this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
鍵のない部屋で
<< もどる
1
…
5
6
7
8
9
…
11
つぎへ >>
床を丁寧に掃き清めて、店の掃除はおしまい。
掃除道具を片付けようと店の入り口から店内へと視線を戻して、
天動 記士郎
は柔らかな印象の茶色のたれ目をちょっと細めた。
「あまりぱっとしない店ですからねえ……」
普通の民家を改築した雑貨屋は、店主である記士郎の贔屓目で見ても半分倉庫のように殺風景だ。
端に積み上げた段ボール箱の中からは昔ながらの招き猫や黒猫の縫いぐるみが顔を覗かせ、別の段ボール箱からは最近扱い始めたアルパカグッズのアルパカたちが長い首を並べ長い睫毛に縁取られたつぶらな目を蛍光灯に光らせている。
飾り気のないステンレス棚には昔流行ったプラスチックの玩具やブリキのロボット、空気で跳ねる蛙に紙風船、猫の飾りのついた砂時計や小さなサボテンを収めた硝子瓶、ごついバネが取り付けられた握力強化用の健康器具。用途もバラバラ、多種多様な品が雑然と並ぶ。
せめてもう少しくらい片付けようかと段ボール箱のひとつを抱えたところで、
「今日はー!」
元気の良い声と共に店の扉が開いた。
秋の涼しい風を連れて戸口に立っていたのは、初秋の夜にバーで知り合った
司馬 佳乃
。
「お邪魔します、天動さん」
肩より少し長い黒髪を揺らし、無垢な子供のように輝く黒い瞳を和やかに笑ませ、佳乃はぺこりとひとつ、実直な性格そのままのお辞儀をする。
「わざわざありがとうです」
「いえ、仕事が休みでしたし、約束もしましたし」
持ち上げていた段ボール箱を下ろして頭を下げ返す記士郎に、佳乃は上げかけた頭をもう一度下げる。
ほとんど同時に頭を上げて目があって、ふたりは思わず顔見合わせて笑いあう。
「ゆっくり見て行ってくださいね」
「ありがとうございます」
片付けに忙しそうな記士郎の邪魔にならないよう、佳乃は店内をのんびりと巡る。
アルパカの傘立てには高いところのものを取るマジックハンドが大量に入れられ、開けば猫の頭の形になる傘と並んで災害時用の保温アルミシートが重ねて置かれ、実用品に始まり便利グッズに健康器具、果てはファンシーな小物までが並ぶ不思議な品揃えに、佳乃は目を丸くする。
「こっちにも色々ありますよ」
呼ばれて足を運んだ奥の部屋にズラリと並んでいたのは、深夜のテレビ通販番組でハイテンションなお兄さんお姉さんが紹介しているような健康器具。
「大物もあるので、物置も兼ねたこっちの部屋に置いてるんです」
倒れるだけで腹筋を鍛えられるベンチに、ぶら下がり健康機、ルームランナーにトランポリン、バランスボール。新旧様々の健康器具が八畳ほどの部屋に並ぶ様はまるでちょっとしたジムのよう。
「こういう健康器具、田舎の実家にもありますよ」
「ご近所のおじさんとかおばさんに試しに使ってもらってます」
小さな明り取り用窓がひとつきりの部屋の電気を点け、記士郎は佳乃を室内に案内する。
「なんだか懐かしいなあ」
遠く離れた故郷の実家にもあったぶら下がり健康機を見上げ、佳乃は小さく笑う。
「でもどうしてこれを私に? もしかして記事にして欲しいってことですか?」
戸口に立つ記士郎を振り返り、思ったままを素直すぎるほど素直に口にする。
「そうですね、結構面白い所ですし……」
言いながらいつも首から提げているカメラを持ち上げようとして、仕事が休みの今日は持参していないことに気がついた。しまった、と白い頬を薄紅に染めて照れ笑いする。
「今度は、」
きちんと取材に来ます、と言いかける佳乃の声を遮って、記士郎が背にした扉が突然音立てて閉まった。
「わっ?!」
前触れもなく閉まった戸に、佳乃は文字通り飛び上がる。
「大丈夫ですよ」
驚きを隠せない佳乃に笑いかけ、すぐに戸を開こうとドアノブに手を掛けて、記士郎はうなじで纏めた茶色の髪の頭を掻く。鍵もないはずの戸が、どうしても開かない。
「どうかしましたか」
戸を揺する記士郎の背に近づき、佳乃は不安な声をあげる。風でも吹き込んだのかと思ったけれど、簡単に開くはずの戸は、記士郎が体当たりをしても開かなかった。
「変ですね」
部屋にひとつきりの小さな窓に手を掛ける。鍵は簡単に外せるその癖、窓は不思議な力に閉ざされたように重く閉ざされ開かない。
「どうしたんでしょうね」
佳乃を恐がらせないよう、記士郎は出来るだけのんびりと笑ってみせる。そうしながら、こっそりとエプロンのポケットに仕舞った白蛇の鱗に触れる。寝子島の空を渡る風が覗ける己のろっこんを発動させる。
脳裏に広がる寝子島の空は、秋の乾いた風が穏かに流れ、しばらくは快晴が続きそう、――
(……変、ですね)
その快晴のはずの空に、ぽつり、黒い点を落としたかのように黒い雲が湧いている。星ヶ丘のほんの一区画にのみ風雨を降らせ、雷さえ爆ぜさせる黒雲は、けれど上空を占める乾いた空気の中では現れるはずのないもの。
神魂絡みの不思議なことが起こっているのだろうと見当をつけながら、記士郎はろっこんのことなど知らなさそうな、故に不安そうな佳乃を窺う。
