「はわーっ! これがニッポンですか!」
ゴロゴロとキャリーバックを引きながら、一人の女の子がシーサイドタウンを歩いていた。
歩く体に合わせて、雪のように白いフルジップパーカーが揺れている。
パーカーからは、後ろできゅっとまとめられた黒髪が見えるが、顔立ちは日本人ではない。
やがて、彼女はシーサイドタウンを抜け寝子高の事務室へ着くと、元気よく扉を開けた。
「パイヴァー! 事務室はここであってますか!」
さて、事務手続きの間、その少女は廊下でキョロキョロしながら今か今かと待っていた。
「いらっしゃい、シーリ・ハユハさんね。今日からよろしく。私は理事長の
桜栄 あずさよ」
「はうっ? 理事長! 偉いですね」
「偉いのよ」
「すごいですー! あと、あと、ニッポンに来れて、今度は住めてスゴイ嬉しいです! キートス!!」
シーリ・ハユハと呼ばれた彼女は元気よくキラキラと目を輝かせて理事長とぶんぶんっと握手をする。
その姿に、こころなしか理事長の頬も緩んでいる。
何を隠そう、たまたま日本観光に来ていたシーリを面白そうと特別推薦枠を与えたのは理事長であった。
無論、そのための『努力』も惜しまないのが理事長クオリティである。
「じゃ、今は手続き待ちなのね?」
「ハイです! もうケッコウな時間まってます……その間学校を見ていいですか?」
キラキラとした目で理事長を見るシーリ。
「う~ん、ま、学校から出ないならいいわよ。あと、荷物は事務室に置いておけばいいから」
「キートス! あ、ニッポンではアリガトウ! 理事長優しい!」
「よくできました」
ポフッと頭を撫で、理事長は校内見学を許可した。
フィンランドの田舎にある狩猟民族出身のシーリは、さらにこのような質問をした。
「あ、理事長! ここは(食用の)動物を飼っているんですか?」
「ええ、(観察用の)動物を飼っているわよ」
「(食用の)動物の場所はどこですか!」
「(観察用の)動物の場所はねぇ……」
そう言って、理事長は生物部の飼育小屋の場所を教える。
「なるほど、わかりました!」
歩いていくシーリと時計を見る理事長、気が付けばお昼時である。
「そういえば、昼食はどうするつもり?」
「お昼は(食用の)お肉を食べるつもりです!」
「お昼は(食堂で)お肉か~日本の味も美味しいわよ」
それを聞いて無邪気に喜ぶシーリを見つつ、理事長はそのまま自宅へと引き返していった。
それが後にあんな悲劇を巻き起こそうとするとは夢にも思わなかったのである。
「うぅ……おなかすいたのです……」
フラフラと外に出ていくシーリ。目的地はもちろん飼育小屋だ。
さっき書いたメモを片手に、飼育小屋へと徐々に近づいていく。
「はぅわッ! ……うさぎを飼育しているのです。とっても美味しそうなのです、一匹もらってお金を置いておけば大丈夫なのです。あっ鍵……」
そうって鍵に触るシーリ。
しかし、彼女が手を触れた瞬間、カチンと老朽化した鍵が地面に落ちた。
「あ、あれ……カギがとれたのです?」
そう言いつつ、恐る恐るドアを開け放つ。
その瞬間、恐怖を感じたのか一匹のうさぎが飼育小屋から飛び出した。
「あっ! 待つのです……ご飯―ッ!」
そう言って、扉を開け放ったままシーリはうさぎを追いかけていった。
さて、それから数十分後のことであった。
最近公認クラブとして認められた
生物部、その部長の
屋敷野 梢が飼育小屋の様子を見に来た。
「う、うさぎ小屋の扉が……!」
そこには無残にも壊された鍵の残骸と、小屋から居なくなったうさぎたち……。
「……なんだろう、この紙」
愕然とする梢は、はっと残されたメモに気がついた。
『ここの食用うさぎをひとつもらいました。代金は後で請求してください。 シーリ・ハユハ』
「う、うさぎは食用じゃありませんよ!!!!!」
こうして、うさぎ回収劇が幕を開けたのであった……。
モイ! というわけでじんのです。
公認っていい響きですよね、公認公認(拝みつつ
今回のシナリオで主にやっていただくことはズバリッ!
1、シーリ・ハユハを確保する
2、大脱走して校内に散らばったウサギを飼育小屋へ戻す
の二本立てになります。
果たして生物部にウサギは戻るのか……ッ!
みなさまのアクションをお待ちしております!
※補足・説明等
●シーリ・ハユハについて
理事長が質問に答えてくれました。
転校生で、身長は160cm程度、元気そうな感じの女の子。
フィンランド出身の16歳、都市部ではなく大田舎育ち。
白いフルジップパーカー&束ねた黒髪がトレードマーク
自然の中に住む猟師一家に生まれているのでとても俊敏かつ体力がある
将来は祖父や曽祖父のような優秀な猟師になるのが夢
寝子高に転入予定で、日本文化に興味があり日本語も堪能
ポーチの中には簡易サバイバルキットが入っている
※シーリ・ハユハは「ひと」です (大事な情報)
また、シーリがウサギを捕まえた場合かつ
それを止める人物が居ない場合、躊躇なくさばいて食べます
・目撃情報(住民による)
裏山に白い何かを追って入っていくのを見た(20代女)
山道ではなく、山の中そのものに入っていった。(60代男)
そんなに山奥へは行ってないだろう。あの装備じゃ(略)(80代男)
どうやら、裏山の方へ行ったみたいですね~。
●学内に散ったウサギについて
シーリが追いかけているウサギ1匹の他に、学内に6匹います(すべて白毛)
施設内には入っていないようです
外に出れた開放の自由からか、思いっきり素早く動きます
まばらな目撃情報によれば
a、グラウンドに2匹
b、南校舎と北校舎の間に1匹
c、駐車場に1匹
d、正門から東門までの道に1匹
e、プールの裏側に1匹
という情報が出ております。
人数調整など、よく考えてアクションを書いてください。
全体でどう行動するかが大事です
校内のウサギを長時間放置した場合外に出たり
何らかの事故に巻き込まれる可能性が高いです
速やかに小屋に戻してあげましょう