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シーサイドタウン駅の前で午前十一時に待ち合わせ。
雲ひとつ無い秋空に輝く朝日を仰ぎ、
伊予 祐
は琥珀色の眼を眩しげに細める。
駅前の時計が示すは午前十時。
(まあ、でも、デートってやつだ。俺がしっかりしてないとな)
待ち合わせの相手の顔を思い出して、思わず緩む頬を片手に隠す。
――お散歩、いたしましょう!
儚げな容姿に反して明朗闊達な彼女は、待ち合わせを決める際にそう言っていたけれど、ふたりっきりの散歩は即ちデートではないだろうか。
(……デートでいいのかな)
どうにも頬を緩ませる言葉の響きに、祐はちらりと眉を寄せる。散歩と言う名のデートだと思っているけれど、彼女にすればデートと言う名の散歩なのかもしれないと思い至って、それでも基本大雑把でお人好しな青年は明るく眼を細める。
(散歩でも何でもいいや)
改めて言葉にしてしまえば、どうにもむず痒い心持ちになってしまうから。正直なところ、彼女の隣に居られるだけで、心は例えようもなく嬉しくて幸せになれる。だから、今はこのままでいい。
冷たい空気に伸びをして、苦笑いに歪めかけた頬が固まる。丸く見開いた瞳の先、黒く艶やかな髪を結う紅色リボンを楽しげに揺らして、跳ねる足取りの少女が歩いてくる。
朝の光に縁取られた少女じみた容姿の女性は、祐の眼に太陽よりも眩しく見えた。細めた眼は自然と笑みのかたちになる。
「はよっす」
「祐さん」
待ち合わせ場所に祐の姿を見つけ、
雪代 伊織
は苺色した瞳をくるりと丸めた。太陽のように明るい笑顔を見せてくれる祐に、元気一杯お辞儀をする。
「おはようございます」
お互いに待ち合わせ時刻よりも早く来過ぎたふたりは、照れ臭さに顔を見合わせ笑い合う。
(祐さんとお散歩、なのですが)
眩しい朝の駅前で祐と待ち合わせて向かい合った途端、伊織はふと思い至る。
(こ、これがデートというものでしょうか!)
そう思って、思わず右手と右足が一緒に出た。心臓がドキドキ飛び跳ね始めた。朝の陽射しのせいだけでなく頬が熱く感じられて、思わず俯く。
「どうした?」
ひょいと何気なく覗き込まれて、その顔の近さにまたドキリとする。
「大丈夫、何でもありませんわ」
首を大きく横に振る。不審なはずの動きにも、祐は怪訝そうな顔ひとつせずに屈託のない笑顔を見せてくれた。
人を容易く信用するのは、彼が底抜けに優しいからだろうか。折れない芯を有しているからだろうか。それとも――
「じゃ、行くか」
「はい!」
秋風を受けて歩き始める祐の隣に並び、伊織はその位置の心地よさに、理由も分からず小さく笑む。
(でも何故でしょう?)
傍らを歩く祐の楽しげな横顔を見仰ぎ、伊織はちらりと首を傾げる。この間から、祐と顔を合わせる度に、祐を思う度に、胸が妙にそわそわする。
(……お兄ちゃん)
昔、心臓が弱くて入院していた頃、病室に閉じこもりがちだった自分をよく見舞ってくれた、人懐っこい笑顔の『お兄ちゃん』。あの頃は名前も知らなかったけれど、
(祐さん)
この間、知った。あの『お兄ちゃん』は、今隣を歩いている彼だった。
胸のそわそわが納まらず、悶々とする心をどうすればいいのかも分からなくて、伊織は頬を薄紅に染めたまま足を早める。
「ん?」
「鯛焼きを買って参ります!」
「ああ、あそこか」
駅近くの建物と建物の隙間、一見店があるとも思えない路地に駆け込む伊織の後、祐は勝手知ったる顔で追いかける。
(たい焼きが欲しかったんだな)
顔を合わせた時からどこか落ちつかない風だった理由が腑に落ちて、ちょっと安心する。建物の隙間にあるたい焼き屋の前に立ち、キラキラした瞳でたい焼きを求める伊織を眺める。
艶やかに長い黒髪、感情豊かな苺色の瞳とそれを縁取る長い睫毛、育ちの良さを表すかのようにいつも凛と伸びた背筋。
(いや実際、若くして海外の大学を出てる才女だけどさ)
一見楚々とした品のいいお嬢さんではあるものの、
(こういうのの好みは庶民派だよな)
基本的に甘いものに目がない彼女の食べっぷりを思い出す。以前、一緒に甘味処に行ったときは、全てのメニューを制覇さえしてみせた。その細い身体のどこに入るのか不思議になるくらい、ものすごく美味しそうに、尚且つものすごくよく食べる。猛者とさえ言ってもいい。
「祐さん、出来たてだそうですよ!」
無口な店主から受け取ったたい焼きの袋を大事に抱え、香ばしく甘い匂いを吸い込みながら満面の笑みで伊織が振り返る。
「向こうで頂きましょう。祐さんもどうぞ」
嬉しそうに海に繋がる桜川の岸のベンチへと駆けて行く小柄な背中を追う。陽射しに揺れる黒髪が触れたいくらいに綺麗だった。
可憐な容姿とたい焼きの取り合わせがひどく可愛くていとしいものに思えて、
(抱きしめたい)
反射的に思ってしまう。隙間のたい焼き屋を離れ、通りに出る。うっかり口元が緩んでいる気がして、片手で唇を押さえかけて、
