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満月の夜に
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「今日は月がきれーだねぇ」
ターコイズブルーの人懐っこい瞳を細め、
バルシュ・コルテュルク
はドネルケバブを売るワゴン車の販売窓口から身を乗り出す。モヒカンに整えた固そうな黒髪の下、情に厚そうな眉が楽しそうな笑みに和らぐ。目尻に優しい皺が寄る。
「故郷じゃ月と言えば三日月だけども、まん丸のお月さんも悪くねぇよな」
店先で待つ肩から古いカメラを提げたどこかくたびれた風貌の男性客に愛想よく言いながら、出来たてのドネルケバブを手渡す。
移動販売用のワゴン車のいいところは、許可さえ取れればどこでなりと商売が出来る事。ここしばらくの販売場所は、頂上に湖を抱く九夜山の中腹に位置する寝子温泉街。小さな温泉街の端にワゴン車の店を開店させれば、物珍しさからか結構お客は集まってくれた。
宵の口にふらりと現れた外国人らしいカメラ片手のこのお客は、温泉街でも撮りに来たのだろうか。
「そういやよく夜にピクニックしたっけな」
「私の母国には月を愛でる習慣はないんだけど、」
トルコ出身のバルシュに代金を手渡しながら、イタリア系米国人の
ピーター・ビアズリー
は深いブラウンの眼を照れ臭そうに細める。そうして語るは、
「うちのかみさん……日本人なんだけどね? 『お月見』について熱弁をふるってくれてねえ……」
今は離れて暮らしているものの、その愛情には全く変わりのない日本人の妻とのエピソード。
「私もそれには感心してしまってね。二人で山まで登っちゃって月を見に行ったっけ」
「日本人は特別に月見をする日なんだっけか? 月夜のデートか、羨ましいぜ」
「いやあ、それがねえ、山に登っちゃったはいいけどその帰りにね、」
にこにこと言いかけて、まだあったかいドネルケバブを一口。美味しいねえ、と笑って、月に照らし出されて夜に浮かび上がって見える島北部の山を見上げる。
「この島で見晴らしの良い山というと九夜山かな?」
たしか展望台があるんだっけねえ、と話の途中なことも忘れたように別の話を口にする。
以前、青い鳥を探して山に上った時は展望台までは行かなかった。
「今日はせっかくだし行ってみようかなあ」
「思いついたらキツジツってなぁ」
相槌を打ちつつ、バルシュはぱちんと両手を打ち合わせる。
「じゃ、一緒に行こうぜお客さん」
名を名乗り、手を差し出して笑うドネルケバブ売りに、ピーターは躊躇なく大きく頷く。同じように明るく名を告げ、トルコ人とイタリア系米国人は握手を交わす。
「あ、でもバルシュ君、お店は?」
「たまには早めに閉めて出かけるのも悪かねえ。食いながら待っててな、準備すっから」
ワゴン車の前の椅子にピーターがよいしょと座るのを確かめ、バルシュは手早く店仕舞いに取り掛かる。余りものでお弁当やおやつも作り、ワゴン車の助手席に放り込んでいたディパックに小型コンロやジェズヴェと呼ばれるコーヒー用の鍋等を要領よく詰め込む。
準備は完了、とばかり閉めたワゴン車の外に出てみれば、宵の町を眺めてひとりでケバブを食べていたはずのピーターの隣には東洋人と覚しき幼い少女が地面に届かない足をぶらぶらさせて座っている。
「ん? どうしたその子」
「いやあ、ひとりで展望台へお月見しに行くって言うからねえ、一緒に行こうって誘ったんだよ」
ピーターに背中をそっと押され、黒髪お団子頭を蝶の髪飾りで飾った少女は椅子から身軽に飛び降りる。膝に置いていた風呂敷包みを背負い、青紫に翠挿す、子猫のようなくるりとした無垢な瞳でバルシュを見上げる。
