【前回までのあらすじ】
「――じゃ、また。赤い月の昇る夜に」
9月、海賊女王のピラミッドと赤い寝子島から帰還したとき、
彼らは<紅梟号><リ・ボーン号>という二隻の船を持ちかえった。
シーノが、坂内 梨香が、そして、鈴島海賊最後の女首領コウが探し求める<伝説の宝の島>へ
旅立つのに必要な船だ。
さあ支度は整った。
紅の月が昇り、船は人知れず海の彼方に佇む伝説の島を目指す――。
ひどい風の夜だった。
破れたヴェールのような漆黒の雲が、ものすごい勢いで空を駆けている。
星ヶ丘マリーナは灯り1つなく、まるで人払いでもされているかのように静まり返っていた。
呼び出された
弘明寺 能美子は不機嫌だった。彼女はたいがい不機嫌そうなのだが、いつも以上に、だ。
「よりにもよって今夜なの? 月なんか見えないじゃない」
同じく呼び出された
マウル・赤城・スティックが、黙って海の彼方を指差す。
沖に、ふたつ黒い船影。波に揺られ佇む帆船は<紅梟号>と<リ・ボーン号>だ。
その向こう、水平線にほど近いインディゴブルーの領域に、赤く、疼くような光が昇っている。
それはたしかに月のようであり、しかし、ほんものの月ではなく――。
「あれは印よ」
坂内 梨香が風にすさぶ髪を押さえながら静かに言った。
「<伝説の宝の島>が現れる印」
「だがこんな夜に出航するのか?」マウルが言う。「風がよくない。嵐になりそうだ」
「そうね、嵐になる。そして私達は嵐の中を目指すの」
梨香は表情を変えず赤い月を見つめている。
「コウの話によると目指す場所は嵐の渦の中にある。赤い寝子島で取り戻した
紅梟の目が、嵐の中であっても私たちの船を守り、島へと導いてくれるはずよ」
梨香は集まった人々を見渡した。梨香から連絡を受けた者、友人などから聞き知った者、噂を小耳に挟んだ者、さまざまだ。
「あなたたちには選択肢がある。ともに海へ漕ぎ出してもいい。ここに残って帰りを待ってもいい。でも、もし、私とともに<伝説の宝の島>を見てみたいなら、船に乗って。必要な支度は整っているわ」
能美子が訊いた。
「今の貴女は、坂内梨香なの? それとも――船長コウ?」
「梨香よ。でももちろんコウも行くわ。今のところ、だいぶ干からびているけど」
梨香は肩を竦め、それからパンパンと手を打った。
「――さあ、決断、即行動よ。赤い月は昇った。出立の時間をこれ以上遅らせる事は出来ないわ」
行く選択をした人々は、シーノの連絡係を自称する女性、リンコ・ヘミングウェイが用意した小型船に乗り、沖に泊まる<紅梟号>と<リ・ボーン号>へ渡る。
「留守番は任せて。お土産期待してる。いってらっしゃい!」
リンコのチャーミングなウィンクの見送りを受け、船は静かに動き出す。
こんにちは。ゲームマスターを務めさせていただきます笈地 行(おいち あん)です。
ガイドに弘明寺 能美子さま、マウル・赤城・スティックさまにご登場いただきました。ありがとうございます。
お待たせいたしました、<鈴島海賊の秘宝>シリーズ(略して秘宝シリーズ)第3話です。
赤い月が昇り、いよいよ伝説の宝の島を目指します。
このシナリオの目的は、嵐を乗り越え、宝の島に辿り着くことです。
それでは此度もよろしくお付き合いくださいませ!
【秘宝シリーズ】
<鈴島海賊の秘宝I>海賊女王のピラミッド
<鈴島海賊の秘宝II>赤い寝子島の冒険
<鈴島海賊の秘宝III>海へ このシナリオです。
過去の秘宝シリーズにご参加いただいたキャラクターは梨香から「冒険の時間よ」と連絡が入りました。
今回初参加のキャラクターは友人から聞いたなどご自由にどうぞ。
海へ
ご参加いただいた方は、<伝説の宝の島>探検隊の一員となり、
<紅梟号>と<リ・ボーン号>いずれかに乗船します。
どちらの船に乗るかを、アクション冒頭にお書きください!
