シナリオ「そんな季節の変わり目に」

そんな季節の変わり目に

　時に冷たい風が吹くようになった。
　山の先端が微かに色付き始める。
　人々の装いに変化の兆しが表れた。
　賑やかな会話を楽しむ人がいた。
　どこか寂しい横顔で歩く人がいる。
　赤くて丸いポストでは真剣な目で封筒を入れていた。
　公園のベンチに座った人が何もしないで時を過ごす。

　暑かった夏は遠のいた。秋の足音が近くに聞こえる。
　季節の変わり目を表現する言葉が形にならない。
　不安定なままで時が緩やかに過ぎてゆく。
　身を置く人々の心に何かしらの想いを投げ掛けた。
　そんな季節の変わり目に人々は動き出す。

　そんな季節の変わり目に――。

ゲームマスターより

担当ゲームマスター

黒羽カラス

マスターコメント

　休日の僅かな季節の変化を感じ取った人々が思い思いの行動を取るシナリオです。
　島外から引っ越してきて間もない人はホームシックになるかもしれません。
　学校や職場で馴染めずに戸惑いや焦りを覚えている人もいるでしょう。
　過去の記憶に関連して心を塞いだり、変わりゆく風景に去来する様々な想いも考えられます。
※一日に限定します。昼夜の制限はありません。このシナリオに関しては小さな子供の夜歩き、
　または違法行為等はマスタリングの対象になります。

　そのような時に人は何をするのでしょうか。
　楽しいこと、悲しいこと、乱暴なこと、何もしないで思いを受け入れますか？

　季節の変わり目にあなたは何を感じて、どのような行動を起こすのでしょう。
　自分なりの過ごし方で表現してみてください。

サンプルアクション（1）

プレイヤーの目的・意図: 所々で弱さを見せるＰＣでお願いします。
キャラクターの目的・理由: 久しぶりに友人と飲むことになった。
転勤して数ヶ月で、別に懐かしくもないが。
キャラクターの行動・手段: 会社帰りなのでグレーの背広を着用。
待ち合わせに指定した居酒屋のカウンターで飲んでいる。

一合の徳利が空いた。
「もう一本、一合でくれ」
そこで肩を軽く叩かれた。アイツは、おひさ、と声を掛けてきた。
俺はさっきの注文を取り消して二合の徳利にした。

「おまえも背広かよ。で、会社の方はどうなんだ？」
俺は皿に残っていた鶏皮の串に手を伸ばす。もちもちとしたこころはアイツにやった。すまんな、と拝むような仕草が親父くさい。ま、俺と同い年の三十だけどな。

アイツは明るい顔で不景気な話をした。夏のボーナスは電化製品の現物支給だったらしい。俺に電子レンジを格安の値段で勧めてきた。
「いらねえよ。俺も同じ電気屋勤務だぞ」
少ないながらもボーナスは出たけどな。そこで奮発した。俺の奢りで刺身の盛り合わせを注文した。

飲んでるうちに俺の話になった。アイツは俺の体を心配した。確かに激務のせいで八キロは減った。胃の調子もよくない。上司と気が合わないのも原因の一つかもな。
そんな愚痴っぽいことを酒の力を借りて語った。

寒さを感じる時間に店を出た。
「またな」
たったそれだけで温かい気分になった。

サンプルアクション（2）