this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
マタタビック演劇フェスティバル
<< もどる
1
…
29
30
31
32
33
…
69
つぎへ >>
【演目その9 『二つのF』(5)】
舞台の上だけでなく、両の袖や舞台裏だって、それはもうぴりりとした緊張感に包まれておりました。
「サーッテ……クライマックスまで、一直線だな。なぎさちゃん、牡丹ちゃん。最後まで、よろしくね」
武道のこんなにも真剣な視線を、声をかけた二人や多くの人々は、初めて目にしたかもしれません。けれど同じくらい、知っている人々もいたかもしれません。熱く秘めた意思や、責任感の強さや、それにちょっぴり、弱い部分も。ナイーブなファントムの裏の一面へ、それがリアリティを与えてもいるのでしょう。
「うん、もちろん。頑張るよ!」
彼とファントムの表裏を演じ分けることになったなぎさにしても、おっとりとして可愛らしいいつもの彼とは、違った面を覗かせています……とはいえ演じる、ということは彼にとって、日常にも繋がる自然な行いではありました。情熱的で激しい表のファントムを、なぎさは『恋に盲目な純粋さ』と位置づけて、心のままに、それを演じています。
「演技する、って……不思議な気分ですね」
この劇において、牡丹の役柄は恐らく、もっとも複雑なものだと言えるでしょう。アレンジ劇の肝である、オリジナルのキャスト……けれどそれを演じる彼女は、まさに鬼気迫る、といった演技で、ここまでに出番はそう多く無いにも関わらず、舞台へ強烈なインパクトを残しています。
「でも、悪くはありませんね」
『二つのF』を象徴する三人は、物語の決着へ向かってひとつ、大きくうなずき合いました。
支配人は眼前にまみえた怪人の恐怖、そして脅威を胸から拭い去ることはできず、ラウルの提案を受け入れ……そしてクリスティーヌもまた。
「これで、全てに決着をつけよう。クリスティーヌ」
「……ええ」
『ドン・ファンの勝利』。怪人ファントムが自ら書き上げたオペラが、これより上演されるのです。
あの舞踏会を通じて事の顛末を知る観客も、もちろん知らぬ客たちも、彼らの目当てはただ一人。主役として舞台に立つことを承諾した、今や美しき歌姫として成長した、クリスティーヌでした。
怪人がどのように襲い来るのかは、誰にも分かりません。警戒するラウルにも、もちろんクリスティーヌにも。
「……天使様」
かくして『ドン・ファンの勝利』の幕は華々しく、仰々しく上がります。
中央にクリスティーヌ。天使のごとき、その奇跡の歌声が劇場を余さず満たし始めると、まずはひとつ、観客たちの喝采が響きました。
彼らは、いや誰しもがこの時、気付いてはいませんでした。舞台袖に控える、ドン・ファン。歌姫と愛を語るその役柄が、密かに入れ代わっていたことを。その役を演ずるはずの役者がとうに、この世にはあらぬことを。
気付いたのはただ一人。
舞台へ現れた仮面の男ドン・ファン、その姿に目を見開いたのは、ただ一人、クリスティーヌだけ。
「なぜ……どうして?」
「私がお前の、音楽の天使だからだ。そしてお前はもう、私のものだからだ」
ドン・ファン。仮面の男。怪人ファントムは、歌い始めます。その歌声はもちろんのこと素晴らしいものであり、観客は聞き惚れ、それがオペラであることに一片の疑いをも持ちません。彼は、音楽の天使なのですから。
歌に乗せ、彼は語りかけます。
「お前は私の教えを受けたのだ……お前の歌を聞き、あの男がお前に惚れてしまったとして、誰が彼を責められよう。お前の歌は、君は、素敵だ。誰もが君に魅了されるだろう、しかし、私のものだ」
告げるのです。
「君のためなら、私は何でもしよう。君のためなら、私は何もためらいはしない……こうして観衆の視線の中に身を晒しもしよう。だが彼らの瞳など関係は無い、クリスティーヌ、私はただ、君を! 愛しているだけだ。ただひたすらに、君を……」
そして、求めるのです。
ただ、ひたすらに。
「さあ……言っておくれ。クリスティーヌ。私を愛してくれると。これからの何もかもを、私と分かち合ってくれるのだと。言ってくれ、お願いだ、さあ……!」
見守るラウルが、異変に気付いたその瞬間。
音楽の天使の魅力的な声に囚われながら、クリスティーヌはその片隅に、愛しき彼の声を聞きました。
「クリスティーヌッ!」
それは楔へ心を縫い止められた彼女のできる、たった一つの抵抗だったのでしょうか?