紅梟号……………船体も帆も赤い、2本マストの帆船。
嵐に突入するまでは舵を取らずに潮に乗って進みます。
細身の船体で、老貴婦人のような凛とした気品が感じられる船。
前の帆柱には横帆を、後ろの帆柱には縦帆を備えている。
船首には、翼を広げた梟の船首像があり、
その瞳には黄金色の宝玉<紅梟の目>が嵌っている。
船長室はある程度綺麗だが、台所、食堂、船員室は掃除が必要そう。
同行NPC:坂内 コウ
リ・ボーン号……前回、骨削 瓢さんが赤い寝子島から持ち帰った、
紅梟号より一回り小ぶりの二本マストの木造帆船。
同行NPC:坂内 梨香
嵐の航海
船は、<紅梟の目>がもつ不思議な力に導かれ、
大昔の船乗りたちが恐れた嵐の止まない不思議な海域、<嵐クジラの巣>へ向かいます。
※以下はPL情報です
しばらくは雲行きは不穏ながらもおだやかな航海ですが、やがて嵐の中に突入します。
嵐の中をしばらく進むと、船はトラブルに直面します。
幽霊船、そして、海の怪物です。
幽霊船と巨大クラーケンは仲間ではありません。
二つの困難を乗り越えた先に、伝説の宝の島があるはずです。
幽霊船……………船体のあちこちが破れた黒い木造帆船。
ぶっちがい髑髏に海蛇の船旗はかつて紅梟号を襲った「漆黒の海蛇号」と思われる。
後方から迫って来て、紅梟号に体当たりしての白兵戦を仕掛けて来る。
幽霊船には朽ちた動く死体(ゾンビ)となった荒くれ船員たちが乗っていて、その数は20。
剣や銃を装備した船員たちは、15ほどが紅梟号に散って制圧しようとし、
残りの5が船長グジを守っている。
生きていた時と同じように動くが、思考力は弱い。
グジと呼ばれる汚らしいもじゃもじゃの黒い髭が特徴的な義足の男が船長。
陰険で執念深く、半分朽ちているが剣の腕は立つ。
紅梟号に恨みでもあるのか、リ・ボーン号には目もくれない。
海の怪物…………海から飛び出す巨大な吸盤のついた触手。
現在の数は5本。最大8本まで増える。大きさは船のマストに絡みつけるくらい。
本体は見えないが、想像するに紅梟号より一回り大きなタコのような生物と思われる。
幽霊船と仲間ではない。
船を襲う習性がある。
(進行方向→)
<幽霊船>→ <紅梟号>→ ←<海の怪物>
<リ・ボーン号>→
幽霊船、海の怪物、探検隊の三つ巴を乗り越え、<宝の島>へ辿り着け!
アクションについて
・幽霊船と戦う
・海の怪物と戦う
・嵐の航海自体を楽しむ
・その他いろいろ
ご自由にどうぞ!
とくに描写して欲しい箇所があれば、アクションを集中させたり
プレイヤーの目的に書くなどして、マスターが分かるようにしていただれば幸いです。
持ち物:
そのPCが持っていて不自然でないものであれば、いくつでも持ち込めます。
ただし、必要がなければ描写されない場合もあります。
持ち物は次回に持ち越す場合があります。
船の中で手に入るもの:
前回、秘宝IIの個別あとがきで【入手】と表記されている
オウムやサル、アイテムなどは船の中で飼われていたり保管されていたりしました。
今回一緒に旅をしたり、使用したりできます。
また、紅梟号、リ・ボーン号いずれの船にも
銃(木の銃身で金属の飾りが施された拳銃や、マスケット銃)
カットラス(湾曲した刃を持つ剣)
食糧(水、パン、ビスケット等の保存食や野菜、肉、果物)
は備えがあります。
それ以外で木造帆船に置いてありそうなもので、必要なものがあれば
探索することで見つかる場合もあります。
衣装などにこだわりがあればどうぞ!
携帯電話、デジタル機器:
嵐に突入して以降は、携帯電話は通じません。
デジカメなどのデジタル機器は電源が入らなくなるか、正常に機能しなくなります。
ろっこん:
嵐クジラの巣の中は不思議な海域なので、あまりひとの目を気にせず発動できます。
ふだんろっこんに理解のないひとの方も、
不思議なことが起こっても不思議じゃないような気分になっています。
船自体を動かすような作戦があれば:
梨香やコウに話してみてください。
登場NPC
坂内 梨香
……<伝説の宝の島>を探す組織、シーノの一員。
自分のルーツを求めて、組織が求め続けてきた宝の島を目指している。
リ・ボーン号で操舵を務める。
坂内 コウ
……梨香に宿っていたコウの魂は元の身体に戻った。
出発時は棺の中で、海賊衣装と財宝で飾られた木乃伊として存在している。
嵐クジラの巣に突入したのちはみるみる潤いを取戻し、
30歳前後の梨香に似た猫目の女性として復活。旅の仲間に加わる。
リンコ・ヘミングウェイ
……シーノの連絡役。寝子島で待機。
このままだと、船は宝の島を見ずに難破してしまうかも?
さあ、冒険の時間ですよ!
それでは、みなさまのご参加お待ちしております!