怪人セブンの暗躍｜リアクション

怪人セブンの暗躍

【準備～偽装～】

　黒依アリーセは前回の誘拐事件後、反叢雲軍団メサイアのリーダーのビリオン（九重零次）から預かったエメラルド――ビリオンが『嫉妬の黙示録』と呼ぶ宝石と瓜二つのイミテーションの作成に取り掛かっていた。
　中心に紐を通せるような穴があいているのが特徴だ。
「元々開いていたのかしら？　それとも紐を通すために穴を開けたのかしら？」
　黒依はしげしげと観察しながら、クリスタルレジン樹脂とレジン用の着色剤でイミテーションを完成させる。
　その類まれな集中力は、前回の事件で味わった苦い感情からくるものからか。
　そうして中心に白い放射線が入っている（俗にスターエメラルドと呼ばれる）部分も寸分狂わず彼女は見事に作り上げた。
　丈夫な白い革紐を通し、首に吊り下げれば携帯も可能だ。
　実家の雑貨屋で自身もアクセサリー作成を手がけていたり、島のフリーマーケットにも出店するほどの腕前の彼女の渾身の“作品”である。
　素人目からしたら同じ宝石が２つあると思うだろう。
　出来上がりに満足しながら、黒依は１つ懸念を抱いていた。
「……効果がなくなったとはいえ、手元に置くのは危険よね」
　メサイアの本拠地を異空間へ歪めてしまうほどの神魂力を発揮した黙示録。
　今は効力が失われているが、またいつ何時、異変を呼び起こすとは限らないと彼女は考えた。
「それに、いつ叢雲が奪いに来るかわからないもの……」
　どこかに隠す必要がある。
　黒依は迷った。
　どこかに埋めるか、いっそ手の届かない場所へ置くか。
　悩んだ末に、黒依はとある場所にある宝石工房に預けることにした。
　そこには自身専用の金庫も備わっている。
　開けられるのは自分だけ、保管場所を知っているのも自分だけ。
　自ら口を割らない限り、叢雲教団が『嫉妬の黙示録』を奪還することはできなくなる。
　そうと決まれば善は急げ。
　工房の主人に連絡を入れ、すぐに『封印』するために向かった。