北欧から来た少女　～うさぎさんオーヴァードライブ～｜リアクション

北欧から来た少女　～うさぎさんオーヴァードライブ～

【緊急ニュース！　うさぎ脱走うさぎ脱走これは演習ではない！？】

　うさぎ脱走！　屋敷野梢のねこったーへの書き込みが一部の寝子高の生徒を揺らしたのはある昼のことだ。
　その書き込みを見つつ連絡を受けた、神野美野梨が時間をかけずにやってきた。
「これは見事な脱走っぷりね……」
「私は、この紙の人について調べて追いかけようかと思います」
「分かったわ、こちらは任せておいて」
　美野梨と入れ替わるように梢は駆け出した。
　その梢を見送りつつ、速やかに　美野梨は携帯電話を使って連絡を始めた。
「あ、もしもし、行梨謡先輩ですか？　はい、神野美野梨です至急お願いをしたいことがあるのですが……」
　律儀に最初はフルネームで確認を取る美野梨。
　謡に事のあらましを説明して協力を求める。
「そ、それは大変だ！　協力するぞ！」
　謡は愛するうさぎのためならば、と協力を表明。
　美野梨は、焦る内心をぐっと抑えつつ冷静を保ち、しゃべる。
「私は鍵を直して、小屋で留守番します。先輩はウサギの保護を放送でお願いしてください。ウサギも放送を聞いて戻ってくるかもしれないわ」
「わかった。一応これでも放送部員なのでな、放送室は問題なく使えるだろう」
「お願いします」
　そう言って連絡を切り、続けざまに別の人に連絡を取っていく美野梨。
さらに、梢の作った書き込みにさらに追加で生物部に来てくれた人にはウサギの餌を渡すことや希望者にはケージ、虫取り網も貸し出しすることを書き込んでいく。
「うさ強盗がでた！？　て、食うってどこの人……いや、それより、俺は空からサポートすっから。いってくる」
　という桜井ラッセルのように非常に前向きな返答が次々に返ってくる。
　一つの返信が来るたびに、一つ冷静になれるかもしれない、そんなふうに思いつつ落ちていた鍵に目を向ける。
　壊れた鍵を拾い上げしげしげと見ると、どうやら内部から腐食していたようだ。
　壊れた鍵の取替と、先ほど準備するといった諸々のものを準備するため、ぐっと美野梨は気合を静かに入れるのであった。

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