●桐島先生といっしょ（スカートめくり編）●


【部室棟１Ｆ〜２Ｆ】

「モガーーーーーーーーーーーーー！」
「秘技☆音速スカートめくり×１０！」
「「いやあああああああああっ！？」」
　だだだだだと部室棟を駆け巡るピンクの旋風。難波 辰と、その手ほどきを受けたビニール袋さんのアンダースローが、次々に幼児のスカートをひるがえす！
「や、きゃあああああああああっ！？」
　甘ロリドレスの木斗 菫が、そしてスケブで防ごうとした浅山 小淋も、たちまちその被害者の仲間入り。桐島先生に接触しようとしたばっかりに、とんだ災難だ。
「右から順に白、ピンク、くまさん、縦縞！
　どうや！　一瞬だって見逃さへんで！」
　特技：女の子の下着の色当ては、こうやって幼少期から培われてきたのか。難波の鍛え抜かれた動体視力が、たちどころに女児のぱんつの色を言い当て、
「なんですかーとをめくるのか？　めくったさきにおぱんつがあるからさ！
　よし、いまみんながはいているぱんつを確かめてみよう。
　そして、見えたおぱんつを一つ一つおぼえていこう！」
　横嶋 下心が、ワーイと女子の間を走り回り、片っ端からそのスカートをめくりまくる。
『こちら、かいちょー、聞こえますか、どーぞー』
　と何やら玩具っぽいトランシーバーで交信していたブリジット・アーチャーも、すれ違いざまにバサーッと横嶋にそのフリル付きブルードレスをめくり上げられ、
「なっ、なななななっんてはれんちなっ！」
　とその可愛らしいお口をぱくぱく。
「モガーーーーーーーーーーーーー！」
　ビニール袋さんだって、負けてはいない。
「み、みちゃだめでちっ！」
　出会いざまに、ひらりめくられたスカートを両手で押さえるのは、１年１組の宮祀 智瑜。彼女の服装は、高校生の制服のままなので、つまり下着も元の年齢相応のもの。
　レースとリボンの付いた、可愛らしいデザインの下着がちらりと指の間から見え、
「神は言っている『ナイスパンティーデス！』」
　それまで、「駄目じゃ、いまいち心が躍らん……」などと、めくられる幼児ぱんつに１人意気消沈していたアレハンドロ・佐助も、これには神に向かって、感謝の礼拝。
「え、えっちなのはよくないとおもいまち」
　顔をまっ赤にしてあわてる智瑜、そこに誰かを探しにやって来た、園児服姿の姫神 絵梨菜まで、ビニール袋にスカートをめくられる始末。
「きゃああ！　ひどーい！　なにするのよー！
　もう、ゆるさないんだからぁ！　まてー！」
　涙目のチビ絵梨菜の怒りが爆発、逃げようとするビニール袋さんを追い回して、
「言っても聞かない悪い子はお仕置きしちゃうんだから！
　えい！　ちょうおんそくびきゃくらんぶー！」
　園児服の短すぎるスカートで、もう１回自らぱんつをモロ見せしながら、ろっこんキックでキレイにビニール袋さんの顔面を蹴り上げる！
「モ、モギョアーーーーーーーー！？（ばたり）」
　ビニール袋さんが倒れ、そのビニールがすっぽ脱げた。
「あれれ？　やーん、竜ちゃんせんせーじゃないじゃない」
　担任の泉先生を探していたこの絵梨菜は、目を回しているチビメガネを見てガッカリ。逆に桐島先生を探していた宮祀智瑜の方は、自分のスカートをめくったビニール袋の正体を見て、びっくりだ。
「せ、せんせいの小さいころって、ませてたんでちね……」
　また、その一方で、ませてるどころじゃない者もいる。
　やはり『桃色破廉恥小隊』所属の４歳児・山田 与太郎は、そんな元同級生たちのパンチララッシュを見て、ひとりうろたえていた。
「よたろーどうした！？　あーあーっ、言っているけれど……」
　隊長である横嶋下心が心配して駆け寄ると、
「そうか、こかんからあふれでるえろすがとまらないのか！
　がんばれ、よたろーがんばれ！　だいじょうぶ、ろりーにときめいちゃったとしても、
　それは、きみのあたらしいとびらがひらいただけだから！」
『桃色破廉恥小隊』の良心（？）、アレハンドロも山田のピンチを応援だ。
「こう考えるのじゃ。蕾を愛でる時、お主はきっといつか咲く花を見ている、と」
　さすが、神父様いいことを言う。いつか蕾（ロリ）は花（美しい女性）になるのなら、この主砲の反応は正しいものなんだな、と温かい気持ちに満たされていく山田。
　エネルギーが溜まってゆく……エロスを感じることがこんなに嬉しいとは思わなかった……二つの金の弾丸が確実に装填されていくのを感じる……蕾にこれほどの魅力があるとは……花が神の加護なら、これは妖精のイタズラ！　今度から幼女をフェアリーと呼んで愛でるとしよう。

