寝子島高校、特別教室棟3F。図書室。
貸出カウンターの棚の隅に並ぶのは寝子島高校60年の重み。
古ぼけた物から今年度の物まで、十数冊に分けてファイリングされたそれは『未返却リスト』。
卒業生や保護者からの寄贈や、学校側の購入により図書室の蔵書は年々増えている。
その一方で、返却されない本も積み重なって相当な数になっていた。
今年赴任したばかりの司書教諭はそのリストを眺める度に頭を抱えていた。
「多い、あまりにも多すぎる」
彼は苛立ちながら、額に手を置き天井を仰ぐ。赤いYシャツの胸元にあるネームプレートに『
早川 珪』と印字されている。
「……猫さんの本?」
と、首をかしげるのは図書委員の一人である
恵御納 夏朝。手元には返却されたばかりの猫の絵本を抱いている。
「寝子島高校の図書室に返却されない本が、だね。もちろん、未返却の本の中には猫関係もあるかもしれないけど」
大きく息を吐いて彼は彼女を見つめる。そこには無表情な2つの瞳と、彼女の髪を留める猫型のヘアピンがあるだけだった。
「先生。本、集めるの?」
寡黙な彼女がたどたどしく訊ねる。
「ああ。いくらこの学校の理念の1つが『自由』とはいえ、ルールは守って貰わないと困るからね」
彼の言葉に頷くように、彼女は左腕の猫型パペットを動かした。
「にゃ! にゃ!」
それは彼女なりに彼を応援しているつもりらしかった。
「図書委員の皆にも頑張ってもらいたいところだけどね」
そうして彼は4月の終わり、5月の大型連休の直前に図書委員会を中心に未返却図書の回収作業と、在校生への積極的返却の呼びかけを行ったのだった。
借りたものは返しましょう、深城和哉です。
昨今は電子書籍の普及が進み始め、誰でもいつでも書籍もしくはそれに類するものを携帯電話などのモバイル機器を通じて読むことができるようになってきました。
また、博物館などの資料もデジタルアーカイブ化をする試みも行われております。
それらは、恒久的な保存技術であり、私たちはいつでも欲しいものを得られる時代に向かっているのかもしれません。
けれど、本の重み、博物館で実物を見る感動、経年劣化や一部遺失したそれらから感じる時間の流れ、ロマン。
それらが無くなってしまうのは寂しさを覚えたりもします。
きっと、寝子島高校の図書室に帰ってこない本たちにもそんなエピソードが隠されているのかもしれません。
――解説へ向かいます。
早川 珪(はやかわ けい)
今年寝子島高校に赴任したばかりの司書教諭です。
赤いYシャツの上に黒のカーディガンを重ねた、先生というよりも大学生もしくはホストのような身なりをした20代後半の男性です。
仕事に対しては丁寧かつ真面目ですが、ホストっぽいと言われることには否定的です。
本について
寝子島高校の本には、背の部分(題名がある箇所)の下部に寝子島高校のマークと管理番号があります。
見返し部分(表紙と中身の間)に管理カードを差し込む為の小さなスペースが設けられています(借りる際に管理カードに記名し、貸出カウンターにて委員に渡すシステム)。
未返却リストは司書教諭に言えば閲覧及びコピーが可能です。
リストを閲覧することで未返却者の名前と本の題名を確認することができます。
貸出期間は基本的に2週間です。
それ以上の期間借り受ける場合は司書教諭への申請が必要です。
また、返却期限を過ぎた本は全てが今回の回収・返却キャンペーンの対象となります。
1日遅れだとしても、貴方のところへ図書委員がやってくるかもしれません。
本の題名やその本に纏わるエピソードなど自由にアクションに記入ください。
ただし既存の本の題名などについては採用できないもしくは改変する場合がございますのでご注意ください。
キャンペーン後も未返却者(在校生限定)への対応
図書室前の掲示板に未返却者の名前と借りた本の題名が張り出されます。
本の名前次第ではとても恥ずかしいことになるかもしれません。
アクション
寝子島全域を行動範囲とします。
もちろん引越し、進学、就職などで寝子島外にも未返却者もいますが、学生に遠隔地に行かせるわけにもいかないという先生の指導により寝子島内で回収作業を行ってください。
以下のような行動が選択肢となります。
・図書委員(もしくは協力者)として未返却者から本を回収
・本を返せない理由があるとして本を死守
・本を無くしてしまったのでとりあえず必死に探す
・図書室でまったり過ごす
・その他
自由なアクション、無茶ぶりなどお待ちしております。
また、深城シナリオはアドリブ度高めを推奨致します。