【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！｜リアクション

【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！

「オッマタセー！　センセー連れてきたぜぃ！」
　志波が高野有紀先生と泉竜次先生を連れて戻ってきた。
「カカカカッ！　志波から聞いたぞ！　ボランティア申し出とは嬉しいな！」
　お馴染みの白ジャージ姿で高野先生は快活に笑う。
「やぁ、獅子島。私に用事とは一体何かな？」
　今日もいぶし銀の渋さがロックな泉先生、何か期待しながら獅子島に尋ねた。
「ひょっとして、その影に隠してあるギターケースが答えかな？」
「あー……」
　バレたか、と漏らす獅子島。
　見えないところに隠して驚かせようとしていたのだろうが、見抜かれてしまった。
「とりあえず、形式だから。どーも、センセイたち。シジマイチコです」
　彼女は丁寧にお辞儀をした。
「さーて、本題。この体育祭ってコイツらとアンタらで作ったんだろ？　親御サンとか家族だって支えてやってたハズだ、今日のために」
　先生方は首を縦に振って相槌を打った。
「あたしもナニカしてやりてーと思ってさ。具体的には競技中のBGM任して貰えねーすか？　ギター生演奏と打ち込み音源は持ってきた。あとは機材と人員を貸して欲しいっすよ」
　この申し出に高野先生は顎に手を当てて黙り込んでしまう。
「申し出は嬉しいけど、そこを簡単に部外者へ任せるのは即答しかねるな……」
「だからこうして頼んでるんすよ。監視役が必要なら樋口サン貸してくんね？　樋口サン、この間の夏フェスに別バンドで出演したり、その前にも顔合わせていているから」
　なかなか承諾が得られずに食い下がる獅子島。
「つーかさ、欲言わせてもらえば、樋口サンとデュオしたいんよ。屋上でBGM代わりのゲリラライブなんてすげー盛り上がると思うっすけど」
「……獅子島、今回のメインは君のライブではなく生徒たちの競技がメインだ」
　泉先生はゆっくりと言葉を紡ぎだした。
「君の気持ちは嬉しい。だが、それがメインを差し置くような事を引き起こしてはならない。分かるか？」
「……そーっすね、泉サン、正論だわソレ」
　やっぱダメか、と獅子島は目線を下げて唇を噛む。
「部外者の上に不良でこのガッコ通ってたあたしの願いは無理っすよね」
　泉先生は唇を歪めながら言った。
「だから獅子島。悪いが……」
　獅子島の両肩に、どんっと泉先生は樫の木のように太い指を掛けた。
「加減、間違えるなよ？」
「……は？」
　断られると思った獅子島は呆気にとられた。
　何事かと慌てて泉先生の顔を見遣る獅子島。
　泉先生はニヤニヤと愉快そうに微笑んでいた。
「ロックはクラッシュ＆ビルドだ！　既成概念を壊して新しいことに挑戦する事だ。もっとも、何事もやりすぎは良くないがな？」
「ありがとうございます……！」
　獅子島は深々と頭を下げた。
「……ということで、責任は私が全て取ろう。高野先生、樋口先生を屋上へ呼ぶように。そうそう、高野先生は樋口先生を呼んだら『このことを全て忘れる』こと。いいね？」
「カカカカッ！　泉先生、相変わらず若気の至りってやつに甘いですね！」
　高野先生もここまできたら笑うしかできなかった。
　軽快な足取りで樋口先生を探しに行く高野先生を見送ると、自然と獅子島は自分の心情を吐露し始めた。
「こういうのを支えている奴の中に、その全員を応援するヤツがヒトリ居たっていーじゃん……」
　そしてすぐに自らの口を彼女は塞いだ。
「……あー、今のオフレコな。もし漏洩したらソコのカワウソ、毛狩りすっから」
「アァイェッ！？　ナンデ？　イチコ＝サン、ナンデ！？」
　特に意味のない報復行為予告が武道を襲う！
「つーことで、覆面バンドが屋上でスペシャルBGMを届けっから。これで盛り上がらなかったらマジむしるからなー？」
　そう言いながら獅子島は機材を担いで委員会本部のテントを後にした。