「フェアリーの力を借りて、今、天元突破のライジング・サァァァン！！」

　山田与太郎の股間から、こん・ころろーんとガラガラのアレのようなハズレ玉が出てきた。恥ずかしそうにちょっとその光の玉は身震いすると、山田たちの見ている前で、ぽすっと蒸発する……まあ、弱体化しているろっこんなら、こんなものだろう。エネルギー（？）の補填で解決できるような問題でも、ないし。
「うう……あっし、不器用ですから……」
　がっくりとヒザをついて地にうなだれる、チビ山田だった。


　さてそこにやって来たのは、旅鴉 月詠だ。
　ブリジット・アーチャーにメガネを取り上げられて、ジタバタピョンピョンしている桐島先生に向かって、
「ふむ、どうだ。君は、大人になりたいと思うか？」
　といきなり問い質す月詠。子供になっても、達観しきったような態度はあまり変わらない月詠だが、それでも劣化する記憶は、クレヨンで絵にしてスケッチブックに描き残すことで、繋ぎ留めている彼女。
　桐島先生に、そもそも何を聞きたかったのかも忘れてしまったブリジットたちとは違って、今何をしなければならないかをフレッシュに記憶し続けている、稀有な子供だった。
　そして、いきなり事件そっちのけでスカートめくりなどをしていた面々だったが、今やるべきこととは勿論、犯人を見つけて、元の姿に戻ることだ。
「おとな……に？　ボクもう４ちゃい、おにーちゃんでしゅよ」
「ばっか桐島、もっと大人ってことやろ。
　おーせやせや、俺は早よ、大人になりたいで！」
　キョトンとする桐島先生に代わって、難波 辰が月詠の問いに答えた。さきほどのエロ本の切り抜きをポッケから取り出し、
「そんで俺な、おっきくなったらこーゆー女の人とやらしーことすんねん。
　やらしーことて？（考えこみ）
　そらやらしーことや、膝枕とか……添い寝とか……
　皆まで言わすな、ホンマすけべやなあ！（桐島ばしばし）」
「う……、うん。じゃあボクも早くおとなに……な、なりたいでしゅ」
　魔性の雌豹、とか何とかキャプションの付いたグラビアに釘付けになりながら、こちらも真剣に頷く桐島先生。
「ふむ、そうか……」
　旅鴉月詠は、ろっこんはえてして本人の『願い』に付随するものだと思っている。
「とするなら、この子供化現象を広めているもれいびは、やはり子供になりたかったのだろう……
　そう考えていたのだが。どうやら君は、犯人ではないようだな」
　もっとも、ろっこんが本人の願いを反映している──という月詠の前提は、そもそも微妙（事実としてはケースバイケース）なので、これだけでは桐島先生を、完全に容疑者から除外できたとは言えないが。
　ただ、月詠の他にももう１人、桐島先生の願いを聞いた──いや、「視た」者がいた。
　ろっこん【想い見る】で、対象が求める物を見ることのできる、宮祀 智瑜だ。
　彼女は逆に、桐島先生が何かえっちな願望をいだいており、その願いを叶えてあげれば、彼も元の姿に戻せると思って、ここまでやって来たのである。
　さて戸惑うチビメガネの手をぎゅっと握って、ぼんやり智瑜の脳裏に浮かんできた、桐島先生のその願いとは──
「や、やっぱり……」
　うん、おっぱいだった。
　白くてフカフカのおっぱいが、次々と宙に浮かぶビジョン。そのマシュマロみたいなおっぱいに包まれて、すやすやと大人の先生がそこで、安らかな寝息をたてている……。
　桐島先生、オッパイスキー確定。
（このねがいをかなえれば、ろっこんのぼう走が止まるなら、……）
　とドキドキ意を決する智瑜だったが、残念ながら幼児化した今の彼女には、その願いを叶えてあげられるだけのバストが無かった。元の姿なら、充分なサイズがあったのに……。
　しょんぼりとうなだれる、宮祀智瑜なのだった。
　ただ、智瑜が考えたように、これがもし仮に、おっぱいを求める先生が暴走した影響なのだとしたら、寝子島高校にいた全教員と女子が幼児化し、校内のおっぱいが絶望的に不足している今の現状は、やっぱり少しチグハグだ。
　旅鴉月詠の推理同様、これだけでは完全に確定はできないものの、どうやら桐島先生はとりあえず、犯人候補からは除外して良さそうだった。

　さて、そうなると残りの先生たちはいったい……？