「るいり、ピーターとバルシュと一緒に行く、いい?」
「もーちろん!」
ドンドルマと呼ばれる伸びるアイスを売る時のパフォーマンスじみた大仰な仕種で、バルシュは両手を広げる。歓迎の意を示す。
「展望台でお月見、とってもたのしみ。胡麻団子と月餅、沢山こしらえた。てっぺん着いたらお月様を見ながら食べる」
子猫がじゃれるように身軽くはしゃいで、少女はぴたり、動きを止める。くるりとバルシュとピーターに向き直る。
「るいり、
劉 瑞麗
。るいり誘ってくれた、謝々」
礼儀正しく、オリエンタルな礼をする少女に、三十路四十路のおじさん二人は目尻を下げる。
「いざ出発。山登りは腹ごなしにちょうどいい」
宵闇の町を元気よく歩き出しながら、瑞麗は後について歩き始めるピーターとバルシュの足音を確かめる。二人とも、なんだかとても仲良しに見えるのは、二人ともがこの国の生まれではない外国の人だからだろうか。一緒に歩く間に、瑞麗の知らない国の話をたくさん聞かせてもらおう。
色鮮やかなチャイナドレスの端を翻し、跳ねるように瑞麗は歩く。髪に飾った蝶の髪飾りが宵の空に翅舞わせるかの如くひらひらと揺れる。
「瑞麗君、背の荷物は私が持とう」
「何故?」
「何故かって言われたら、イタリア人の血、って答えちゃおうかな?」
とぼけた口調で飄々と言いつつピーターが差し出す手に、瑞麗はぱちぱちと瞬きしながら風呂敷包みを渡す。小さな体におやつと魔法瓶を詰めた風呂敷包みの重さは実は結構堪えていた。だから正直有り難い。
「謝々、ピーター」
「はい、どういたしまして」
月が高くなるを待たず、温泉街の道沿いに置かれた燈籠に灯が入れられる。月明かりと燈籠の火に照らし出される温泉街を抜け、砂掛谷駅を横切る。展望台前駅に至るロープウェイを横目に緑も深い登山道に踏み込む。
普段ならば月と星明かりが頼りな登山道は、今日ばかりはゆらゆらと火を揺らがせる燈籠の灯りにぼうやりと照らし出されている。
「燈籠きれい」
「燈籠と言えばねえ、昔かみさんが大きな石の燈籠を買おうとしたことがあってねえ」
「石?」
「そう、石。瑞麗君よりも大きかったねえ」
燈籠の光を眺め、たぶんお嫁さんを想ってだろう、ほのぼのと眼を細めるピーターの横顔を、こっそりお嫁さん募集中なバルシュは羨ましく思う。
「いいなぁ、俺にもピーターみたいに素敵な嫁さんが来てくれたらいいんだが」
夏の瑞々しさを残す木立に挟まれた夜空を仰いで朗らかに笑う。
「ははは、お月さんからは俺の嫁さんが見えねえか聞いてみるか」
地上の道を行きながら、空の道を行く満月に向けて手を振って、
「ルイリー?」
先を歩いていた瑞麗が森の奥へと顔を向けて動きを止めているのに気付いた。名を呼んで傍らに立つ。少女の視線を追ったその先、燈籠の炎の色とは違う、蒼白い光が森の暗がりに見えた。
「おや……?」
同じ光を見たらしいピーターが不思議そうに呟いて、
「ススキゆらゆら」
光の正体に真っ先に気付いた瑞麗が首を傾げて、
「……ここどこ?」
ぐるり、周りを見回す。道の左右に並んでいた燈籠の光が消えている。それでも歩くに苦労しないほどの明るさに空を仰げば、さっき見上げたのとは別のものに思える程、樹木に天辺に触る程に大きな大きな満月が夜空を埋める。風に乗って、獣の吠える声が響く。甲高い声で笑う女の声が響く。
ついさっきまでの穏かな月夜とは違う異様な雰囲気を感じ取り、瑞麗は傍らに立つ二人の服の裾をきゅっと握る。はぐれたら大変。
「大丈夫か?」
「何だかおっかないねえ」
励ますように笑いかけてくれる二人を見上げ、瑞麗はこわくない、と首を横に振る。怖くないけど、
「ふたりが迷子になっちゃ大変」
