そんな季節の変わり目に｜リアクション

そんな季節の変わり目に

　山登りが相当に堪えたのか。帰りの車の中で修は眠っていた。風間は細心の注意を払って車を運転した。車内には少しの揺れも感じられなかった。
　子犬のカーキーは暇を持て余して修の身体を攀じ登る。足場としては不安定な肩に乗っかると頬を舐め始めた。
　修は薄らと目を開けて子犬の背を撫でた。窓の向こうを黒い人物が横切った。
「……常闇か」
　常闇月は塀の上にしゃがんで走り去る車を見ていた。
「八神さんですね」
　白紙の手帳に素早く何かを書き込んだ。月は遠ざかる二人の背中に目を戻し、秘密裏の尾行を再開した。

「寒くなってきましたね。戸締りをしましょう」
　着物姿の時子が部屋に入ると、木の置物で鷹が羽を休めていた。
「こんばんは、ヨタカさん」
　時子の声に反応した鷹は大きく翼を広げて飛び立った。
「いってらっしゃい。それでは戸締りを――」
　入れ違いでコノハズクが飛んできた。止まり木に適しているのか。気の置物に落ち着いた。
「お久しぶりですね……でも、戸締りはどうしましょうか」
　時子はにこやかな顔で言った。

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