北欧から来た少女　～うさぎさんオーヴァードライブ～｜リアクション

北欧から来た少女　～うさぎさんオーヴァードライブ～

【一方その頃、裏山では……？　中継その２】

「うーさーぎーまーつーのーでーす！」
　シーリがさらに山に踏み入れようとしたとき、一人の生徒がその道をふさいだ。
「義を見てせざるは勇なきなり！　あたしが相手をするよ！」
　ろっこんによって、いち早くシーリの居場所を特定し駆けつけたのは伊藤佳奈であった。
「邪魔するですか！　お腹空いているので、早くうさぎツカマエタイです！」
「兎は食用じゃないんだよ、食べちゃだめ！」
　ぜぇ、はぁと息を切らしながら訴える佳奈。
　しかし、その訴えをシーリは誤解した。
　つまり、食用うさぎではなかったら、そもそも理事長が嘘をついたことになる、だからあそこにいるのは食用だ、この人は自分を騙そうとしているのではないか？
　そして、何か長い棒のようなものを持っている、つまりこの人は自分をウチクビゴクモンにするつもりなんだ！　と。
　そして、なぜ止めるか、それはうさぎを自分で独占したいからだと完全に思考が空回りを始めている。
「はうっ！　もしかして横取りして食べる気ですね！」
「えっ、それはちがっ……」
　それを聞かずにダッシュして抜けていこうとするシーリ。
「止まりなさい！　このっ！」
　佳奈は秘伝と言われている足さばきでシーリを止めにかかるも、ひょいっと竹刀を交わされた上に、そのまま体を跳び箱の要領であっさりと飛び越えられてしまう。
「あっ」
「うさぎーご飯ー！」
　空腹とはかくも悲しきものである。
　そして遠ざかっていくシーリの背中……。
「あたしも古流剣術を受け継ぐ者、兎の為にも負けられないよ！」
　そう気合を入れ直すと佳奈はシーリを再び追いかけ始めたのだった。