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鍵のない部屋で
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茜色の海に散る波飛沫を白く砕いて、夕風が押し寄せる。
気紛れに渦巻く風に高く結い上げた長い黒髪を乱されて、
詠坂 紫蓮
は夕空と同じ優しい紅色した瞳を細める。
「さすがにシーズンじゃないしあんまり人いないね」
声を掛けられ、風に暴れる髪を押さえ振り返る。何気なく振り返った瞬間にカメラのシャッターを切られ、紫蓮は不意をつかれて瞬いた。驚いて眼を大きく見開いた瞬間も、思わず笑み崩れる瞬間も、連続で写真に切り取られ、
「譲にいさん」
紫蓮は息をするように写真を撮る遠縁の青年の名を呼ぶ。
「もう、そんなに撮らないで」
「ごめんごめん」
夕焼けと同じ色に頬を染めて笑う紫蓮があんまり綺麗で、譲は謝りながらもファインダーを覗き込む。もう一度シャッターを切る。
「約束したから」
少し前、ふたりでアウトレットモールに足を運び、紫蓮のために服を選んだ際の約束を口にしながら、譲はファインダーから若草色の瞳を上げる。悪戯っぽく明るく笑む。
夕日の海に辿り着くまでも、寝子島の色んな場所で色んな表情の紫蓮を写真に収めている。
「ありがとう、譲にいさん」
急に呼び出して連れ回した挙句、海に行きたいとわがままを言っても拒まず、快くバイクを出してくれた譲に、紫蓮は満面の笑みを浮かべる。
「ううん、楽しかったよ」
屈託のない譲の笑顔が嬉しくて、紫蓮は思わず緩みそうになる頬を片手で隠した。触れた頬の熱さに戸惑って、譲に背を向ける。海沿いに敷かれた石畳の遊歩道を先立って歩きながら、ひとり、照れ臭い笑みを零す。
(へへ、まるでデート……みたい?)
ちらり、視線を投げれば、当の譲は真剣な顔で夕日にカメラを向けているけれど。
(譲にいさん)
紫蓮の視線に気付きもせずに遠くを見つめる『譲にいさん』は、
(私の事まだ親戚の……家族みたいに思ってるのかもだけど)
向けてくれる優しさは、優しいこの人が親戚の女の子に向ける分だけの優しさなのかもしれないけれど。
(いつか、一人の女の子として見てもらえたら……)
「お待たせ。行こうか、紫蓮ちゃん」
いい一枚が撮れたのか満足げな笑みで頷く譲に笑み返し、紫蓮は譲の傍らに小走りに駆け寄る。海風に吹かれながら、肩を並べて歩き始める。
小さな松林を抜け、岩場に渡された木製の遊歩道を辿ったその先、海を一望できる小さな小屋。
四方を透明なアクリル板で囲われた小屋の中には、流木で造ったらしい素朴な長椅子が一脚きり。
「……休憩所みたいね」
「ちょっと休憩しようか」
小さく息を吐くように呟いた紫蓮の横顔に僅かな疲労を見て取り、譲は夕風に伸びをする。迷いなく小さな休憩所の引き戸を開ける。
「流石にだいぶ歩いたものね。休もっか」
譲の後に続き、引き戸を閉めれば、海風の遮られた休憩所の中は案外温かかった。
流木の椅子に並んで腰掛け、穏かに暮れて行く海を眺める。
肩が触れるほど間近にある譲の体温が、気楽な沈黙がなんだかくすぐったくて、
「……あ、そうだ」
紫蓮はふと思い出した風を装って声をあげる。
「お昼で残ったサンドイッチは良かったら持って帰ってよ。流石に私も作りすぎたかなー、とは思ったんだけどね」
「ありがとう」
好きな人が何気なく口にしてくれる礼が嬉しくて、紫蓮は知らず頬を上気させたまま首を横に振る。照れているのを悟られたくなくて、
「今日はいっぱい写真も撮ってもらっちゃったし、……寒い時期になる前に、よければ、またお出かけしたいな。あ、遠出しなくてもいいのよ。近くでいいの」
次々に言葉を押し出して喋る。はしゃいでいるように見えるかな、と思って、思ってしまえばますます照れ臭くなって、
「とと、」
紫蓮は勢いよく立ち上がる。
「名残惜しいけれど暗くなる前に出ないと門限過ぎちゃう」
譲が選んで合わせてくれたコートの裾と黒髪を翻し、殊更明るく笑ってみせる。
「帰りもバイクの後ろ、楽しみにしてるね」
バイクツーリングを趣味のひとつにする譲は、ふたりで出掛けるとなるとよくバイクを出してくれる。
譲のバイクの後ろに乗るのが大好きだった。『譲にいさん』はきっと自分と同じで、紫蓮も風を纏って風と一体になる爽快感が好きなんだと思っているのだろうけれど、
(思いっきりくっつけるもの……ね)
紫蓮は風になれることよりも、譲の背に抱き着けることの方が大きかった。
譲の広くて温かな背中を思い出した途端に赤くなる頬を隠して、紫蓮は引き戸に手を掛ける。
「……あれ?」
鍵もなくすんなりと開くはずの戸は、けれどどれだけ力をこめても開かなかった。
「……壊れちゃった?」
「え?」
背後に譲が立つ。ふたりで力を合わせて引いても、戸は頑として開かない。
「もしかして閉じ込められた?」
「え、でも、嘘、なんで?」
顔色を変え引き戸をガタガタと揺すって慌てる紫蓮の頭を、譲は落ち着かせるように柔らかくぽふぽふと叩く。
「大丈夫だいじょうぶ」
動じぬ声で囁きながら、もう一度力をこめる。建てつけが悪いのかと戸を掴んで揺らしてみる。風で飛んで来た何かが挟まったかと戸の向こう側を覗き込んでみる。
思いつく限り色々試し、それでも開かないことを確かめて、譲はアクリル板の壁越しの外を眺める。
