怪人セブンの暗躍｜リアクション

怪人セブンの暗躍

「……もっとも、今では殺す価値すらありませんけど」
　泉月花は早くも次のどんぶりに手を伸ばしていた。
「泉月花ちゃん、どうしてナナオを殺そうとしたの？」
　ド直球の質問に、魅紗歌が思わず咳き込んだ。
　そしてそのまま桜庭を睨み付けた。
「お姉様の後ろめたいところを根掘り葉掘り聞くなんてデリカシーないんだね？」
「ごめんね、魅紗歌ちゃん。せっかくの２人っきりの時間邪魔して苛立っているよね」
　さすがにその言葉に否定はできない桜庭は、思わず苦笑いを浮かべた。
「でも、これはボクが疑問に思っていたことなんだ。そしてナナオのためでもある。だって、ボクたちはまだ知らないことが多すぎる。叢雲が何をしたいのか、ナナオに何があったのか、そして泉月花ちゃんはなんでそこまで『計画』に傾注しているのか」
　桜庭は真剣な面持ちで泉月花に向き合う。
「ねえ、教えてよ。泉月花ちゃんの『フツウを革命する』って、どういうことなのかな？」
「……素直に教えると思いますか？」
　麺をすすりながら泉月花は呆れ返っていた。
「話したところで到底理解できないでしょうし、無駄ですよ？」
「それでもいい。そうだ、ギョーザを奢るよ。もちろん食べるよね？」
　桜庭は畑中を呼びつけると、全員分のギョーザを追加注文した。
「せめて、このギョーザの分だけでも教えてほしい」
「桜庭、それはいくらなんでも無理じゃねぇか？」
　吉祥寺は微妙だと言わんばかりに顔をしかめた。
「だったらチャーハンも一緒に頼もうよ」
　そう口にしたのは戌井だった。
「ラーメンと言ったらチャーハン。これ重要だよ。みんなの分のチャーハンも注文するね」
　戌井もまた、畑中に追加注文を行った。
「いっぱい注文してくれてありがとうアル！　チャーハンはこの間、武者修行してきたばかりアル、自信あるアルヨ！」
　だが、既に泉月花にはギョーザとチャーハンを含めた全種類のメニューが次々に運ばれている。
　李は訝しんだ。
「既に目の前に注文されたものがあるのだ、それで教えてくれるとは思わないのだ……」
　全メニューを注文した泉月花にメニューかぶりの奢りは通用しないと彼女は考えたからだ。
　そんな泉月花の反応はというと？
「……いいでしょう、私だけ５人前でお願いします」
「通用するのかよ……！？」
　月居の口が空いたまま戻らなくなった。
「お姉様……！？」
　隣にいた魅紗歌は当惑していた。
「奢られたくらいで口を割るなんて！」
「……やっぱり、魅紗歌ちゃんも叢雲と関わりがあったんだね」
　桜庭の瞳の奥が探偵めいた光に満ちた。
　指摘された魅紗歌は息を呑み、目線を床に落としてしまった。
「おいおい、マジかよ……」
　ファンを自称している吉祥寺はショックを隠しきれない。
「いいのよ、魅紗歌」
　泉月花は空いた食器をうずたかく積み上げながら微笑んだ。
「あたしはただ、お腹が空いているだけなの。奢ってくれるというなら、ちゃんと対価を支払うのが礼儀よ」
　それに、と泉月花は言葉を足した。
「菜々緒にも関わりのある話ですからね……」
「……どういうことだ？」
　月居は菜々緒の横顔を気遣いながら覗った。
「ちゃんと順を追って話しますから。ただし、ギョーザ５人前とチャーハン５人前分の情報しか話しませんので、ご了承くださいね」
　泉月花は運ばれてきた熱々のギョーザに酢を垂らしたあと、箸を突き刺して一口に頬張った。
　そのまま咀嚼して嚥下すると、舌舐りをして妖しく口元を歪めた。
「では、叢雲教団の新たな作戦『モーニング・グローリー』について少しお話しましょう」