突然の決戦は肩車の騎馬戦で！｜リアクション

突然の決戦は肩車の騎馬戦で！

　海岸に訪れた当初から追い掛けていた真央が足を止めた。天佑を担いでいた槇が不思議そうな顔でそれに倣う。
「ふぇ？　もう逃げないんですかぁ」
「ここまで数が減れば攪乱する必要がないのだ。リア充共を誘き出して各個撃破するのだ！」
　真央は頭に乗せたがおーを両手で持ち上げ、いつでも投げられる体勢に入った。
「僕にその奇策が通用しないことを教えてあげます」
　マントを後方に払い除けた天佑が自身の片目を左の掌で隠した。残された右手に意識を集中させて、がおーにも同様の目を向ける。
「真央ちゃんとがおーのコンビネーションの前では、どのような対抗策も粉砕される運命なのだ！」
　真央の渾身の力を託されたがおーが宙を飛ぶ。天佑に慌てた様子は皆無で、ただ右手を差し出した。
「この勝負貰ったのだー！」
「それはこちらの台詞です！」
　がおーは見えない反発を受けて中空で仰け反った。天佑のろっこんの『磁気眼』が右手とがおーに同極の磁力を発生させて弾いたのだ。
　予想よりも早い展開に真央の顔色が変わる。
「ふおおおおー、がおー、戻るのだー！」
　消えた瞬間、砂地に鉢巻だけが残された。猛烈な勢いで回収に向かった真央は頭から滑り込んだ。
「回収完了なのだ♪」
　握り締めた手を開くと砂の塊が零れ落ちた。回収したつもりの鉢巻きは空を漂い、天佑の右手に収まった。磁気眼の力で鉢巻きは異極の磁力を帯びて吸い寄せられたのだった。
「僕達の勝利です」
　天佑は右手を天に捧げた。真央は泣きそうな顔で、酷いのだー、と悔しがった。
　ゴミ拾いの合間に目にした修が表情を緩める。
「真央らしいな」
「修おにいちゃん、なんかたのしそう！」
「小島さん程ではないけどね」
　二人は朗らかな顔でゴミ拾いに勤しんだ。