突然の決戦は肩車の騎馬戦で！｜リアクション

突然の決戦は肩車の騎馬戦で！

　砂浜には最終的に二組が残った。
　屈強な肉体を有する蛇那伊は華奢な梢を盤石の姿で支えた。梢は昆虫採集で鍛えた手先の速さを駆使して被り物を狙う。
　もう一方は遅れてきた黒き炎。子夜の素早い足捌きが着実に相手を追い詰める。上に陣取った零の手刀は勝利を一瞬で引き寄せる力があった。
「やっぱり、あの二人が残ったわね」
　防風林の陰に腰を下ろした翠響が目を細くして眺める。
　海を背にして子夜は立った。零は自然体の姿で肩に乗っている。
　蛇那伊は一定の距離まで近づいて動きを止めた。梢は被っていたキャスケットの鍔を摘まむと後ろに回した。
「芸が細かいわね。これで少しは取られ難くなるかもね」
　二組の睨み合いが続いた。どちらも先には動かない。梢は前屈みになって蛇那伊の肩口を平手で叩いた。
「ようやく動き出したわ」
　蛇那伊が刻むように距離を縮めていく。子夜は動かない。黒い炎は揺らめかず、その場に有り続けた。
「左かな。それとも右？」
　自身の声に合わせて翠響の身体が左右に動いた。え、と声が漏れる。
　子夜は滑るように前に出た。判断に迷った蛇那伊の足が鈍る。
　僅かに軌道をずらした子夜が疾風の如く駆け抜けた。一瞬、梢の髪が乱れた。零の絶妙な手刀による一閃が見事にキャスケットを捉えていたのだ。
「最後は動くのね」
　立ち上がった翠響は大きく伸びをした。楽しめたわ、と明るい声で帰っていった。

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