【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！｜リアクション

【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！

【強襲！　……強襲？】

　朝野未沙という少女の話をしよう。

　彼女は一言で表すならば、変態である。
　本人は否定するかもしれないが、他人から見ればまごう事なき変態である。
　その証拠に、今まさに、朝野はセクハラ行為の真っ最中なのである！
「ちょ、ちょっと！　あなた何をしているの！？　離しなさい！」
　黒猫組の北風貴子は顔を真っ赤に染めて身悶えしている。
「え、何してるかって？　そんなの決まってるじゃない！」
　朝野の両手が、北風の胸部を鷲掴みにしていた。
「ハチマキを取るフェイントだよ！　決してこっちが本命とかじゃないよ！　相手が怯んだらハチマキを奪っちゃうよ！」
　そう言いながらも北風の乳房に指を食い込ませる朝野。
「うわぁ……、うわぁぁぁ……！」
　馬役の串田美代子は、風紀委員長に対して挑戦的な行為に及ぶ朝野に思わず戦慄した。
「ほら、暴力じゃないし！　掴むだけならセーフだし！　それにしても貴子先輩、着痩せするタイプなんですね！　これは凄い！　でもなかなか怯まないね、だったらこうだー！」
「ひゃああっー！？」
　器用に指先を動かす朝野の攻撃に、北風はパニックを起こしてしまう。
　潔癖症の北風は、他人に自分の胸を揉みしだかれるというシチュエーションに耐えられなかったのだ！
　騎乗したまま気絶してしまう北風。
「オウ！　騎手の戦意喪失は落馬とみなしマース！　レアケースでーすね！」
　深縹露草のジャッジで、朝野は一気にハチマキを５本獲得！
「やったぁ！　このまま女の子にセクハラ、おほん、フェイントして白猫組大量得点ゲットだよ！」
「……あわわわわ……」
　ガクガクと身体を震わせる串田は、絶対に朝野に逆らってはいけないと心に誓った。

　直風満帆が騎手の【桜楓謳歌】は、【灯チーム】とともに黒猫組の騎馬を追い詰める。
　相手の騎手は……、野々ののこ！

「わわっ！　どうしよう、囲まれちゃった！」
　縦横無尽に駆け巡る【エリカ】チームによって支援を絶たれたののこは、真っ先に白猫組に狙われてしまう。
　他の黒猫組の騎馬が駆け付けようと試みるが、白猫組の妨害が入って救援に向かえない。
「うーん、負けないよっ！」
　観念したののこは【灯チーム】に掴み掛った。
「私だって負けません！」
　久良木は掴み掛るののこと両手を合わせて力比べに移行。
「囮で動きたかったのに……！」
　標的がこちらに向いたため距離を取ろうとするが、意外とののこが食い下がるので上手く離れられない。
「斗南殿、落ち着くでござる！」
　焦りからか調子が乱れる灯を落ち着かせようと夏神が声を掛ける。
「夏神くん、灯くん、桃川ちゃん、呼吸を合わせて！」
「分かってるわ、よっ！」
　神薙の掛け声のあと３秒後、【灯チーム】の騎馬が急にしゃがみこんだ。
　桃川は屋上からのＢＧＭに合わせていたので比較的楽にタイミングを合わせることができた。
　久良木も前馬の灯に体を預けるように前のめりに倒れると、手を繋がれたののこは引っ張られて前へとつんのめる。
「直風さん、いまですよー！」
　薄野の合図で【桜楓謳歌】が背後から突撃！
「ののこちゃん、覚悟ーぉ！」
　疾風のように直風がののこの脇を通り過ぎていくと、その右手にはののこのハチマキが握られていた。
「やったノ！　ののこちゃんのハチマキ取っちゃったの！」
　セレッソ、初撃破に大喜び！
（やった！　撃破しちゃった！）
　喋ることのできない小山内も嬉しそうに口元を緩めた。
「悔しいーっ！　負けちゃったよー！」
　騎馬を解散させて悔しがるののこ。
　でも、自然と笑顔がこぼれていた。
「それでも楽しかったよっ！　よーし、今度は一生懸命、黒猫組を応援しちゃうよ！」
　にこやかに退場するののこを眺めながら、灯は「青春だね……」とボソッと呟くのだった。