ドキドキ？！　聖シエスタ女学院！｜リアクション

ドキドキ？！　聖シエスタ女学院！

放課後：甘い時間？　じれったい時間？

　私は、哀坂極夜。聖シエスタ女学院に通う１年生です。でも、最近ちょっと悩んでいます。本当の私、は咲お姉さまと……こ、恋人…同士の関係みたいですけど……、うぅ、恥ずかしい上に……しかもさ、三角関係だなんて……！！

（全然想像出来ません……！）
　極夜はスカートの裾を揺らし、廊下で深いため息をついた。身も心も女性になっている極夜ではあるが、男性の記憶もうっすらとだが残っているらしい。故に恥ずかしくなって悶々としているのだ。
（で、でも咲お姉さまはとっても素敵で……、私、あの人の為ならなんでもがんばれそうな気がするんです）
　クールな横顔を見せる矢萩咲の事を思い出すと、胸の中がぽかぽかする。極夜はまた深いため息をついて「お姉さま……」と小さな声で呟いた。そんな彼女に近づく足音が１つ。顔を上げると健康的に日焼けした女子生徒がにっこり微笑んでいた。
「あっ、貴方は……」

（女体化って何度目だ、これ。もう慣れたぜ……）
　そんな事を内心で呟くのは、身長１９０ｃｍに烏の濡れ羽色の髪を束ねた七峯亨である。元々の身長と中身のままの彼はブレザーを軽く着崩していたがそれが妙に似合っている。事実彼女に黄色い声を上げる生徒もちらほらいるのだ。
（ごめんな。好きな人がちょっといるんでね）
　颯爽と校舎を歩けば、目の前に見覚えのある女子生徒。そう、三角関係の１人である極夜である。清楚な印象の女子生徒となったライバル（？）に、亨はくすっ、と笑って歩み寄った。
「――亨、さん？！」
「ふふっ、これまた可愛らしい姿になったじゃないか、極夜君？」
　亨に声をかけられ、極夜は僅かに頬を赤くし、身を竦ませる。そんな様子に、亨はふふっ、と笑いながら傍に寄った。
「亨さんも、女性になられていたのですね……」
　それにしては身長が普段とほぼ変わらず、その上スタイリッシュな印象を持つ彼女の姿に思わず目を見張っていると、それとなく亨が極夜の肩を抱く。
「……え、っと……私、…元は男ですから……変な事、しないですよ、……ね？」
「なに、元男はお互い様さ。それよりアンタ……女でもイケるな」
　僅かに怯えが滲んだ極夜の声に、亨はくすくす笑いながら言う。女性にしてはハスキーな声は妙に色っぽく、思わずどきっ、としてしまう。
　いつの間にか極夜は壁に追い詰められ、彼女の頬近くに亨の手が置かれる。俗に言う『壁ドン』的な構造である。
（え？　え～～？！）
　極夜が顔を真っ赤にして緊張している。その姿に思わず「かわいいな」と呟く亨。傍からみれば、亨が極夜を口説いているようにも見えなくも無い。
（面白い反応するなぁ）
　亨は内心でくすっ、と笑いながらそっと髪をなでれば、極夜は「はうっ！？」と愛らしい声を上げた。と、そこへ現れる者がいた。

「そこまでにしておきなさい、亨さん」

　その声に極夜が顔を上げ、亨も顔を上げ、嬉しそうに頬を赤くする。
「咲お姉さま！！」
「姐さん！」
　２人の声に、矢萩咲はウインクで答えた。
　彼女はこの世界では心が男性になっており、スーツ姿を纏っている。その事が原因かシスターからお小言を言われる事が多かった。今日も、先ほどまでぐちぐち言われていた所である。
（シスター達も煩いな。あんなに怒るなんて……。今の世の中、男装位自由な風潮なのに）
　それでも、自分は男である、と咲はため息混じりに思っていた。
　そんな聖シエスタに咲が通い続ける理由。それは、自分を慕ってくれる２人の後輩……極夜と亨がいるからだ。
（小動物を髣髴とさせる、『守ってあげたい』と思ってしまう極夜さん。小悪魔的で『かまいたくなる』と思ってしまう亨さん。二人とも恋人と言っても過言でない大切な女性だよ）