クリスティーヌは手を伸ばし、優しい手付きで……ファントムの仮面を、そっと剥ぎ取りました。
「し、死体だ! 怪人が……!」
支配人が、ドン・ファンを演ずるはずだった男の哀れな最期を見つけたのも、奇しくもこの時でした。
にわかにざわめき出した観客たちは、舞台に見たのです。醜い素顔を衆目へと晒す、恐ろしい、怪人の姿を。
混乱は瞬く間に、劇場の全てを呑み込みました。
「お疲れさま、いよいよだね」
「ありがとう……うん、いよいよだ」
出番を終えた支配人、ロベルトを寿美礼が出迎えて、言いました。
望月がげんのうを、しゅばっ!
「見せ場だぜ、武道ちゃん!」
舞台は暗い地下へと移り、怪人の住処へ。うなずいて一人、舞台の端に進み出た武道を、薫がスポットライトで照らし出せば。
「うおお、狙いバッチリだぜ……!」
ルドが思わず、感嘆の声を漏らしました。彼の用意した衣装を、武道が身に纏い、そして薫がまぶしい光で演出する……こだわり抜いた事前準備が実を結んだ、その瞬間でした。
武道が、口を開きます。
「……愛が欲しい。ただ、それだけだったんだ……」
彼の表現する、怪人の揺れ動く心。激しさの仮面に覆い隠した、もうひとつの仮面の独白を観客へと静かに聞かせながら、舞台は終幕へと向かい駆け抜けていきます。
遠く上方から、彼らを追う声が淀んだ空気に乗って届きます。声はひどく遠く、やがて見当外れのほうへと流れ、鳴りを潜めました。
暗く、陰鬱な地下。しかしこここそが怪人の、ファントムの住まう世界であり、彼は連れ去ったクリスティーヌをもその住人へと、押し込めようとしているのです。
彼女を、娶ることで。
「さあ。クリスティーヌ。誓っておくれ」
純白のヴェールを慈愛に満ちた眼差しで、情愛に満ちた仕草で、ファントムはクリスティーヌの頭へと被せ、囁きました。
「言ってくれ。私を愛すると。共に生きると、私に全てを捧げると」
─ 止めてくれ。もう、無意味なんだ ─
「音楽に満ちた、素晴らしい日々を私と過ごそう。ここで。いつまでも共に歌おう。一緒に響かせるんだ、それだけでこの暗い牢獄が、天国の花園へと変わるだろう」
─ 愛が欲しい、ただ、それだけだったんだ ─
……怪人は、気付いていたのでしょうか。自らの身の内に、相反する願いが混在していることに。激しく求める愛の裏側に、優しく慈しむ愛が覗いていることに。
表裏は時として入れ代わりながら、彼女の前へと姿を現していたことに。
彼女はきっと、気付いていたことでしょう。だからこそ、彼女は、クリスティーヌは今、ここにいるのですから。
「無事か、クリスティーヌッ……!」
「……やれやれ。無粋な観客のご登場のようだ」
響くラウルの声に、クリスティーヌははっとして顔を上げ、彼を見ました。
「ラウル!? お願い、天使様、お願いです! 彼には、彼には何もしないで……!」
そして立ち上がり彼の元へと向かう、ファントムの背を。
それは、垂れ下がるロープでした。輪に括ったロープが、駆けてくるラウルの、ちょうど、首元に。繋がる先をたどれば、それはファントムの手の中に。
「ッ、ぐ……!?」
「ラウルゥッ!!」
ファントムの罠。首を括られたラウル……彼の命はもはや、怪人の手の中。ひとたび手を引けば、仕掛けた錘が落下し、彼は、愛しきラウルは、あっけなく宙に揺れるオブジェと化すでしょう。
彼の命は、怪人の手の中。いいえ。
「選ぶのだ。クリスティーヌ」
─ 止めるんだ、こんなことは、もう! ─
彼女の声にこそ、それはありました。
「私か。彼か。二つに一つだ、クリスティーヌ。選ぶのだ!」
