怪人セブンの暗躍｜リアクション

怪人セブンの暗躍

　で、現在に至る。
「アラーム設定のことなんて気にしていられなかったよ」
　既に顔にアザを作っている御剣が、ぐったりと椅子の背もたれに“垂れて”いた。
「うーん、叢雲じゃなくても、今回は単独行動は危険だな……。偶然居合わせた真央ちゃんと未沙ちゃんに感謝ダナー」
　志波がうんざりした様子で肩を落とした。
「壺井魅紗歌っていえば、今年の４月から急に人気が出たアイドルよ……？」
　冴来は図書館に並べられていた新聞の記事を持ってきた。
「ほらこれ……。この子がそうよ。みさリンって愛称なのよ。可愛いわよね……」
　冴来は魅紗歌の写真を指差した。
　確かに、よく通った鼻筋は日本人というより欧米人に近いので、実年齢より大人っぽく見える。
「へぇ、高校１年生なんだね。君たちと同年代、か」
　刻人は意味ありげに呟いた。
「でもなんでアイドルと一緒にいるんでしょーね？」
　屋敷野の疑問に、ぞの場の全員が首を傾げた。
「……泉月花さんは、趣味と実益を兼ねた芸能プロダクションの社長でもあるのよ」
　傍観していた菜々緒が遂に口を挟んだ。
「といっても個人プロダクションと聞いているわ。もしかしたら、マネージャー業務も兼任しているのかも……？」
「あー、ファンの間では結構有名みたいだね。ほら？」
　璃音が検索した魅紗歌のブログには、魅紗歌と泉月花のツーショット画像が掲載されていた。
　壺職人たちからも魅紗歌の姉御的存在として慕われているようだ。
「わっかんねえなァ？　裏と表の顔のギャップってやつか？」
　犬神は頭を掻きむしっていた。
「……とにかく、僕たちはそろそろ行動しないと。冴来さん、サキリくん、僕たちは九夜山で怪しい奴がいないか警戒に当たろう。現地で灯くんも待っているだろうし」
　日暮の呼びかけに、２人は黙って頷いた。
「オラたちも行動開始すっぺ。はやくしねえと敵さんが来ちまうべ？」
　鈴野の言葉に、掘削班も移動を開始する。
「すまない、俺たちも別行動をとらせてもらう。菜々緒、ちょっといいか？」
　八神が席を立つと、菜々緒を呼び立てた。
　当然のようにその後ろの護衛につく常闇である。

「……八神さんは確認したいことがあるそうです。情報は逐次情報班へご連絡致しますので」
　常闇は一礼を済ませると、八神の傍らをぴったりとマークしながら帯同した。

　次々と仲間が図書館を離れていくなか、黒依率いる図書館で陣を張る情報班と、志波率いる比較的近隣を行動する予定の妨害班、そして泉月花たちと行動を共にする予定の同行班（＋菜々緒）、御剣が残った。
　時刻は、午前11時をまもなく回ろうとしていた。

　それから間もなくして、図書館内がざわめく。
「ここがあのおじさんが言ってた図書館？　思ってたよりこじんまりとしているね？」
　魅紗歌の遠慮ない毒舌は絶好調である。
「連絡を入れた加納です。お願いしますね」
　資料を持ってきてもらうように係員に告げる泉月花。
　それを遠巻きに見つめる英雄たち。
　ほどなくして、ワゴンに山積みになった歴史書や地図が泉月花と魅紗歌の２人の目の前に運ばれてきた。
『本日は寝子島図書館をご利用頂き、ありがとうございます』
『私はここでアルバイトをしている者です。よろしくお願いします』
　浅山が筆談とともにお辞儀をすると、泉月花は満足げに微笑んだ。
「ええ、よろしくお願いします。……『名も無き英雄たち』のひとり、浅山小淋さん？」
　泉月花は過去の七罪事件の関係者の情報を把握している、と浅山はメーリングリストで把握している。
　だが実際に名乗ってもいないのに名前を呼ばれると、えも言えぬ不気味さが浅山の背中を凍えさせていくのであった。