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寝子島高校
そんな季節の変わり目に
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黒い天蓋に白い穴が穿たれたような月が出ている。
青いシャツに白衣を着た
斑鳩 遙
は通りを歩きながら視線を上に向けた。
「珍しく早い退社になったな」
自宅を通り越して尚も歩く。行き着いた先は古めかしい外観の講堂であった。
寝子島クラシック同好会
が主に利用している。近づくと激しい旋律が微かに耳に届いた。
「先客か」
遙は密やかに講堂の中に入っていった。目立たない隅の壁に背中を預けた。細いフレームの眼鏡の中央を人差し指で押し上げると腕を組んだ。
降り注ぐ月光に背を向けた
神嶋 征一郎
がヴァイオリンを弾いている。シックな黒いジャケットに情熱的な赤いシャツを着ていた。
旋律の激しさで青い髪が乱れる。弓は刃物の鋭さを見せた。弦を押さえる指が弾ける。冴え渡るピッツィカートに、ほう、と遙は声を漏らした。
唐突に演奏が終わる。征一郎は氷にも似た青い眼を遙に向けた。組んでいた手を解いて壁から離れた。
「見事な演奏だ。先程の曲はパガニーニの『ゴッド・セイブ・ザ・クイーン』か」
「斑鳩さん、だよな。良い耳してるじゃねぇか」
年下とは思えない物言いに遙は動じることはなかった。
「少し話でもしようか」
「同じ同好会だがほとんど話した事ねぇからな。その提案に乗ってやるぜ」
征一郎の不敵な笑みに、そうか、と一言で返した遙は個室へと向かう。
取り残された形の征一郎は舌打ちした。深呼吸で表情を改めてヴァイオリンを構える。静かな出だしで『グリーンスリーブス』を弾き始めた。
「少し待たせたかな」
遙が戻ってきた。両手に持ったティーカップから白い湯気が立ち上る。
「ティーパックで淹れたものだが温まる。こちらが神嶋君の分だ」
差し出されたカップを無視した。征一郎はヴァイオリン一式をピアノの上に置いて、貰うぜ、と言って受け取った。相手が一口、飲んだところで遙は話し始めた。
「神嶋君は同好会を気に入っているのか」
「心地良い生温さだが、ずっと浸る気はねぇ。自分に仲良しごっこは不要だ」
「手厳しい意見だな。神嶋君が出場したというコンクールの二位が影響しているのかい?」
棘を含んだ言葉に征一郎は紅茶を啜った。
「あのコンクールは世界の広さを知る良い機会になった。こんな小島に自分以上の奴がいるとは思わなかったぜ」
「人によっては神嶋君の演奏を上と主張する人もいるらしいね」
「当たり前だ。一位のドイツ帰りに全てが劣るとは思ってねぇ」
「……傲慢な子供だな」
その呟きに征一郎の表情が険しくなる。遙はカップを持ってピアノまで歩いた。手前の椅子に座ると沈んだ表情で鍵盤に目を落とす。
「……神嶋君は時任に似ている」
「誰だ、そいつは」
「俺の友人で有名なピアニストだった」
だった? と征一郎は疑問符を付けて返した。遙は儚い笑みで頷く。
「今年の春先に自殺した……あいつも君と同じだ。自分より劣る人間を見下して憚らなかった。楽器に違いはあるが、君の演奏はあいつに似ている。いや、あいつの方がもっと傲慢で淫らだったな」
「いたな、そんな奴が。顔は覚えているぜ。斑鳩さん、淫らとはなんだ?」
遙は遠い眼差しで少し身を震わせた。
「ピアノの旋律が耳を舐って入り込み、爪先から脳天までを甘美な快楽が満たして――。似ているが、まだその高みに届かないのがもどかしい」
神妙な顔で聞いていた征一郎は鼻で笑った。
「そいつは自殺したんだよな。自分の演奏に自信がなくなって逃げただけじゃねぇのか。高みがどうとか言ってたが、未熟は成長の可能性がある。それに自分が目指すのはそんな演奏じゃねぇ」
「そうなのか」
「斑鳩さん、亡霊の幻想にわざと憑りつかれてるのか? 二人揃って精神が子供だろ」
征一郎は言い切った。その強さに遙は打ちのめされた。
「確かに、俺は望んで過去に囚われているのかもな」
言葉が途絶えた。重々しい沈黙が二人に伸し掛かる。最初に口を開いたのは遙であった。
「何か一曲、弾いて貰えないだろうか」
「急に、言われてもだな」
カップの中身を飲み干すと征一郎はヴァイオリン一式を手にした。考え込むような表情から一曲に絞り込む。
「ブラームスの『雨の歌』を弾いてやる」
遙の言葉を待たないでヴァイオリンは音を奏でる。黒雲が垂れ込めて、そぼ降る雨のような暗い曲ではなかった。緩やかな流れには温かいものを感じる。例えれば暖炉の火。冷えて固まった身体を解し、凍り付いた心さえも溶かして癒す。
征一郎は思いを込めて弾いた。最後の一音が終わると同時に軽い拍手が送られた。
「良い演奏だった」
「名曲だからな。それに手は抜かない主義だ」
傲然と胸を張る。遙は毅然とした態度で言葉を返した。
「その大き過ぎる才能に君自身が潰されないことを祈るばかりだ」
「祈りが必要なのは貴方の方だ。いつまでも亡霊に憑りつかれてるんじゃねぇ」
「いつかは決着を付けるつもりだ」
遙は陰りのある顔で言った。征一郎は親指を立てると自身の左胸に宛がった。
「他者に耳を傾けなければ心が揺らぐことはねぇ。自分が自分で有り続けることが大切なんだ」
「人生は長い。挫折を味わう時もあるだろう。その時は俺が憐れんでやるさ」
遙は椅子から立ち上がる。冷めたカップに口を付けて一気に傾けた。
「憐れみだ? その言葉、そっくり貴方に返すぜ」
征一郎は背を向けた。ヴァイオリンをケースに収めると講堂を突っ切って外に出た。一度として振り返ることはなかった。
「子供は嫌いだ」
遙は征一郎の消えた方向を見て言った。残されたカップを両手に持って片付ける。その合間に声が漏れた。
「……愚直に残酷に、心の深い部分を狙って抉ってくる」
本音を吐露した。誰もいない講堂でやたらと声が響いて聞こえる。遙は左胸を手で押さえた。
「そうではないな」
子供の声が心に響いた夜であった。
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あとがき
担当マスター:
黒羽カラス
ファンレターはマスターページから!
季節の変わり目に思うことは人それぞれでした。
紅葉と同じで鮮やかな赤があれば、ほんの少し憂いを帯びた赤もありました。
混じり気なしの黄色はとにかく元気で、リアクションを書く私に活力を与えてくれました。
寝子島の九月中旬は過ごし易いと思いますが、現実では寒さが身に染みるようになりました。
師走の忙しさと相俟って体調を崩さないようにしてください。
皆様の健康を祈りつつ、あとがきを終わりたいと思います。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
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担当ゲームマスター
黒羽カラス
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ★(100)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
20人
参加キャラクター数
20人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年11月21日
参加申し込みの期限
2014年11月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年11月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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