こんなに怖い森、もしかしたらお化けが出るかもしれない。ここまで一緒に歩いてきた二人がお化けに食べられるのはとても哀しい。
「ちゃんと掴まる」
強がる少女に叱られ、おじさん二人は少女の手を片方ずつ取る。
左右を守って歩いてくれる大人の男性の手に片方ずつ掴まれば、小さな瑞麗の足は浮く。一歩踏み出せば宙に浮く。もう一歩地を蹴れば、大人の足での数歩分、瑞麗はひらり宙を飛ぶ。二人の手に掴まって、思わず笑顔になる。なんだか楽しくなってきて、瑞麗は大人の友達二人を見上げる。
今までは人見知っていたけれど、もう大丈夫。
「二人は他にお月さま見たい人いる?」
「瑞麗君は居るのかい?」
ピーターに訊ね返されて、瑞麗が思い浮かべたのは人込みが苦手で、だから今は根城にしている廃屋マンションでお月見をしているだろう叔父。
本当は叔父と一緒に来たかったけれど、
(わがままゆわない)
瑞麗は白い眉間に小さな皺をきゅっと寄せる。
「るいり、いい子。いい子はがまん」
がまんがまん、と呟く少女の小さな手を、バルシュは大きな手で強く握る。ともかくも道は山頂まで続いている。山頂には巨大な黄金色した満月に照らし出されて、小さな建物が見える。あれが目指す展望台なのかも怪しいが、じっとしているよりはいい。
「おやおや」
「あいやー」
ピーターがのんきな声を、瑞麗が驚きの声を上げる。
「ハロウィンはまだじゃなかったかなあ」
考え込んで頭を掻くピーターに向け、森からのっそりと数体現れた二足歩行の狼達が獰猛に牙を剥く。森の中に佇む黒い服と尖がり帽子の魔女が喧しい声で笑う。
「そういえば、ヨーロッパじゃあ満月の夜に出るとか何とか聞いたことあるけど、……おおい、君達も日本にお月見に来――」
のんびりと話しかけるピーターに向け、狼男が地を蹴る。鋭い爪を振りかざし、月夜に光る牙を剥き出して迫る。
「おおっと?」
眼を丸くするピーターの前、瑞麗がとんぼを切って立つ。チャイナドレスの袖翻し、月に煌く刃に似て取り出すは、袖の下に常時隠し持つ鉄扇。
「泰山府君に伏して拝み奉る」
唇に乗せて凛と唱え鉄扇を振れば、月よりも赤く明るい炎が渦巻いて飛び出した。轟と唸り地面に広がる。狼男達が悲鳴上げて後ずさる。
「今のうちに逃げる!」
大人の友達二人に言い放ち、特技のカンフーの構え取りすばしっこい動きで敵を翻弄しようとする瑞麗の襟首をバルシュが掴む。猫にするようにひょいと持ち上げ、ピーターと手を繋がせる。
「バルシュ!」
「お嬢ちゃんに守られちゃ男が廃るってもんよ!」
魔女が怪しげな呪文唱え、地面から黒い水をごぼり音たてて噴出させる。赤い炎が呑まれて消える。
「凄いねえ、今の何だい?」
「るいり、将来、中国雑技団」
ピーターの背中に庇われながら、瑞麗はその場で跳ねる。
「るいり、戦う」
少女の抗議を背に、バルシュは燻る炎を飛び越え狼男二人に飛び掛る。
「こら怖い顔してねえで、」
ターコイズの眼に強気な笑み浮かべ、二体の獣の首元目掛け強烈なラリアットをぶちかます。
「んな顔じゃ子供がびびるだろうが!」
そのままガシリ、二体の狼の頭をまとめて両腕でホールドする。瞬間、バルシュの自覚していないろっこんが発現した。笑顔で二人以上のものと肩を組むことで肩を組んだもの同士の対抗心を和らげるろっこんの力は、人を襲う狼男達から敵愾心を奪う。
困惑顔でうずくまり顔見合わせる前衛狼男達に、後衛魔女が途方に暮れる。
「お? 何か分かってくれたか? そっちのお姉さんもほら、こっち来い、腹減ってるなら料理分けてやっから」
女性に手荒なことはしない主義のバルシュに愛想よく手を振られて、魔女は呪いの言葉撒き散らす。お座りの狼男をぶん殴り、バルシュに詰め寄る。恐ろしくお怒りの妙齢の女性に迫られ、バルシュは誤魔化し笑いで一歩さがる。もう一歩下がる。