─ これは、これは、私が望んだ愛じゃない! ─
「言うんだ! 一言、たった一言でいい、それだけで……言ってくれ! 頼む、お願いだクリスティーヌ、私を愛すると、ただ一言……!」
「駄目だ!」
ラウルは、彼はやはり。優しさと、強さと、彼女への真っ直ぐな……誠実で正当な愛に満ち満ちた、素晴らしい青年なのです。彼は歌声こそ持たずとも、自らの声で、伝えるのです。
身を捨ててなお、彼女のために。
「拒絶するんだ、クリスティーヌ! 僕のために、君の人生を捨てるんじゃない! 君は光の当たる場所で輝きに満ちた人生を送るべきだ、こんな暗い地の底に生きていい人間じゃない! 言うんだ、クリスティーヌ! 頼む、お願いだ、言ってくれ! 拒絶すると!」
「言うんだ、クリスティーヌ! 愛すると! 私を!」
「クリスティーヌッ!!」
─ もう……止めてくれ!! ─
エリューシアは、そっと瞳を伏せてから……す、とゆっくり、再び開いて。
ゆっくりと、ゆっくりと、舞台端に立つ武道を。
ゆっくりと、ゆっくりと、舞台の上の恩を。
そして、ゆっくりと、目の前のなぎさを見て……睫毛を震わせながら。
唇を、開きました。
「……私が、貴方にあげられるものは……たったひとつ。この歌だけだわ」
歌。それこそが、ただ一つの返答でした。
何という……心震わせる響きでしょう。
舞台へと立てば観客を、共に立つ俳優たちを、ひっそりと耳を傾ける裏方たちをも、全てを魅了して止まない、音楽の天使の薫陶、その全てを受け継ぎ磨き上げられた、この、歌声!
それを、歌姫は、彼……ただ一人のために、歌い上げるのです。
歌いながら、彼女は見つめます。彼の瞳を。情動と諦観の狭間に揺れる、ファントムの瞳を。
少しずつ。彼女は、歩みます。彼へと向かって。少しずつ、徐々に近づく距離は次第に、互いの顔とそこに映した無数の感情の色を、二人へ悟らせました。
ラウルを愛していました。とても、とても強く。けれど、怪人をきっぱりと拒絶してしまうには、あまりに彼は孤独でした。絶望に満ちて、そこへ差すたった一筋の希望の光こそが自分であることを、彼女は、クリスティーヌは、痛いほどに理解していたのです。
鼻先が触れ合うほどに近づいた距離に、クリスティーヌは両手を伸ばし、そっと頬へ添えました。ファントムの、彼女の音楽の天使の頬へ。
彼に応えることは出来ません。彼女の隣にはもう、ラウルがいるのです。だからせめて。
救いたい。
クリスティーヌは心を楔より解き放ち、ただ一人彼のため、彼の胸に深々と突き刺さる楔こそを取り払おうと、全力で、全身で、全霊を込めて歌い上げ、彼の世界を輝く光で染め上げていきました。
<< もどる
1
…
29
30
31
32
33
…
69
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
マタタビック演劇フェスティバル
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
1000人
参加キャラクター数
160人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年03月14日
参加申し込みの期限
2015年03月21日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年03月21日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!