「当然のむくいですよ」
　あやめはみみずばれに消毒液を付けた脱脂綿を押し当てる。瓢はぎゃっと呻く。

「沁みますか、そうですか。このくらい我慢してくださいね」
　あやめの笑顔がやや黒い。
　晴海飛鳥が持つ籠の中では、ボグルは歯をむき出しにして怒っていた。
「これは、関係修復は難しそうだよー？」
「腹に爆弾を括りつけられ殺されそうになったのだから怒るのも無理ないだろう」
　仄も呆れ顔だ。

「しっかし」と瓢はぶつぶつ言った。
「漆黒の海蛇号とやらも派手に沈んじまったね。あわよくばあの船も奪ってやろうかと思ってたんだが。お宝探しする間もなかったし……骨折り損のくたびれもうけだよまったく」
「何言ってるんだい、困難を二つも乗り越えたんだから、ここから先こそが楽しみじゃないか。うまく嵐を抜けたら次の難関か目的の地か、やっぱり冒険は秘境を走り回ってこそだよねー」
　飛鳥が言ったそのとき、きぃ、と扉が薄く開いた。
　操舵室に入って来たのは小さなサル。サルはパッと飛鳥の肩に飛び乗る。
「ああ、お猿君。おかえり、無事だったんだね。何かいいものあった？　隠し部屋とか隠し日記とか」
　サルは咥えていたものを、飛鳥の手のひらに落とす。
「ん？　鍵？　……あ、まさか！」

　そのときである。
　甲板で見張りをしていた恵御納夏朝が操舵室に飛び込んできた。
「大変だよ！　紅梟号から白い煙が上がってる！」
「白い煙！？」
　仄が立ち上がった。
「『作戦遂行不可能、合流求む』の合図じゃないか。何故、今更！？」