Search for lost books｜リアクション

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８．整理整頓のセレナータ

　そんなこんなで日々は過ぎ、返却キャンペーンも最終日が近づいてきていた。
　回収、返却された本は増え続け、回収を担当していた生徒も整理、収納へと少しずつ人員が割かれていく。

　「……司書殿」
　と、相変わらず賑わっている図書室内で司書教諭である早川珪に話しかけてきたのは大田原いいなである。
　手には数冊の本が握られている。
　「どうしたのかな？」
　珪は微笑む。
　その笑顔に居心地の悪いものを覚えつつもいいなは話し始める。
　「うちの叔母が未返却りすとに入っておってな。そのう……回収したのはいいんじゃが、古本屋に売り払っておったのじゃ」
　レシートとともに回収した本を珪に手渡す。
　「なるほど。購入したお金の件かな？」
　珪はリストと照合しながら確認をしつつ、そう訊ねる。
　「い、いや！　それはいいのじゃ！　どちらかといえばその……売り払っておったということは、そういったことをしておる輩が他にもおるかもしれんと思ってじゃな……」
　いいなは珪への苦手意識もあってか大げさに否定する。
　「ありがとう。そこについては未返却者の人数も多いし年月の問題もあるから、多少は諦めるしかないのかもしれないね」
　回収した生徒の報告などを既に聞いていた珪はそんなことを言う。
　「そういうもんかのう……」
　どこか腑に落ちなさそうな表情をするいいな。
　「せっかくだからこの本借りていってもいいけど？　『恋人と呼べるまで』『恋を囁く距離、手を繋ぐ時間』『ラバーズ・コンプレックス』『センチメンタルなキスで溶かして』。どれも恋愛小説だね」
　本の題名を読み上げる珪。どこか悪戯っぽいニュアンスを含んでいる。
　「いやいやいや、儂には無理じゃ！」
　題名の甘ったるさだけでもお腹いっぱいと言わんばかりにいいなは図書室から逃げ出した。

　「冗談はさておき、『これ』どうしようか」
　いいなを見送ったあと、珪は図書室に運び込まれた『これ（大量の本）』を見る。

　未返却の本を回収するだけならば、もし全部返却されたとしても、買い足した分も含めて本棚から多少溢れるだけに過ぎなかった。
　けれど、後木真央のリヤカー大作戦に端を発する寝子島住民からの本の寄付によって、片付けるべき本は大量に増えていた。
　もちろん、その中には絶版になっている本や貴重な本、それこそ回収できなかった本なども含まれており、彼女の行動はマイナスではなくプラスに働いていたのだが。

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