職業体験学習でお仕事しよう！｜リアクション

職業体験学習でお仕事しよう！

●大衆食堂「うみねこ」

　魚戸ケンゾウ、ハルコ夫妻が経営する大衆食堂「うみねこ」も職業体験学習の受け入れ先だ。

　アルバイトの寝子高１年の綾辻綾花は、お手製の体験学習用の名札を仕上げていた。
　小学生と中学生、それぞれのものを作ったほうが名前とかを覚えやすいという配慮からだ。
　臙脂色の『職業体験中』ワッペンをつけていても、名前がわからないと名前を呼びようがない。
　小学生は白色、中学生は黄色のウミネコの形の手作りワッペンをつけてもらうことに。
「これに、体験学習に来た生徒さんの名前を書いてもらえば完成です」
「張り切っているね、綾辻さん」
　職業体験学習中の張り紙を貼り終えた鳴鏡院　総悟に、完成した名札を見せる。
「上手だね」
「小中学生が体験学習に来ると聞いたので、楽しみにしています。アルバイトを始めて日が浅いですけど」
　うみねこ改装、七夕ゆかた祭りの屋台での手伝い、新メニュー考案の恩もあり、魚戸夫妻は綾花に店を手伝ってもらうことに。
「私は小学生の頃に図書館に職業体験学習に行きましたけど、総悟くんはどこかに行きましたか？」
「僕の小学校には、そういうのなかったよ。体験とはいえ、いろんな仕事ができる寝子島の小中学生が羨ましいな」
「そろそろ開店時間だぞ」
　厨房から顔を出したケンゾウが、店内にいるハルコ達に声をかけた。

　家で飼ってる猫のくろとしろを連れ、夢月姫はうみねこへ。
「くろ、しろ、漁港はお魚いっぱいで好きみたい？」
　好き！　と返事したかのように「にゃあ」と鳴く２匹。
　うみねこに着くと、姫は「こんにちは」と挨拶しながら開き戸を開けた。
「職業体験に来た小学３年生の夢月姫です、よろしくお願いします！」
「職業体験学習の子だね。僕はここでアルバイトをしている寝子高１年の鳴鏡院　総悟だよ」
「この子達はうちで飼ってるくろとしろです。くろ、しろ、お店の外で遊んでてね」
　食べ物を扱う店内に猫は入れられないので、漁港付近で遊ばせることに。

「あ、るっちーだ！」
　高瀬練は、友人の八葉るちるを見かけた。
「るっちーもここで？」
「練も？　えへへー、お友達が一緒だと心強いです！」
　友達が一緒だと、職業体験学習は楽しいものになるだろう。
「こんにちはー！　職業体験で来ましたー！」
「よろしくお願いします！」
　職業体験学習に来た姫、練、るちるに、綾花は手作りの名札を手渡す。
「これ、すごくいいです！」
　白色のウミネコワッペンに満足な姫。
「練とお揃いの名札です！」
「るっちーとお揃いだ！」
　顔を見合わせ、ニッコリ笑う練とるちる。
「そのワッペンに自分の名前を書いてくださいね」
　はーい！　と元気良く挨拶し、名前を書く３人。

「良く来たな。俺が店主の魚戸ケンゾウだ」
「あたしは女房のハルコだよ、よろしくね。うちでの仕事のことは、アルバイトの総悟くんと綾花ちゃんが説明するから、ちゃんと聞くんだよ」
　僕が説明するんですか！？　と総悟は驚いたが、センパイとしてしっかりしないと、と説明をすることに。
「私がしますから、総悟くんはフォローをお願いします」
　綾花の助け舟がすごくありがたいと感謝する総悟だった。
「接客の仕事は、お客さんに料理を運んだり、注文をきいたり、お水を運んだりですね」
　それなら出来そうです、と姫は接客を担当。
「お客さんが来たら、いらっしゃいませと元気良く挨拶してくださいね」
「厨房の仕事は皿洗いとか、盛り付けのお手伝いです。揚げ物を作るので、床に撥ねた油で滑らないように気を付けてくださいね」
　海鮮かき揚げがうみねこの人気メニューなので、どうしてでも油で汚れてしまう。
「レジ打ちはあたしがやるから、皆は接客と調理の手伝い頼むよ」