ドキドキ？！　聖シエスタ女学院！｜リアクション

ドキドキ？！　聖シエスタ女学院！

この後も、真央は普段自分が通っている『寝子島高校』についてきいてみるも、知っている人はいなかったようだ。
（うぅ、これは夢なのだ？　修ちゃんは平行世界とか言っていたけど、別の世界ってことなのだ？　ここの世界の真央ちゃんはお嬢様で、こんな清楚な世界でお嬢様してるってことなのだ？）
　いつの間にか頭からしゅうしゅうと湯気が出てしまう真央。オーバーヒートを起こしたらしく、その場に倒れてしまう。
　それに気付いたのは通りかかった咲たちだった。
「この子は、真央？」
「あのっ、大丈夫ですか？　しっかりしてください！」
　亨が不思議そうに首をかしげ、極夜が声をかける。真央は「にゅ～」と愛らしい声を漏らして目を回している。咲は「しかたないな」と真央を抱えた。
「この子を保健室に。続きはその後でいいかな？」
　咲がにこっ、と微笑んでそういうと、亨と極夜は頷いた。

　――星ヶ丘駅周辺。

（うざったい……。何なんだろ、このヒト）
　サキリ・デイジーカッターは不機嫌だった。疲れたので早く寮に戻り、刃物でも磨いてから休もうと考えていたのだが、マタ大生だと名乗る青年たちに付きまとわれていた。これはナンパというものだろうか？　とサキリは内心で首を傾げる。
「ねぇ、聖シエスタ女学院の子だよね？　ちょっといいかな？」
「ごめんなさい。ちょっと疲れているから……」
「いいカフェがあるからそこで休んだら？　俺、奢るからさ」
　という具合にあしらおうとしてもさりげなく離れず声をかけてくる。ぱっ、と見た感じ、全員がアイドルをも彷彿とさせるイケメンで、不覚にもサキリの胸は少しときめいてしまう。
（これも神魂の効果か？！　もしかして、乙女心というやつ……冗談じゃないよ！）
　僅かに頬が火照るのを感じ、戸惑うサキリに、青年がくすっ、と笑う。
「もしかして、こういうの初めて？」
「あのっ、しつこいんですけどっ」
　パニックになりそうな心をどうにか抑えようとし、声が大きくなってしまう。もしかしたら、刃物を振り回してしまうかもしれない。
　だが、そこに通りかかる者がいた。縦ロールという癖の強い金髪に、ボリュームのあるバスト。ミッシェル・ナイスゲイである。彼女は「女子高にいると、男日照りしちゃうわ～ん」と、イケメンを探していたのだ。
「あら、ステキな方々ね♪　後輩になにかご用かしら？」
「へぇ、君も聖シエスタの？　お堅いお嬢様ばかりだとおもったけど、君ならお茶に誘えそうかな？」
　サキリに付きまとっていた男はなかなかの美女であるミッシェルにも興味を示す。彼らはさりげなく話しかけては２人を近くのカフェへと誘っていた。
「あ、でも……」
　サキリがそれとなく断ると、ミッシェルがウインクして「いきなさい」と背中で庇ってくれる。
「この子、本当に体調が悪いみたいねぇん。だから、そっとしておいて？　そのか・わ・り。アタシなら一緒にお茶してもいいわよ？」
　その隙にサキリはミッシェルに一礼し、足早に寮へと戻るのであった。
　その後、ミッシェルはマタ大生から奢られつつメルアドを交換したり、スイーツに舌鼓を打ったりと有意義な時間を過ごすのだった。

　そんな風に楽しんでいたミッシェルだが、ふと、顔を上げる。自分と同じ学校の生徒だろう女の子が、なにやらお菓子を買っている。
（んー、ちょっとやりすぎたかなぁ）
　服部こう（服部剛）は昼間の出来事からルームメイトの怒りを買ってしまっていた。昼食時も無視されてしまい、そのままずるずると放課後である。彼女なりの愛情表現なのだが、行き過ぎてしまったようだ。
　部活を終えたこうは色々考えた挙句、お土産を買う事にしたらしい。
「あら、おかいもの？」
　ミッシェルが声をかけると、こうは少し驚いた様子で彼女を見た。
「はい。ちょっとルームメイトと喧嘩しちゃって……」
「だったら、これなんかお勧めよ～ん」
　そう言って勧めたケーキを、こうは祈るような気持ちで見つめるのだった。