【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！｜リアクション

【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！

「まーさか本当にできるなんて思ってなかったわー……」
　独白。
「相変わらずこのガッコ、エキセントリックすぎるっつーかなんつーか。まーやるからにはあたしも腹くくらねーと」
　屋上へ準備に向かう獅子島。
　その途中、桃川圭花の後ろ姿を見付ける。
　ちょうど周りに人はいない。
（やれやれ、後ろ姿でもすぐわかる自分が憎らしーもんだ）
　自嘲しながら気付かれないように、彼女は桃川に忍び寄る。
　そして真後ろに立つと、耳元で囁いた。
「圭花、頑張って……」
　ビクッと身体を震わせる桃川。
　そのまま獅子島は立ち去ろうとする。
　だが、足が前に進まない。
　……正確には、桃川が獅子島の手を掴んで引き止めていた。
「市子さん」
　桃川が呼び掛ける。
「体育祭、来ていたのね……」
　彼女の表情は嬉しさと寂しさが混在していた。
　獅子島はそんな桃川の顔を見ると、つっけんどんに言い放った。
「手、離してくれねーかな？　悪ぃけど、ちょっと急いでっから」
「お願い、１分、いいえ、30秒だけでいいから」
　桃川の握力が強くなる。
「応援のお礼ぐらい、言わせてよ」
　見詰める桃川。目を逸らす獅子島。
「こんな状況……、誰かに見られたらなんて言われるやら」
　構わず桃川は伝える。
「……ありがとう。私、頑張る。市子さんの言葉、すごく嬉しかった」
「そりゃよかった、じゃーな」
　獅子島は手を乱暴に振りほどく。
　スタスタと玄関へ歩を進めていく。
「市子さん……！」
　桃川は思わず大声を出した。
　獅子島の背はどんどん遠ざかっていく。
「私、絶対勝つからっ！」
　その言葉に、獅子島は急に足を止めて振り返った。

「だったら勝て、圭花。……あたしは屋上から応援してるから」
　それっきり、獅子島は振り返ることなく玄関へ吸い込まれていった。
「私の名前を呼んでくれた……。今はそれだけで充分……」
　桃川の胸の奥からエネルギーが湧いてくる。
　嬉しさからか、それとも武者震いか、彼女の膝が笑っていた。

　まもなく本番。
　それぞれの想いとともに選手はグラウンドへ集結する。