【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！｜リアクション

【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！

　対して、黒猫組は引っ掻き回されっ放しというわけではなかった。
「様子見はここまでだ。そろそろ行動に移ろうか、屋敷野」
　シグレ・ナイトウォーカーが所属する【一騎当千】は、作戦の主眼こそ『敵騎手の落馬』だが、その手法は突撃型ではなく状況判断に応じた支援火力型である。
　これは騎手の屋敷野梢による発案である。
「考えなしに突っ込むと痛い目遭うのは自然界の掟なのですよー！　生物学的に群れでいたほうが生存率が上がるのでーす！　とはいえ一網打尽にされたら一大事ですしー、ここは敢えて散開と集合を繰り返しましょー！」
　相手が攪乱をしてくることを悟った屋敷野は、周囲の騎馬に接近しては手短に作戦を伝達、他の騎馬に伝言してもらうことで広めていったのだ。
　その結果、黒猫組は不可解な分散と密集を繰り返す布陣となったわけである。
「おかげで戦力分析の時間が出来た。反撃の時間だな！」
　後ろで屋敷野を支える御剣が意気込む。
「左側……手薄、じゃない、かな……？」
　左馬の志波拓郎が索敵結果を屋敷野に報告。
「右側は固まってるな、集団で突っ込まれたら厄介だ」
　右馬役のシグレが警戒を発した。
「あたしはいつでも受け止め体制万全よ？」
　先頭の尾鎌蛇那伊の体格は、彼の言うとおりかなりの耐久度を誇っていそうだ。
「では私たちは左側行きましょー。そこのコスプレのみなさーん！　同伴お願いしまーす！」
　屋敷野に声掛けられた【虹色戦隊】の服部がこれに応じた。
「シャバダ」「分かったわ、よろしくね、こーちゃん！」
　服部のセクシー相槌は霧切によって阻まれたのだった。
「できればもう１騎が一緒にいてくれると安全なんだけど……」
　霧切たちは極力単騎では行動しないという方針を立てている。
（私は一番見渡せる所であり、鉢巻を取られてはいけない一番上……！　戦況の変化をよく見て孤立しないようにしなきゃ）
　可能ならば３騎まとめて行きたいと考えていたのだが……。
「どうやら先輩たち、狙われているようですねー。目立ちますからねー。確かに固まるのも手ですがー、しんがりや斬り込み部隊がいないとジリ貧ではー？」
「う……」
　霧切たち、その辺を全く考慮していなかった。
　と、ここで突然、フリーダム部隊【川中島】が敵陣左翼へ向けて突進開始！
　前馬の猫又翔琉は自信に満ち溢れた顔で叫んだ。
「俺の考えた最強戦術を使えば楽勝だぜ！　いくぜ、子猫ちゃんたち★」
「え、どんな作戦！？　あたし、何も聞かされてないよ！？　ってアッー！？」
　騎手の桃原空音は担がれたまま悲鳴じみた奇声をあげて遠ざかっていく。
「おおーっ！　まずは速攻だね、兵は神速を尊ぶんだって聞いたことがあるよ！　日和ってたら気持ちで負けちゃうし、いの一番に交戦して一番槍の栄誉を狙おう！」
　色々と勘違いしている維剣姫乃もノリノリで突っ込んでいく。
「あのー、あまり速く走るとお腹すいちゃうのですけどー？」
　小刀祢切奈に至っては、騎馬戦とは別次元の要素と戦っていた。
　これには【虹色戦隊】のハルトマンが真顔で言葉を漏らした。
「……斬り込み部隊、行ってしまったが？　どうするかのね？」
　屋敷野は【川中島】の自由感に白目を剥かざるを得ない。
「と、当然、追撃しまーす！　みなさんも一緒にお願いしますねー！」
　慌てて【川中島】の後を追う【一騎当千】。
「さて、僕らの出番だ。張り切っていこうではないか」
　榛名の言葉で、ようやく霧切は我に返った。
「なんだろう……、今、私、すっごく不安な気持ちでいっぱいだよ……！」
　大丈夫、翠子……。あなたはやれば出来る子……！
　自己暗示をかけながら２組を追いかける【虹色戦隊】であった。