四足生命体は、世界が切り離された瞬間に何をすべきか理解した。
　鍛え上げられた肉体。
　押さえ込む必要のなくなった欲望。
　強敵と死合いたいという衝動。
　全てを理解した瞬間、彼は近くを浮遊していたカボチャをヘッドロック！
　暴れるカボチャに手刀を繰り出すと、数秒でその中身がえぐられていく！
　コワイ！
「コォォォォフォォォォォォ！！」
　えぐったカボチャをジャックオーランタンマスクとして頭から被り、身に付けていた衣服を快感☆脱衣！
　全裸に見える？
　安心してください！　はいてますよ！
　彼は今、ドロワーズを穿いているのだ。
　通称カボチャパンツだ。
「ウバァシャアアァァァァーッ！」
　奇声をあげながら獲物を求めてニンジャめいた跳躍！
　その高さ、13ｍ！　走り幅跳びの世界記録を軽々と超える脚力だ！
　カボチャよりもヤバイクラスのモンスターが爆誕した瞬間である。
　モンスターの名は尾鎌 蛇那伊。
　バーサークアルティメットダークオカマ（略してBUDO）状態の尾鎌は、全ての魔法少女とニンジャの衣服をひん剥くべく漆黒のオーラを纏いながら四足で高速移動を開始した。
　その毒牙が、今、カイリに襲い掛かる！

「な、なんだ貴様ぁ！？」
　背後から奇襲を受けたカイリは、背負っていた兵装のバーニアを噴出して緊急回避！
「カッカドゥドゥーッ！！」
　尾鎌は突然、身体を逸らしてブリッジ走行を開始！
　そして上体を起き上がらせる勢いで地面を蹴ると、対空ミサイルめいた速度でカイリへ突っ込んでいく！
「あぶなぁい！」
　そこへおったーのアクア散弾の面攻撃が火を吹く。
　強制インターセプトだ！
「空中なら回避はできないよね☆」
　確実に２ｍ×２ｍあたり500発の密集弾が尾鎌の体を捉えた。
　と、その時！
「ＺＥＮＲＡ！！」
　謎のシャウトとともに尾鎌は両腕を高速に動かす。
　気が付けば、空中の尾鎌は無傷のままではないか！
　――ところで、読者の中に魔法少女かニンジャはいるだろうか？
　その優れた動体視力の持ち主ならば、この怪物が何をしているか理解できたはずだ。
　信じられないことに、尾鎌は散弾の１つ１つを掴んでは投げ捨て、また掴んでは投げ捨てを繰り返し、面攻撃の真ん中に穴を開けて攻撃をすり抜けてしまったのだ！
　このマジカルネコジマ空間において、強化されたのは魔法少女やニンジャだけではなかった。
　どちらにもなりきれなかった尾鎌は、強大なパワーを宿したまま変態化してしまったのだった！
　なぜなら彼の名はオカマと読む。
　男でも女でもない、新ジャンルの申し子なのだ！
「ＺＥＮＲＡ！！」
　攻撃されたことで目標をカイリからおったーへ変更した尾鎌。
　なんと、空中で放屁をすることで鋭角的な方向転換を実現した！
　ヤバイ！
「ＺＥＮＲＡ！！」
　変態シャウトから繰り出される手刀の連撃！
「あたしだって手刀には一家言持ちなんだからね！」
　おったーは杖を捨てると、手刀でこれに応戦。
　ラッシュの速度比べに発展だ！
「おー、はやいぞー。がんばれ、おったー！」
　ばにぃは観戦モードに入っている！
　尾鎌はおったーの攻撃の軌道を見極めたうえで受け止めると、相手の力を利用して腕を引っ張った。
「きゃあっ！？」
　引き寄せられたおったーはバランスを崩して転倒！
　豊満な胸部がなければ大ダメージを被っていた。
　カイリの舌打ちが聞こえる！
「ＺＥＮＲＡ！！」
　尾鎌はおったーの上に馬乗りになると、人間の快楽のツボというツボを容赦なく刺激してマッサージを強行。
　これぞ尾鎌が習得している裏奥義『色業拳』が１つ、『出張マットプレイサービス』である！
「ゃん！？　ナニコレェ……頭が、ぼ～っとしちゃ、う、んぁあ♪」
　尾鎌のゴッドハンドが炸裂するたびに、甲高い声を上げてよがるおったー。
　その魔力が急激にチャージされていく。
　彼女はこの時、マジカルネコジマ空間の闇を垣間見た。
（お、おったーちゃんはぁ、路線変更なんて絶対しないんだからァ！？）
　悔しいっ！　でも魔力が強化されちゃう！
　数秒後には恍惚の表情で放心するおったーであった。
　尾鎌はすぐに標的をばにぃへ変更。
　彼の持つ裏奥義『色業拳』は、どんなに凝った魔法少女の衣装や強固なニンジャスーツでも脱衣の対象となる。
　その拳に引き裂けぬ衣装は、あんまりなかった！
「お？　え？　あたしは何をされているん、ふぇっ、あぁはァん……♪」
　尾鎌によって後ろから羽交い締めにされたばにぃ。
　そのたわわな乳を樫の木のように太い腕に蹂躙されてしまう。
　カイリの舌打ちが再び聞こえた。
　なぜならカイリの胸は平坦だからだ。
　尾鎌は８の字を描くようにばにぃの柔らかな乳房を揉みしだいたかと思えば、突然、胸元の脇の下にできる僅かな隙間に左右の手を突っ込んだ。
　そして指を指を鍵爪の形に変えて引き脱がし引き裂く！
　何たる無慈悲！
「きゃぁあぁぁー！？」
　ばにぃは思わず胸元を隠しながらうずくまった。
　でもしっかり魔力は増強されている！
「ＺＥＮＲＡ！！」
　満足した尾鎌は、再び四足歩行になると次の獲物を求めて去っていった。
　空中で１人、一部始終を見ていたカイリは心に決めた。
「巨乳死すべし。慈悲はない」
　胸部甲板（比喩表現）の厚い者は、カイリの憎悪の対象となった瞬間である。
「というか、変態達が僕らを強くする力があるだって！？　乾物効果も大概にしろぉ！　……うん、乾物効果って単語をとっさに口にしたけど僕も何を言っているのかサッパリわからないんだ」
　カイリはマジカルネコジマ空間の闇を嘆きながら、己の敵を探すために飛び立っていった。