突然の決戦は肩車の騎馬戦で！｜リアクション

突然の決戦は肩車の騎馬戦で！

　斗南は猫背の姿で海岸線の道に戻ってきた。相棒の発見には至らず、未だに一人である。
「今日の僕は運が悪いのかな」
　斗南は砂浜の騎馬戦を一瞥して言った。騎馬の数は明らかに増えていた。
　防風林が陰を落とす砂地に斗南は座り込んだ。半眼の目でぼんやりと騎馬戦を眺める。
「あ、あの、私と騎馬戦に参加してくれませんか？」
　斗南はすぐに反応は出来なかった。少し遅れて後ろを振り返ると、パンツルックの絹織真由良がピンクのブラウスの胸に手を当てた姿で立っていた。丸みのあるフレームの奥の黄色い瞳が潤んで見える。
「僕に言ってるんだよな？」
「はい、そうです。急にヘンなこと言ってごめんなさい。砂浜の様子を目にしたら、胸の奥から熱い何かが込み上げてきてしまって」
「そうか、僕も似たような感じだ。じゃあ、僕が下になるよ」
「あ、はい。お願いします」
　斗南は海岸の方に向いて、乗っていいよ、と口にした。ありがとう、と真由良は静々と跨った。
「何か作戦はあるのかい？」
　斗南の言葉に、そうですね、と答えて口を閉じた。垂れてくる前髪を掻き上げて髪留めでしっかりと留め直す。
「最初の内はこちらからは仕掛けないで距離を置きます。状況を見ながら孤立した相手を狙いましょう」
「良い作戦だ」
「でも、向かってくる相手には迎撃も考えています。こちらから仕掛けるのは数が減ってからにしましょう」
「僕も賛成だ」
　斗南はゆっくりと腰を上げる。行動に合わせて真由良が声を張り上げた。
「では、出陣です！」
　前方に進み始めると真由良は狡猾な笑みを浮かべた。釣り上がった口元からは鋭い犬歯が覗いていた。