【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！｜リアクション

【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！

　順調にチームが決まる者たちがいれば、なかなか決まらない者たちもいた。
　寄せ集め状態のメンツで組んだチーム【トリスタ】の天満七星と羽生碧南はポジションがかぶっていた。
　同じ騎手希望である。だが、七峯亨が指摘した。
「俺は馬役だから、同じ身長の奴がいてくれた方が安定するだろうな」
　同じメンバーの男性陣である浅沼柳司とマウル・赤城・スティックは平均以上の身長を誇っている。
　ひとりだけ156cmの天満が馬役ではバランスが合わない。
「私は走るのは得意ではないので、きっと馬を崩してしまうでしょう」

　天満自身もそう危惧していた。
「仕方がないね。騎手役が空いていると聞いてたけれども、私は馬に徹するね。去年の中学の体育祭では騎馬戦で馬役をやったことがあるし、バスケ部頑張ってるから足腰は自信あるよ」

　女性としては長身の180cmを誇る凛々しいスポーツ少女の羽生だが、ほんわかした可愛らしいアンバランスな雰囲気が魅力的だ。
「騎馬戦か。こういう荒々しい競技は狩りを思い出す」
　オーストラリアにいるアボリジナルの父と日本人の母を持つハーフであるマウルは、日本に来る以前、狩猟生活を経験している。
　なので、どんな手を使ってでも勝利をもぎ取る手練手管を直感的に察知できていた。
「今日はよろしく頼む。俺は右側の馬役を希望したい」
　彼は自らポジション指定を行った。
　特に反対がないのですんなり承認されたが、内心ヒヤヒヤものだった。
（他のポジションでは“アレ”ができないからな……）
　どうも、マウルも日暮ねむる同様、よからぬ事を企んでいるようだ。
　浅沼はマウルの思惑などつゆ知らず、最終競技へ思いを馳せていた。
「今日は濃い一日やったなー。それもこの騎馬戦が最終競技や。白猫が勝つよう、頑張らんとな。まー、実行委員としては誰も怪我なく終わるのが一番やけど」
　寝子高の騎馬戦は体当たりでの馬の潰し合いが認められているため、実行委員の浅沼は気が気でなかった。
「さーて、俺は前の馬役を希望やなー。空手やってきて足腰はある程度は鍛えてるけど、足元には注意しとかななー……」
「浅沼が前なら、俺は後ろの馬をやるぜ！　がっちりと七星ちゃんを肩車するぜ！　おっと、やましい気持ちはないぜ、クラスメイトだしな！」
　七峯は紳士だった。
　女子の太ももに挟まれるというシチュエーションは、普段のムッツリ七峯なら諸手を挙げて狂喜乱舞するだろう。
　だが、それよりも今は「この競技で勝ちたい」という意欲の方が何倍も上回っていたのだ。
　天満も七峯のことを信頼しているようで「重たかったら言ってくださいね？」と気を遣っていた。
「それじゃ、私が左側ね。ちょっと試したいことがあったから、後ろ以外なら問題ないよ」
　羽生の顔が勝負師の顔へと変わっていく。
「みんなも協力してくれると嬉しいな。実は……」
　羽生の作戦が通用するかどうかは、開戦までのお楽しみである。
「それでは皆様、頑張ってまいりましょう？　全員が生きて帰るのが目標ですわ。……あ、陣地にハチマキを持ち帰るという意味ですよ？」
　天満の物言いは、まるで本当の合戦へ出陣する武者たちへ投げかけるような内容であった。

　そして、開戦直前でようやく騎馬を組めたのは朝野未沙。
　後ろの馬は串田美弥子。
　前と左右は見ず知らずの白猫組の生徒だ。
　ちなみに、全員女子で構成された騎馬である。

「なんだろう、この女の子の楽園……！　あたしの命令１つで自由にどこへでも行けるのね！」
　朝野は既に本来の目的を忘れている！
「あ、朝野さん？　なんかスキンシップが激しいような……？」
　串田は先程からベタベタと体のあちこちを朝野から撫で回されていた。
　朝野は即答した。
「可愛い女の子とスキンシップして何か問題あるの？」
　串田の体に緊張が走る。
「あの、私、そういう趣味はないんだけど……」
「嫌がる顔も可愛い♪　あら、あなたも可愛い！」
　朝野の心拍数が急上昇する。
　串田は両手で顔を覆って絶望してしまう。