(……なんとかしないと)
「……ごめんなさい」
思いつめた表情で開かない戸を見つめていた佳乃が不意に深々と頭を下げた。きょとんとする記士郎に、佳乃は頭を上げないまま続ける。
「私がここに来なければこんなことには……」
もう一度、と小柄な体全部を使って戸を開こうとする。
店の出入り口に鍵はかかって居ない。もしも泥棒に入られたらどうしよう。
(ううん、)
もしかしたらもう泥棒は入っていて、この戸を開かなくしたのはその泥棒なのかもしれない。
募る不安を隠し切れず、佳乃は今にも泣きそうになる。
「ごめんなさい」
泣き出しそうな顔で繰り返す佳乃に、記士郎は首を横に振る。何の心配もしていない明るい笑顔を見せる。
「お店のこと心配してくれてありがとうです」
どこまでも気楽に、どこまでも大らかに笑う。
「どうせあまりお客さん来ないですし」
だから、と周囲の健康器具を見回す。始めに目についたぶらさがり用の鉄棒にエプロン姿のまま、ひょいと両手で掴まる。この現状が何でもないことのように懸垂してみせる。
「トレーニング楽しいですよ」
「趣味なんですか」
「どうでしょう、でも、長く続けることはわりと得意です」
話せば佳乃の憂い顔も少しは晴れるかと考え、記士郎は努めて朗らかに話し続ける。
「最新の流行には疎くなってしまいましたが」
「そうなんですか」
開かない戸に掛けた手は離さず、佳乃は不思議なくらいに落ち着いて見える記士郎を見やる。店主である記士郎に大丈夫だという確証があるのならば、
(私はそれを信じるしかない)
記士郎は鉄棒を離れ、次はバランスボールに座る。
「寝子島にはいろいろ変わった人や面白い場所があるので記事にするのが楽しそうですね」
地方紙記者である佳乃にできるだけ話しかけながら、記士郎はボールを使ったトレーニングを始める。
「この島のいいところをたくさん伝えたいです」
楽しげにトレーニング動作を繰り返す記士郎を見つつ、佳乃は大きく頷く。話を聞いたり、自分でも喋ったりしているうち、気がつけば知らない間に気が紛れている。
「どうしてこういうお店を開こうと思ったんですか」
「元々は本土で通販社員をしていたんですが、……祖父が亡くなってこの家を更地にしてしまうかという話が出てきた時に、なんだか勿体無いような気持ちになって」
小学生の頃まで住んでいたこの家が無くなってしまうのは寂しかった。
「それで自分が住むことにしたんです。住むからには、ここで何か始めたくて」
「それで雑貨屋を?」
「はい、雑貨屋を」
気安く言葉を交わしながら、どれくらいの時間が経っただろう。
トレーニングに精を出す記士郎を見ながら、何となく戸に手を掛けて、
「……あれ?」
開かなかったのが嘘のようにあっけなく、あっさりと戸が開いた。
「天動さん、開きました! 良かった、やったあ!」
子供のように飛び上がり、全身で喜びを表して、佳乃は部屋の外に飛び出す。
一番に確認したのは、店内の様子。
(良かった、荒されてない)
「せっかく遊びに来てくれたのにすみません」
胸をなでおろす佳乃の傍ら、心底申し訳無さそうに記士郎が立つ。
「何事もなくて本当に良かったです」
首を横に振り、佳乃は安堵の笑みを零す。泥棒の形跡のない店内を見回し、訪れた時から目をつけていた小さな砂時計を手にする。
木製の小さな砂時計を両前肢で抱いて支えてお茶目に笑う、可愛らしい三毛猫。
「これ買って行きます」
「気に入ってもらえましたか」
実用品からそうでないものまで雑多に扱う雑貨屋の店主は穏かに笑う。
「どうぞ、プレゼントしますよ」
「そんな、プレゼントなんて悪いですよ」
「そう思われるのでしたら、また立ち寄ってください」
弾かれたように首を横に振る佳乃に、記士郎はほんの少し悪戯っぽく笑ってみせる。
いいんですか、と念を押して後、佳乃は砂時計を両手に包んで丁寧にお辞儀をする。
「ありがとうございます……なんかバーの時も似たようなことありましたね」
「そうでしたっけ」
「そうですよ。今度はちゃんと『お買い物』させてくださいね?」
子供のようにくるくると表情を変える佳乃の素直さがとても可愛らしくて、記士郎は笑みを深めた。砂時計を一度受け取り、新聞紙に包んで紙袋に入れる。
「また来ます」
「お待ちしてます」
閉ざされた部屋で過ごして縮まった距離の分だけ親しい笑みを、小さな砂時計と小さな約束を挟んでふたりは交わす。
<< もどる
1
…
5
6
7
8
9
…
11
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
鍵のない部屋で
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年03月01日
参加申し込みの期限
2015年03月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年03月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!