怪人セブンの復讐｜リアクション

怪人セブンの復讐

　朝野未沙は全身に走る痛みに耐えかねて覚醒した。
（見知った顔がチラホラいるけど、どういう状況なんだろう？　なんだか頭がズキズキして身体にも力が入らないし……）
　目を開けた朝野は、牢の外を見遣った。
　ちょうど、泉月花と黒服たちが人質たちに銃口を向けているところだ。
（あ、誰かいる……、ん？　よく見たら、あのお姉さん……）
　泉月花を凝視した朝野の意識が急速に回復する！
　彼女の目に飛び込んだのだ、泉月花の豊満な体の一部。

　その部分が強調されたデザインの巫女服は、まさにけしからんの一言に尽きた。
「お姉さん、すごくおっぱい大きいね！」
　叫んだ。思わず欲望のままに叫んでしまった。
　何故なら、朝野は女子にセクハラをしてしまうほどの変態だからだ。
　つまり、朝野は興奮した。
「おおきいおっぱいは夢が詰まってるんだよ！　揉んだらどんな感じなんだろう、ぽよーんって跳ね返ってくる感じなのかな？　沈み込んで吸い付くような感じなのかな？　揉み応えありそう、てか揉んでみたい、揉みしだきたい……！」
　一瞬にしてシリアスな空気が木っ端微塵に吹き飛んだ。
　そこへ畳み掛けるように、後木真央が悲痛の声を上げた。
「真央ちゃんの褌がないのだーっ！？」
　泉月花に負けず劣らず（不自然に）胸元が盛り上がっている後木は、周囲を見渡しながら狼狽していた。
「うわーん！　真央ちゃん謹製の観光客配布用の水褌がないのだ紙袋をいっぱいに詰め込んでたのに全部没収されたのだ酷いのだ外道なのだ鬼なのだ～！！」
　おいおいと号泣する後木。
「……なんなのでしょう、この状況……」
　流石に泉月花も、このカオスな空気に面食らっている。
「とにかく、生きながらえたかったら、おとなしくあたしの依頼を受けるのですね」
　とてもやりづらそうな泉月花であった。
　一方、おいおいと泣き喚く学校ジャージ上下＆陸上部Ｔシャツの後木。
　コンクリートの床でうつぶせになり、ゴロゴロと左右に寝返りを繰り返す。
　だが、実は……。
（ＯＫ分かった叢雲は敵なのだお前ら全員泣かすのだ越中褌で市内引き回しの刑に処してやるのだ～！）
　嘘泣きだった。
　そして怒りで思考が超加速、憤怒系野性児ブラック虎真央が降誕！
　加速した思考でブラック虎真央は次々に推理を進めていく。
（あのお姉さんは敵対勢力を生かして連れて来いと言っていたのだ。つまり捕虜＝洗脳して仲間にする＝向かった仲間も同様の運命！　でも多少下手うちしても叢雲から手を出される可能性は高くないのだ。残った面子は戦闘の役に立たないor真央ちゃんのような潜在敵とみなされて、ナナちゃんセンパイのようなもれいびが洗脳して記憶を消しちゃうはずなのだつまり、残った面子を生かしておく必要欠片もなし！　そうなると残る面子は戦闘に不向きな者を残らせるべきではないのだ！）
　多少の飛躍が見られるものの、ブラック虎真央の推理はおそらく、誰が聞いても納得する内容であった。
（ただしその推理が正しいかどうかは定かではない）
　まさに能ある鷹は爪を隠す。
　普段の後木は、定期テストを余裕で赤点で切り抜ける程の残念な頭脳なのに、この変貌ぶりである。
　……怒りのスイッチが褌であることに目を瞑れば、残念さが軽減されたのだろうけども。
「ぐすん、行く人が多い方が成功しやすいと思うのだ、戦闘苦手でも数は力になるのだ行った方がいいのだ♪　真央ちゃんはナナちゃんセンパイ気になるから残るのだ♪」
　涙を拭う素振りを見せながら、人質たちに助言する後木であった。
　その目は天使かと見紛うほど純粋さをアピールしていた。
「……こんなところでも変態や変人がいるのか」
　そういった部類の人間が苦手な逆巻天野は思わず閉口してしまう。

「もっと真面目にやらないかい……？　ああ、僕は殲滅隊へ志願するよ。といっても、人質を助けるためだから。叢雲に協力する気はないし、怪人セブンになるつもりもないよ」
　彼の意思表示に泉月花はちょっと面白くなさそうな顔をした。
「いいでしょう。でも嫌が応にも交戦して戴きますよ。では逆巻さん、牢の外へ」
「僕の名前を知っているんだね」
　表情筋を動かさずに逆巻は泉月花に目をくれる。
「ええ、『名も無き英雄たち＜ネームレスヒーローズ＞』の皆さんのことはある程度調べさせましたから」
　胸を張る泉月花だが、取り違えられた人々を見た逆巻は首を捻った。
「その割には仕事が雑だよね……。おっと、銃口を向けないで。おとなしく指示に従うから」
　泉月花の指示を受けた逆巻が立ち上がり、牢の出入り口へ向かう。
　その時、後木が逆巻の手を引いて留めた。
「天野ちゃん……」
「大丈夫だって、後木。でも……人質側に残るのは、嫌な予感がするんだ……。気を付けて」
「天野ちゃんも気付けるのだ♪」
　励ます後木。
　握った手に、後木の指が這う。
『にげる　もどるな』
　逆巻はこの言葉の意味を考える。
（……後木は脱走する気か。うまくいけばいいけど）
　一応、隙を見て撲滅隊の志願者に伝えるべきであろう。
　逆巻は牢の外に出ると、ヘッドフォンと目隠しをされて外へ連れ出された。

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怪人セブンの復讐

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