「退却すんぞ」
「追いかけっこはおじさんにはちょっときついねえ」
ピーターは瑞麗をひょいと背に負う。
「るいり、走れる」
「ここは大人に任せてねー」
バルシュと並んで全力ダッシュな疲れる山登りを開始する。
道の途中で息のあがったピーターから瑞麗を受け取り、バルシュは故郷での兵役仕込みの体力で山道を爆走する。月明かりの山道を駆け上るうち、魔女の罵声が遠くなる。狼男達の見送りの遠吠えも遠ざかる。
足元が妙に明るいと思いバルシュが足を止めれば、そこは燈籠の光に照らし出された元の世界の登山道。前に後に、燈籠の道を楽しむ人々の姿も見える。視線を上げて間近に目指す展望台を見、バルシュは息を吐く。
「やれやれ、何とか着いたかな……?」
満月に間に合ってよかったよ、とピーターが笑い、バルシュの背中から元気よく降りた瑞麗がまんまるの大きい月に両手を伸ばす。ぴょんぴょん跳んでも月には手が届かず、首を傾げる瑞麗の小柄な体をピーターが抱き上げ肩車する。
「届くかい?」
「るいりの手、届きそう」
「おお、アスランが吠えてるのがはっきり見えるなぁ」
バルシュが月の模様を吠えるライオンに見立てる。
「……あ? 見えねーか?」
「私の国では女性の横顔、に見えると言うねえ」
「うさぎ、臼で薬撞く。不老不死の薬」
「同じものが別に見えるってのも面白い話だ」
米国人と中国人から月の模様の話を聞き、トルコ人は興味深げに相槌を打つ。三人揃って展望台に上り、幾つも設えられたテーブルセットの上に持って来たものをそれぞれ広げる。
「月に見る影が違おうが、まぁ、美味い物食った時の喜びはおんなじだよな」
言いながら、バルシュはテーブルに小型コンロを置く。水とコーヒー豆、豆と同量の砂糖をジェズヴェに入れ、コンロに掛ける。
トルココーヒーが出来上がるまでの間に連れ二人に勧めるは、ビスケットを砕いてチョコレート味にまとめピラミッド型に固めたピラミット・パスタスに、洋梨を甘く煮たコンポスト。ドネルケバブの削いだのは後で温め直して供することにして、
「トルココーヒーは初めてかい?」
興味津々の二人にトルココーヒーを振舞う。
「おっと底の豆滓まで飲むんじゃねえぞ」
言いながら、豆滓が沈んだ後の上澄みだけを飲んでみせる。
「お月見の準備は完璧だね」
「るいりも。るいりも持って来た」
トルココーヒーが冷めるのを待ちながら、瑞麗もいそいそと風呂敷を広げる。大好物の胡麻団子と月餅を出し、二人にお裾分けする。魔法瓶には花の香りの中国茶もある。コーヒーがなくなったら、二人に振舞ってあげよう。
時間はたくさんある。三人でゆっくりのんびり、楽しもう。
「いやあ、ご馳走だねえ」
ピーターがご機嫌で月を見上げる。月に女性の横顔を見る。
バルシュが同じ月にライオンを、瑞麗が兎を見て、みんな一緒に顔を見合わせ笑いあう。
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日常
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50人
参加キャラクター数
50人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年12月01日
参加申し込みの期限
2014年12月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年12月08日 11時00分
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