怪人セブンの暗躍｜リアクション

怪人セブンの暗躍

【12：30　寝子島高校】

　シーサイドタウンで泉月花たちと会食をしているその頃、寝子高で図書館の蔵書整理を終えた恵御納夏朝。
　そこへ返却し忘れた本を持参して逆巻天野が図書館にやってきた。
「あ、逆巻君……」
「やあ、恵御納。もう整理は終わったかな？」

　相変わらずポーカーフェイスの逆巻は、手に持った本を掲げて挨拶。
「うん、もう貸出も返却もできるよ……。待たせちゃってごめんね……」
　恵御納はカウンターに駆け寄ると、逆巻から本を受け取る。
「いいよ、僕のタイミングが合わなかっただけだし。それにおかげでこの本を延滞させずに済んだ」
「こういうの、塞翁が馬、っていうんだっけ……？」
「そこまで大げさじゃないけど、まぁ、そんな感じかな。それより……」
　逆巻はスマホを取り出した。液晶画面には、菜々緒からの依頼メールが映し出されていた。
「外では大騒ぎになっているみたいだね」
「そうだね……。あ、もう少しで図書委員の仕事が終わるから、待ってて。……ここでその話は、ちょっと、ね……？」
　逆巻は静かに一度だけ頷いた。
　恵御納は大急ぎで持ち場に戻ると、図書館中をパタパタ駆け巡って残務をこなしていったのだった。

　恵御納と逆巻は図書館をあとにすると、ののこのいる１年５組の教室へ向かうことにした。
　野々ののこ――天から落ちてきて神魂をばら撒いた神様の成れの果て。
　今は『フツウの学校生活を過ごす』という自身の願いをかなえるため、人間の女子高生と何ら変わりない毎日を過ごしている。
　非常に成績が悪く、休日登校で補習に明け暮れているのも、きっとそんなフツウなんだと信じてあげたい。
「おまたせ。えっと、今回の状況、どこまで逆巻君は把握してるのかな……？」
　逆巻はスマホをスワイプしながら答えた。
「黒依たちのメルマガのおかげで大体は。イベントの開催候補地を探しているみたいだね。おそらく、ここにもやってくる可能性がある」
「逆巻君もそう思うんだ……？」
　恵御納は今朝届いた菜々緒からの依頼メールを思い出していた。
　ファッションショーの開催地に寝子高が選ばれるかどうか？
　彼女はその可能性の１つとして、先日行われた寝子高制服☆トリエンナーレが頭によぎった。
（寝子高でファッションショーをやったことがあるし、それをネタに寝子高が開催地になるかも……？）
　何も知らなければ両手放しで喜べることかもしれない。
　しかし、背後に叢雲が絡んでいると知っている恵御納は、なんとしてもそれだけは阻止したい考えだ。
「僕も学校でイベントを開催されるのは反対だ。なんとしても食い止めたいね」
　逆巻も恵御納と同じ考えのようだ。
　恵御納は大きく頷くと、逆巻とともにののこのいる教室へ向かうのであった。