【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！｜リアクション

【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！

　１年４組の記念撮影を終え、薄野五月と御薗井Ｅセレッソは仲良くチームを組むことにした。
　そこへ同じくらいの背丈の直風満帆と小山内海が合流。
　ここに、ちっちゃい女の子同盟チーム【桜楓謳歌（オウフウオウカ）】が誕生した。
「よろしくナノ！　五月チャン、満帆チャン、海チャン！」
　ニコニコしながらセレッソは手を大きく振りながら喜びを表現した。
「えへへー！　今日は待ちに待った体育祭ナノ！！　ワタシはミンナとイッショに騎馬戦に出るワ！　イッチダンケツでがんばるノー！！」
　ぴょこぴょこ跳ねながら、体中から完全タノシイオーラを発散させるセレッソ。
　イタリア人を思わせる顔立ちと楓を彷彿とさせる赤い髪、そして桜のかんざしが秋の空に映える。
「寝子高の騎馬戦って全員参加なんやね～。出るからには全力で行くで♪」
　こちらも日英ハーフ女子の直風が小さい体を入念にストレッチさせていた。
　陸上部の彼女は騎手。部活の習慣からか、会話に参加しながらウォームアップを隅々まで行っていた。
「長距離走とおんなじや。こういうのは焦ったらアカンねん。うち、腕のリーチは他の騎手に比べたら足りへんけれども、スパートをかけると決めたら一気にいてまうで！」
　直風、かなりこの競技に自信があるようだ。
　そこへしゅるしゅるっと紙の上にペンが走る音が聞こえてきた。
『とびいりさんか　ゆるしてくれてありがとう』

　病気の後遺症で声を失っている小山内海は筆談で謝辞を述べた。
『みんな　同じくらいのせたけでよかった』
『このチームなら　わたしもうまやくができる』
『でも　こえ出せないから　わたしはしじは出せない』
『しじ出す人がいるなら　それにしたがうね』
　筆談に慣れている小山内の会話スピードは、常人の話す速度と謙遜ないものであった。
　そんな小山内に、薄野は静かに告げる。
「では、私が逐一、周りを見渡して状況を伝えますねー」
　ローテンション気味な子ですが、勝負事は好きな薄野。
「それにしてもずらりと並んでいる所を目にしますと、程よい緊張感が漂っていて心地良いです。まさに血沸き肉躍る、ですねー」
「血が沸いタラ大変ナノ！」
　そのままの意味で捉えたセレッソが驚く。
「いやいや、セレッソちゃん。これはことわざやから！」
　直風はすかさずツッコミを入れる。
　戦う前の憩いのひととき、薄野はとてもこの時間を愛おしく思う。