突然の決戦は肩車の騎馬戦で！｜リアクション

突然の決戦は肩車の騎馬戦で！

　海岸沿いの道を歩いていたソフィ・Ｃ・リードホルムに海風が吹き付ける。黒いタートルネックの上に着た淡い鴇色の羽織がはためく。下は白いショートパンツで膝丈を超える黒いオーバーニーソックスが寒さを退ける。
　限りなく白に近い金髪が風に戯れるのを片手で押さえた。砂浜の騒動にそれとなく青い瞳を向ける。
「……無性に参加したくなりますね。理由はわかりませんが」
　掛けていた眼鏡の位置を正した。その時、血陣遵と目が合った。ソフィが立ち止まると、少し遅れて遵も足を止めた。
「とても赤いですね」
　ソフィは思ったことを口にした。
　遵の髪は鮮血のように赤い。癖のないストレートは肩に届く長さがあった。額には包帯を巻いていて所々に血が滲んでいる。眼鏡の奥の両目まで赤い。頬には四角いガーゼが貼られていた。白いシャツに血の跡は見られなかった。その代わりに袖口から出る手には包帯が巻かれ、五指のほとんどに絆創膏が巻き付けてある。黒いズボンの膝の辺りは白く擦れていて膝頭の傷が容易に頭に浮かぶ。
「どういう訳か、不幸に好かれ易いみたいなんだ。不幸体質なのかな」
「……厄介な体質ですね。その怪我は、平気なのですか？」
「あぁ、怪我は心配しなくていいよ。慣れてるからね。おかげで痛みに強くなったよ」
　穏やかな口調で遵は言った。
　他に目ぼしい人物は見当たらない。ソフィは遵に近づいて覚悟を決めた表情で見上げた。
「よくわからない感情なのですが、私と一緒に騎馬戦をしてくれませんか」
「僕も妙な気分なんだ。誰かを肩車して騎馬戦に挑みたいような、具体的な欲求が湧き起っていたんだ」
「それでは、いいのですね？」
「拒む理由がないよ。不幸体質の僕だけど君には怪我をさせないつもりだ」
「それ以上、怪我をされると私が心配になります。二人でお互いを気遣いながら戦いましょう」
　ここに新たな一組が誕生した。