【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！｜リアクション

【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！

【騎馬戦開始直前】

　志波武道と楪櫻が互いに鼓舞し合っていると、ひょっこり現れるは卒業生の獅子島市子。
　獅子島は志波を見付けるやいなや、いきなりヘッドロックを掛けた。
　なんというアンブッシュ！
「よー、筋肉カワウソ。風の噂であんたがこの体育祭の実行委員長やってるって聞いてさ、ご丁寧に挨拶に来てやったぜ。ほら喜べ」
「イチコサン、ギブギブ！　チッソクシチャウ！」
　みるみるうちに顔が青くなる武道を見て、楪が獅子島の腕を掴んだ。
「そこまでにしていただきたいのですが。志波は私と騎馬戦に出場するので、このまま落とされると困ります」
「オトサレルコト、ゼンテイデスカ、サクラチャン……！」
　白目を剥いても楪の言葉にツッコミを入れる武道であった。
　すると残念そうな顔で腕を解く獅子島だった。
「あー悪ぃー悪ぃー。こいつを見ると構いたくなるよーな気がしてさ」
　普段から武道のことを「誰か甘やかしてやればいいのに」と思っている獅子島は、遠回しにそう表現した。
「で、市子さん。ホントの用事はナニカナー？」
　見透かしたような顔でニヤつく武道に、思わず苦笑してしまう獅子島。
「どーしてもやりたいことがあってさ。ちょーっと体育祭取り仕切ってる先生へ取り次いでくれねーか？」
「どうしてもやりたいこと、ですか……」
　副委員長の楪が思案する。
　訝しがる彼女に獅子島は言葉を継ぎ足した。
「別にこの体育祭をメチャクチャにしようってわけじゃねーから。いろいろ思うトコあってさ、祭に華を添えてやりてーだけ」
　これに委員長である武道が答えた。
「全然オッケイ★」
「志波！？」
　あまりの軽さに楪の顔色が変わった。
「内容も聞いていないのに承諾する奴が居るか！？」
「いーじゃんいーじゃん★　市子さんは信用できるぜー。協力してくれるっていうなら大・歓・迎！」
　イレギュラーをたのしもーぜぃ、という武道の言葉に、楪は肺の中の空気を思わず吐き出してしまった。
「……分かった。志波がそういうのなら好きにしろ」
「櫻ちゃんありがとー★　んじゃ市子さん、高野センセ呼んでくる！　あ、泉センセも居た方がイイカナ？？」
　武道はやはり何かを察しているようだ。
　獅子島はそれに即答した。
「――勿論。頼むよ」
「らじゃー！」
　武道がダッシュで先生たちを探しに行く。
　残された２人に微妙な空気が流れた。
「……随分と志波と仲がいいのですね」
　楪の言葉に、獅子島が鼻で笑う。
「さー、どうだろーな？　……アイツは困った奴だよ。あたしが言うのもアレだけどさ、なんつーか危なっかしーよなー。自分を顧みないで他人の世話ばっか焼いて」
「……そうですね、確かに志波はそういう一面を持ってます」
　楪は同調した。
　だから、と獅子島は続けた。
「何度か神魂事件でアイツの行動を目撃して、なーんかそう思っただよね。だから仲が良いっつーより、目をかけてやんねーと切れた凧みたいに飛んでいっちまいそーでさ」
　楪は何も答えない。
　否定でも肯定でもない沈黙だ。
「そーなる前に誰かが繋ぎ止めてやればいいんだろーケド。例えば……」
　じっと楪を見詰める獅子島。
「わ、私ですか……？」
　困惑する楪に「じょーだんだってば」と獅子島は素っ気なく言い放った。

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