悠久の時の彼方へ～牢獄の聖女｜リアクション

悠久の時の彼方へ～牢獄の聖女

「入れ替えの瞬間は、念のために周囲の人々の注意をそらす役目の人もいりそうね」
　黒依アリーセが提案する。
「私は陽動だけでなく、噂話も流して準備しようと思うわ」
「ワタシも、〈神の見えざる手〉で攪乱します！」
　手を挙げるクルジッカ・ヘルマゴル。鷹城空も続いた。
「私も手伝おう。ジャンヌは同じ戦場で戦った仲間、そして、私と同じく神に関わった仲間。仲間が殺されるのを黙って見てるほど、私は薄情じゃない。ジャンヌはぜひ助けたいし、それに巻き込まれたマルグリットのことだって、他人事じゃない」
「私も、入れ替わりのタイミングで広場に突入して、処刑台に立つ兵士の気を引きます」
　北原みゆきも名乗りを上げた。
「私のご先祖様も魔女狩りに遭って、裁判とは名ばかりの拷問を受けたわ。処刑は免れたけれど、魔女としての烙印はどこまでも付きまとったそうよ。だから……こんなアンフェアな裁判、許せないの」

「さて―――作戦が進んでる途中でなんだけどさぁ」
　今まで黙っていた壬生由貴奈が口を開く。
「当のマルグリットの方が作戦を知らないと、うまくいくものもうまくいかないと思うんだよねぇ」
「マルグリットに事前に作戦を知らせる必要があるということだねっ」
　由貴奈の言いたいことを言ったのは維都月茉菜である。
「彼女に作戦のことを知らせて、勇気づけておくってことだな！賛成だ。何か手段があればいいんだが……」
　風雲児轟が興味を示す。月も気を惹かれたようだ。
「マルグリットさんの振りをするわけですから、あらかじめ会って癖を見ておきたいですね」
「それなら、考えがないこともないよぉ。やってみる？」
　由貴奈の言葉とともに、マルグリット救出班は具体的な動きを始めた―――