Search for lost books｜リアクション

Search for lost books

　「真央ちゃん頑張ったよー！」
　と、真央は笑顔で腰に手を当てている。
　「問題は本の仕分け、分類番号の貼り付けなどの作業か」
　八神修はここ数日で手馴れた本の修復作業を行いながらそう言う。
　「一度、本のデータベースを全てパソコンに移すことが出来たら今後こういった追加をしても管理そのものは簡単になると思うのですけれど」
　綾辻綾花はパソコンで回収関係のメール対応を行いながら語る。
　寝子島高校は古い学校の為に、管理表は全て手書きで、その結果今回のような大掛かりな回収活動においても様々な不備が発生することになったとも言える。

　貸出記録の物理的改ざんや、無断返却、題名や名前の記述ミスや漏れ、二重返却などなど。
　確認作業をするだけでも時間がかかったのは言うまでもなかった。

　「改装、とまでは言わなくとも模様替えみたいなことやればいいんじゃねぇ？」
　追分義一は真央が持ってきた本の山から魔法少女ものを探しつつ提案する。
　「確かに。本棚も足りませんし重複する本などは一度片付けてしまって、テーブルやイスの配置の見直しなどしてもよいかもしれませんね」
　「うにー♪　花とか植物おいてもいいかもしれないに」
　朝海瑠歌と七音侑は２人で本の種類やサイズで仕分け作業を行いつつ楽しそうに案を出す。

　「猫と過ごせる図書室、とか」
　回収した本の照合作業を行いながら恵御納夏朝は小さく呟く。
　「さすがに猫を飼うわけにはいかないだろうが、猫特集なんかは組んでもよいかもしれないな」
　書店のフェアのような、と言いながら青野海仔は補足する。彼女は回収作業の結果を纏めている。

　「回収できたやつ、置いておく」
　いつの間に帰ってきたのか誰にも気づかれないまま、アン・リアルはどさどさと本を置いていく。
　置き終わると彼女はプログラムの本を片手にテーブルに座る。

　「で、先生よ。キャンペーン後の未返却者の措置はどうすんだよ？」
　バットを床に立てて仁王立ちをしているのは桜崎巴である。彼女は校内の未返却者リストを睨むように見つめている。

　「まぁ、予定通り張り出すつもりだけど。図書委員会のお手伝いをしてもらうことで免除しようかなということも考えているよ」
　と、珪は通常業務を行っている骸の姿を見て答える。
　骸が汗を流しながら、約束通り必死に仕事を行っていた。

　そんな図書委員とお手伝いたちの姿を月詠は素描していく。
　窓から差し込む西陽とともに彼らの穏やかで静かな時間は美しく見えた。
　平積みされた本たちは読まれるときを待ち望み、過ぎ行く時間のカケラを文字に秘めていく。
　色鉛筆を取り出して、柔らかなオレンジとブラウンで少しだけ彩りを添える。

　一方で図書室で日常を過ごす、刀、海、ブリジットの姿も彼女は捉える。
　記憶に残らないようなやり取りもまた青春の１ページであり、それは思い出の中に粉雪のように積もっていくだろう。
　彼女はこのページにブルーとグレイの色を差し込む。　

　静かに本を読む聖、真剣に調べものを続ける龍八と轟。１人の時間を大事に過ごす能美子。延長手続きに来て、そして去っていく天野。
　彼、彼女たちの静謐さを彼女はモノトーンのみで表現する。

　そして、一番明るい色を使ったのは反省文を書いている信彦と牡丹、灸の姿だった。
　それをコミカルなタッチを用いて月詠は少し柔らかで砕けた描写をしていく。

　そんな月詠の姿を海がこっそりクロッキーとして描いていたことを彼女は知らない。

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