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寝子島高校
秋桜、ふたりぼっち
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一面の秋桜(コスモス)。
それ以外、目に見えるものはありません。
秋桜畑。
そこに
齋藤 智照
はひとりで立っています。
空から見おろせば、どこまでもつづく赤紫と緑の平原に、ぽつんと人の頭がひとつ、浮いているように見えるかもしれません。
けれども智照はまだ、この世界にひとりきりの自分には気がついていないのでした。
ただ、黙々と歩いているのでした。
かつて彼はよく、この秋桜畑を訪れたものです。
その頃はひとりではありませんでした。いつだって、最愛の女性と一緒でした。
――ひとりで来るには、少し思い出の多すぎる場所でしたねぇ。
智照の口元がほころびました。
といってもその笑みは、期待に胸膨らませて郵便受けを開けて、そこに何も入っていなかった人が見せるような笑みでした。
秋の風が、しみます。
智照がここを訪れたのは、ほんの気まぐれによるものです。秋桜の色にふらり誘われて、草履を向けてみただけのことでした。
彼は僧侶です。中規模の会場で法事があって、その帰路の寄り道でした。
柔らかな土を、草履が踏む感触というのは悪いものではありません。
足裏にそれを味わいながら、智照はその人のことを回想しています。
彼が彼女と、初めてここを訪れたのはまだお互い、高校生の時分でした。
――あの頃から、あの人は強くて優しかったですよねぇ……。
智照の問いはやがて、もうこの世界に存在しない人に向かっていました。
「そういえば、どうして君は、あの頃の私なんかに付き合ってくれていたんでしょう? まるで正反対のふたりでしたのにねぇ」
思わず口をついた言葉に、彼は足を止めてしまいました。
少し、気恥ずかしくなったのか足元に視線を落とします。
やがて、お供え物に手を伸ばしていた幼き時代のように、おそるおそる智照は顔を上げました。
そして見たのです。
寝子島高校の制服姿を。女子です。
今の制服デザインではありません。智照が仏門に入る前、『ちしょう』ではなく『ともてる』だった時代の制服でした。
たいていのことには動じない智照も、これには一瞬、言葉を失いました。
なぜって。
無垢な黒髪を風になびかせ、いつもの微笑みで、秋桜畑を歩いてくるのは……あの日の彼女だったからです。
その姿は、現在の智照よりずっと若い。彼と祝言を挙げるより前、すなわち高校生の姿なのでした。秋の青空のように透明感があって、涼やかで、みずみずしい、あの日の彼女……。
白昼夢かと智照は思いました。
しかし最初の驚きが去ると、不思議とこの事実を、平然と受け入れている自分に彼は気がついたのです。
智照は、かつて噂を耳にしたことがあります。この秋桜畑を訪れると、不思議な現象に包まれることがある……と。たとえ集団で訪れようと、気がつけば誰かと、ふたりきりになっているというのです。
彼女とともに何度もこの場所には来ましたが、それでも智照は一度だって、そんな現象に出会ったことはありませんでした。
しかしその奇跡が今、彼に訪れたようです。
噂は真実だった――そのことを彼は、頭ではなく心で理解しています。
だから彼女に、こう呼びかけたのです。
「やあ」
笑いかけます。彼女がたとえ、幽霊だとしたって構わない。
「最後に逢った君よりも随分と若い姿じゃないか。どうせなら結婚してからの姿で来てくれれば良かったのに」
すると彼女は、ふっと笑みを返してくれました。
「いつものこと……そうだったね。俺たちはいつだって逆方向。君がイエスと言うなら俺はノー、君がハローなら俺はグッバイ……たしか、そんな歌があったよね」
まるで正反対のふたり、それは智照が数分前、図らずも口にした言葉です。
ためいきをついて、智照は両腕を広げました。見てくれよ、とでも言うかのように。
「俺は老けたね、ってそりゃもう娘も二十歳だから」
いつしか彼は彼女と並んで、柔らかな秋桜畑を歩んでいます。
「……ああ、元気にやっているよ、俺も娘も。俺だって、さすがにもうあの頃のような無茶はしてないさ」
智照は饒舌になっていました。話したいことはたくさん、それこそ何時間何日だって話し続けられるくらいあります。
夢中で話し続けていた彼ですが、彼女の視線に気がついて、
「何だい? そんな物珍しそうに俺の顔を見て……」
照れくさそうの頬をかきました。
そして、ああ、と思い至ったのです。
「そういえば……この姿を、君は見る機会はなかったか?」
袈裟の位置を直し、剃髪にした頭をつるりと撫でました。
「あんなに親父と同じ道は嫌がっていたのに不思議だよな」
代々僧職の家系の一人息子、さらには大学も仏教系、それが智照の生い立ちです。けれども彼は、僧侶になるつもりなどさらさらありませんでした。むしろ、親に敷かれたレールを歩むような生き方に反発し、いくらか荒れていた時期もありました。
そんな彼が仏門に入った理由、それはひとつです。
妻の死。
人生を変えるような出会いがあるように、人生を変えるような別れもあるものです。
彼女の死によって大いなる無常観を抱いた智照は、みずから進んでその髪を落としたのでした。
「……」
このとき智照は、目の奥に少し、熱いものを感じました。
唐突に彼は悟ったのです。もう、この幸せな邂逅は終わりにさしかかっているのだと。
「こちらで君への土産話を沢山用意できたらそちらに行くから、もう少し待っててくれるか?」
このとき、さぁっと秋桜の花びらを舞い上げる風が吹きました。
彼女の返事が聞こえない。
表情が、見えない。
智照が手を伸ばしたとき、
彼は、元いた世界へと戻っていたのです。
そこは賑やかな観光地、広い秋桜畑です。
きゃっきゃと声を上げているのは、中学生の集団でしょうか。
恋人同士らしきカップルが手を握り合って歩いています。
はたまたカメラマンのグループが、競い合うように桃色の花を撮影していたりもします。
智照は眼鏡を取り、空を仰ぎました。
彼の頬をひとすじ、透明な液体が流れ落ちていきました。
もう少し……という気持ちはあります。けれども智照は悔やんだりしません。そのまぶたの裏には、若かりし頃の彼女の姿が、しっかりと焼き付いているからです。
「今夜は娘に電話をしてみることにしましょうかねぇ」
彼は独言しました。
さあ、帰りましょう。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年04月05日
参加申し込みの期限
2015年04月12日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年04月12日 11時00分
参加キャラクター一覧
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