Search for lost books｜リアクション

Search for lost books

　「珪先生、これもです」
　と、綾辻綾花が卒業生たちから返してもらった本の間から栞を見つけて珪に手渡す。
　その栞は様々な猫の姿が描かれた物であった。眠る猫、蝶を追いかけて二足立ちをする猫、顔を洗う猫、伸びをする猫、などなど。
　「結構挟まっているもんだね」
　猫の絵を見て微笑む綾花から栞を受け取り、珪はそれを小箱に収納していく。
　「そうですね。いろんな栞があって楽しいです」
　珪と他愛もない話をしながら、綾花はすぐに落ちそうな汚れがついた本は乾拭きをする。
　修理が必要な本については、その修理内容や破損具合に合わせて仕分けをして、自分のできる範囲の物から修繕を行っていく。
　「早川先生ー」
　他の図書委員から呼ばれて席を立つ珪。
　そんな彼の姿をちらりと見ながら、綾花は先ほどのことを思い出す。

　脚立に乗って本の収納、整理をしている時だった。
　「もう少し背があったらよかったんですけど……」
　小柄な部類に入る綾花は脚立の上でも少し頑張って体を伸ばす必要があった。
　何度か危うい場面もあったが無事に収納が終わる。本を落としたりしなくてよかったと安心する綾花。
　「ふぅ……なんとかなりました」
　なんとはなしに周囲を見渡すと、少し離れた位置に珪の背中が見えた。
　（いいなぁ……）
　羨望の言葉が心に浮かぶ。
　珪は図書室利用者の女子生徒の為に高い位置にある本を取り出してあげていたのだ。

　「綾辻さん？」
　そんなことを思い出していたら、用事を終えたらしい珪が近くに立っていた。
　「あ、はい！？」
　びっくりして飛び跳ねるように顔を上げる綾花。珪はぼんやりしていた綾花を少しだけ心配そうに見つめてから言葉を発する。
　「どうやら、本でドミノ倒しをしている不届き者がいるみたいだから、ちょっと行ってくるね」
　ドミノの様子を見かけたらしい朝海瑠歌を引き連れて図書室から空き教室へと珪は向かった。

　一方のドミノ会場。
　いつの間にかドミノの参加者に添木牡丹も増えていた。
　（あ、あれとか、それとか、私の借りた本なんですけどぉ～……）
　ショタっ子が恥ずかしい姿が表紙になっている本やら、女子生徒同士が睦言を語り合っていそうな本なんかを自分でドミノに並べつつそんなことを思う牡丹。
　教室に本がなかったために、クラスメイトやらに事情を聞いた結果、信彦のドミノに使われている可能性にたどり着いたのだった。
　（ばれないように回収するにはドミノが終わったタイミングしかないですぅ～）
　本を倒さないようになんとか並べていく。
　「添木ちゃん、そこ歪んでますよー」
　牡丹の並べた位置を修正するのは梢。見てるだけと言っていたのにいつの間にかノリノリであった。
　「ど、どうしよう……」
　注意すべきなのに押し切られた以上何も言えない。けれど、図書委員としてこの状況を放置して行くわけにも行かない。
　そんな思考の袋小路にはまり込んだまま身動きができず、悠は彼らを見守り続けている。
　「ところでひこにゃん、何でチューリップと向日葵なんですかー？」
　梢がずっと思っていたことを口にする。
　彼がドミノのモチーフとして選んだのはモザイク画形式のチューリップと向日葵だった。
　「いいところに気がついたね。この２つの花言葉は……」
　と、信彦が嬉しそうに説明しようとした時だった。