「伊織」
先を行く伊織の腕をその手で掴む。引き寄せる。驚いて振り返る伊織の風になびく黒髪の先、少年の乗った自転車が猛烈な勢いで掠めた。
「きゃっ!」
小さく声を上げる伊織の手から、たい焼きの袋が滑り落ちる。
「あぁーっ!?」
伊織の悲愴な叫びを耳にしながら、祐は咄嗟に腕を伸ばす。犯人を追う刑事のように素早い動きにも関わらず、たい焼きはまるで生き物のようにアスファルトの地面に跳ねた。祐の手が虚しく空を切る。
袋から零れて落ちたいくつものたい焼きは、そのまま地面を滑り、道の端から桜川へと飛び込んだ。
「あぁっ、待ってくださいっ」
転びながら必死に追い掛ける伊織を嘲笑うかのように、たい焼きが水面に跳ねる。透明な飛沫があがり、たい焼きの姿は桜川に消える。
「まもれなかった……」
空を切った手を差し伸べたまま、祐は呆然と呻く。伊織が楽しみにしていた折角のたい焼きが。
(熱々のほかほか、外はパリっと中はほくほくのたい焼き……)
「う、うぅ……」
川岸に下りる階段の手摺に縋って呻く伊織の華奢な肩が震えて見えて、祐は慌てて傍に駆け寄る。
たい焼きが消えた桜川の水面を見つめ、伊織は手摺の前にへたりこむ。
「鯛焼きが……私の鯛焼きが……」
ショックだった。
転んだ時に擦りむいた膝がひりひりと痛む。自分がうっかりよそ見をしたせいで犠牲になってしまった鯛焼き達に、思わず涙が零れる。
「な、泣かないで!」
覗き込んだ伊織が顔を赤くして目に涙を浮かべているのを見、祐は焦った。伊織がそんなに大事に思っていたたい焼きを助けられなかったことが申し訳なくて、涙に濡れる伊織の頬があんまり痛ましくて、つられて泣きそうになる。折角のデートだったのに。
(俺がしっかりしてないといけないのに)
女の子の涙にあわあわと取り乱して、でも、子どものようにしょんぼりと肩を落として泣く伊織の姿が、昔に出会ったあの時とふと重なった。
あの時も、この子はこうして泣いていた。
「大丈夫、大丈夫だから」
泣き出しそうに歪む唇で息をひとつ吐き出して、手を伸ばす。小さな少女にするように、伊織の頭を撫でる。幼子をあやすように、大事に抱きしめる。
(……君がいなくならなくてよかった)
お互いに幼かったあの時、君は急にいなくなってしまったけれど、でも、またこの島で再び出逢えた。
「う、うぅ……大丈夫です」
祐に頭を撫でられ優しく抱きしめ慰められて、伊織はめそめそしながらも何とか頷く。痛む膝に大して血も出ていないことを確かめて立ち上がる。
(私の鯛焼き……)
「すっごくすっごく勿体無いですけど……」
「たい焼きはさ、大海原へ泳いでいったんだ」
子どもに御伽噺を聞かせるように、祐が明るい声で笑ってくれる。
「だからたい焼きはまた帰ってくるよ、きっとさ」
そんな風に言ってくれる祐の優しさに、胸が温かくなる。
(そういえば)
入院していた幼い頃、脆弱な自分の心臓に失望して一人で泣いていたときにも、この人はこんな風に頭を撫でてくれた。泣き止むまで傍にいてくれた。笑わせようと必死に話をしてくれた。
昔も、今も。
「祐さん」
あの頃は呼べなかった『お兄ちゃん』の名を呼んで、伊織はここ最近の『悶々』の正体にようやく気付いた。
幼心に『お兄ちゃん』に抱いていたあたたかな感情が、今もこの胸に灯っていることが不思議でならなかった。その感情の名が分からないとずっと思い込んでいた。
(本当は)
本当は、幼い頃からとっくにその正体が分かっていたのに。その筈なのに、言えなかった。あの頃は、自分の命に見切りをつけていたから。短く定められた己の運命が悲しすぎて、悲しまないために、己は人形なのだと己に言い聞かせ続けた、あの頃。
突然の渡米で、さよならも言えなかった幼い日を思い出す。これで良かったんだと信じようとした、あの頃。
でも今は、あの頃とは違う。
「祐さん」
もう一度、『お兄ちゃん』の名を呼ぶ。
真直ぐに見れば真直ぐに見つめ返してくれる祐に向け、伊織はあの時言えなかった言葉と、言いたかった言葉を、
(今ならきっと言えるはずだから)
「私は、貴方をお慕い申し上げております」
ただひたすらに真摯に、唇に乗せる。
あの頃の自分のために、今この時、心乱れるほどに恋い慕う彼と向き合うことの出来ている自分のために。
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担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年04月04日
参加申し込みの期限
2015年04月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年04月11日 11時00分
参加キャラクター一覧
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