this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
鍵のない部屋で
1
2
3
4
5
…
11
つぎへ >>
紫電の一閃が窓の外を奔る。
瞼の裏に残る光の幻が消えぬ間に、地響きに似て雷鳴が轟く。
指先に触れたままのドアノブにさえ震わせる稲妻の残響に、
木原 一颯
は老いた瞳を伏せた。
(密室か……)
電光失せて暗い『villa L'eremita』の店内に、空覆う雷雲が闇を重ねる。
(なに、そのうち解けるだろう)
己が邸の一室に閉ざされて、けれど邸の主は穏かに瞳を上げる。老境に差し掛かり、隠居を決め込んだ己に人と会う約束はなく、急かされる仕事もない。幸か不幸か、時間はたっぷりとある。
それに、この状況ならば。
深く静かに息を吐き出す。撫で付けた灰色の髪の一筋を、痩せた肩を僅かに震わせ、肩越しに振り返れば、精緻な薔薇の細工施された円卓に白く細い指を添わせて置いて、黒い裳裾を長く引くドレスの貴婦人。
「ルチア……」
一颯の呟きに応じ、マスカレードの華やかな仮面にその白い面を隠した黒衣の貴婦人が緩やかに肯う。ドレスの裾を指先につまみ、優雅に一礼する。
「よく来てくれたね」
若き日に生き別れて後、現れるようになった恋人の亡霊に、――顔を確かめられぬが故に恋人であると信ずる、確かに生者ではない彼女に、一颯は恋人に向ける親愛の笑みを向ける。
一颯の笑みに応じるでも拒むでもない彼女の為に椅子を引き、彼女の為に二人分の紅茶を淹れる。
人ならざる彼女に紅茶は口に出来まいが、
(……気持ちの問題だ)
この場に現れてくれた彼女をもてなしたかった。
(あるいは自己満足か)
馥郁たる香り放つ紅茶を彼女に供しながら、一颯は己を哂う。
「君は変わらないね」
生者そのものの姿で、生者ならざる雰囲気で、静謐纏うて椅子に座す彼女に微笑みかけ、対峙して椅子に掛ける。
「別れたあの日のままだ」
仮面から僅かに覗く白い頬に、恋人の面影を想う。修道院の秘密の花園で一度きり触れたルチアの肌の温もりを想う。そうして、紅茶のカップに触れる己が節くれた指を見下ろして、年老いて既に死を待つばかりの己が身を思う。
あの日が遠い過去となった今も、共に逃げようと誓ったあの日を、果たされなかった約束を、忘れたことはない。
「あの日君は」
マスカレードの夜、約束の場所に現れなかった理由を問おうとして、
「……いや」
止める。全ては過ぎた事。時間は巻き戻らぬ。
頭をそっと横に振る。ただ黙って耳を傾けるばかりのルチアの亡霊を見つめる。渇いた唇を紅茶で湿して、知らぬ間に温くなっていることに気付いた。窓を打つ雨音が一時絶え、柱時計の秒針の音が耳朶に響いた。
絡み付いて固まった時間を振り解くように、背筋を正す。
「……聞いてくれるかい、ルチア」
壮年を前に罪を犯して後、人生を贖罪に捧げるが如く、人目を恐れ、人付き合いを避け、為に遠くイタリアに移り住んだ。
それでも、生活に苦労はしなかった。己が手掛けたピアノは好事家に高く売れ、幸いにして安楽な老後を過ごせるだけの蓄えはある。
「一つ、心残りがある」
それこそが、一度は離れたこの島に戻った理由。
「僕は、僕が何十年という歳月を費やし磨き上げた技術を後世に継承できない」
妻子なく天涯孤独であるが故に、心の片隅で優秀な弟子を求めた。この手に宿るアルティジャーノの魂を受け継ぐ者を求めた。
「死ぬならば僕が生きた証を、職人として持てる技術の全てを誰かに伝えて死にたい」
老いたピアノ職人は幾台もの優れたピアノを作り出した己の手を見つめ述懐する。
「その為に職人として黄金期を過ごしたこの島に戻ってきた」
過酷な修行に耐え、研鑽を重ね高めた技術を持ち腐れて死ぬなど、
(ましてや僕の代で絶やしてしまうなど)
職人の矜持が許さぬ。
「……傲慢かな」
死を覚悟して未来を見据える老いた瞳が、不意に苦しげな笑みに歪む。黙して語らぬ恋人の亡霊に縋るようなまなざしを向ける。
「どうだろう、ルチア」
仮面に隠した恋人の瞳を見つめ、応えを求める。円卓の縁に重ねて置かれた恋人の手に指を伸ばし触れようとして、その指を拳に握りこむ。もう片方の掌で押さえつける。
一度瞼を閉ざし、職人としての強い意志宿して恋人の亡霊を見つめる。
「伝えるべき事を伝え終えたあとならいつ死んでも悔いはない」
そう口にして、知らず唇が笑んだ。
「地獄の業火に焼かれても構わない」
「あなたは」
恋人の亡霊が囁く。
「アルティジャーノなのだわ」
悪魔に取り憑かれたかのように壮絶な、どこか狂気じみた炎のような笑みは、けれど正面の恋人が唇を開いた途端にその瞳から消える。
恋人の亡霊が発した短い言葉に傷ついたように、あるいは免罪符を得たかのように瞬いた瞳は、
「ただ、……天国にいるだろう君に会えないのだけが心残りだ」
穏かに年重ねた老爺のそれに戻る。謎めいた微笑みの気配だけを浮かべる恋人に、年重ねた分だけの老獪な笑みを向ける。紅茶のお代わりでも如何かな、と立ち上がり、
(さて、弟は天国と地獄どちらにいるのかな)
未だ荒れる窓の外を見遣る。恋人からも視線を逸らして瞼を閉ざす。
(どちらにせよ、僕の事を赦しはしまい)
1
2
3
4
5
…
11
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
鍵のない部屋で
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年03月01日
参加申し込みの期限
2015年03月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年03月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!