秋の日暮れは早い。ついさっきまでは鮮やかな茜色だった空はもう、宵の藍色に沈もうとしている。足もとが良いとは言えない岩場の道を無理に進めば、自分はまだしも、紫蓮が怪我をしてしまうかもしれない。
「とりあえず明るくなるまで待とうか」
不安の欠片もない笑顔であっけらかんと告げられ、
「大丈夫! 俺が付いてるし!」
親戚の『譲にいさん』の頼もしい顔で宣言され、紫蓮は小さく頷く。
「う、うん! 寮には親戚の所泊まるって言えば大丈夫だと思うし!」
答えながら、寮への言い訳を口にして、ほんの少し後ろめたい思いに駆られた。だってこんなところで夜明けを待つ不安よりも恐怖よりも、むしろ一緒に居られることが嬉しさがどうしても勝ってしまう。
開かない戸の前を離れ、寮と連絡を取りながら、紫蓮は鞄に仕舞っていたサンドイッチ入りのお弁当箱を取り出す。長椅子に掛けなおし、弾みそうになる声を極力抑えて寮への連絡を済ませ、
「そうとなったらまず腹ごしらえよね」
残りもののサンドイッチで簡単に腹を満たし、まだ少し温かい紅茶で体を暖める。
そうしているうちにすっかりと空は暮れ、周囲を宵闇が包む。海風に混じり、波の崩れる音が遠く響く。
「まだ十月って言っても日が落ちると冷えるね」
藍の海に落ちる三日月の影を眺め、譲は温かな息を吐き出す。上着を脱ぎ、紫蓮の細い肩に掛ける。
「でも」
「いいよ、こういうのは慣れてるから」
躊躇う紫蓮に、島に戻るまでは戦場カメラマンとして長旅を続けてきた譲は笑いかける。上着の襟を抱き寄せて素直に頷く紫蓮と一緒に、海の上の空にも海面にも広がり輝く星々を見渡す。
「こんなときになんだけど見れてよかったかな……」
ぽつり零して、傍らの紫蓮が欠伸を噛み殺しているのに小さく笑う。
「眠い?」
「朝早かったし、……今日が愉しみであまり寝れなかったし、」
でも、と紫蓮はぐずるこどものように瞼を掌で擦る。
「でも、もっとお話したいし、……」
言いながら、今度は堪えきれなかった欠伸を洩らす。まるきりこどもにするように頭を撫でられ、肩に抱き寄せられ、けれどその扱いに怒るよりも先に心地よい安堵感が勝った。逞しい肩は温かいし、海鳴りよりも近く力強く聞こえる心臓の鼓動がどんなものより安心をくれる。
寝言じみて眠りたくないと言いながら、結局穏かな寝息を立て始めた紫蓮の頭をもう一度撫でる。そっと抱きかかえ、肩にもたれかかる頭を膝の上に乗せかえる。
白い頬にかかる黒髪がくすぐったそうで、指先で小さな耳にかきあげてやりながら、
(そういえば紫蓮ちゃんの寝顔見たのって小さい頃以来かも)
ふと、思う。幼い頃とそんなに変わらないあどけない寝顔がなんだか無性に微笑ましくて、反射的にそっとシャッターを切ってしまってから、その手を止める。
(これ紫蓮ちゃんに怒られるかな)
黙っておこう、とこっそり決めて、首に提げていたカメラを傍らに置く。閉じ込められた原因が判らない以上、何があるかも分からない。起きているに越した事はない。
夜風の音と海鳴りを遠くに、紫蓮の寝息を近くに、譲は遥かに遠い星を瞳に映す。膝枕した紫蓮の寝言じみた小さな声に、幼子を宥めるように細い肩を軽く叩いて、
「譲にいさん……」
悲しげに切なげに歪む白い眉間に、ゆらり持ち上がる細い指先に、
「……好き……」
唇から零れ落ちた言葉の意味を捉え切れないまま、何故かは分からないまま、ドキリとする。
「紫蓮ちゃん?」
「私の事……置いていかないで」
泣き声じみて震える声に、必死のかたちに伸ばされる指先に、寝言と分かっていて譲は咄嗟に紫蓮の指を掴む。
「大丈夫、ここに居るよ」
そっと囁けば、紫蓮の寝顔はふわり、和らいだ。
「おはよう」
白む空を背負った譲に笑みかけられ、優しく頭を撫でられ、紫蓮は状況が理解出来ずに何度も瞬く。
(寝ちゃった?)
頭の端にまだ残る、今の今まで見ていたものすごく良い夢の欠片を追いかけようとして、
(って膝枕!?)
譲の膝枕で安眠を得ていた自分に気がついた。
「顔赤いけどもしかして風邪引いた? 大丈夫?」
「あ、おはよう譲にいさん……」
額に触れられ、心配げに顔を覗き込まれ、紫蓮は熱を持つ瞼を伏せる。いっそのこと、寝惚けたふりをしてもうしばらくの間だけでもこのままで居させてもらおうか。
――外に出られる事にふたりが気付くのは、もう少しだけ空が明るくなってからのこと。
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
閉ざされた鍵のない部屋でのひととき、お届けにあがりました。
様々な密室がございましたが、如何でしたでしょうか。
どの密室におかれましても、それぞれにそれぞれの思いが渦巻いて、とても楽しい密室でした。
書かせてくださいましてありがとうございました。
読んでくださいましてありがとうございました。
またいつか、お会い出来ましたら嬉しいです。
重ねて、ありがとうございました。
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3人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年03月01日
参加申し込みの期限
2015年03月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年03月08日 11時00分
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