職業体験学習でお仕事しよう！｜リアクション

職業体験学習でお仕事しよう！

●予想以上の忙しさと楽しさ

　レジ打ち、商品の陳列や入れ替え以外の仕事も、蘭月は修也とゆりにしっかりと教える。
「お弁当買ったお客さんには「お弁当あたためますか？」「割り箸おつけしますか？」と聞くもんや。中にはええ、っちゅうお客さんもおるけど、たいていの人は食べるために買うさかい」
　お昼時は忙しくなるけど焦らずやってや、と蘭月は念を押すように言う。
　最後の説明は、接客の基本である挨拶の心得。
「挨拶は声を出してぇや。「いらっしゃいませ！」「ありがとうございました！」は基本やで。元気良く、スマイルでな」
「修也はすぐできそうだね」
「そういうあんたも」
　顔を見合わせ、クスリと笑う修也とゆりだった。
「さっきの自己紹介のノリでええよ。さ、仕事、仕事！」
　明るい子達やな、と、蘭月はふたりの働きぶりがどのようなものになるか楽しみに。

　修也の仕事は、蘭月と一緒に商品の入れ替えと補充。
「へー、このスナック、新しい味が出るんや」
　作業の手を止め、箱に詰めてあるスナック菓子を見る蘭月。
「それ、すっごく売れてるよな。新しいのは何味だ？」
「……寝子　サンマ風味、やて」
　どうやら寝子島限定のローカル商品のようだ。どのような味なのかがすごく気になる。
「そうそう。陳列に回るくらいやったらもう大丈夫やろけど、新製品情報は外で言うたらアカンのがあるから気ぃつけて」
　１回ガチで怒られたことあるさかい、とボソっと言う蘭月。
「そういうのも情報漏えいになるんすか？」
「……せやな」
　蘭月と修也が商品入れ替えをしている間、ゆりはレジ打ちを。
「２点で２３８円になります」
　お客さんから１０００円札を受け取り、レジからおつりを出し、蘭月に教わったとおりにレシートと一緒に両手で丁寧に手渡す。
「ありがとうございましたー！」
　店を出ていくお客さんに、作業の手を休め「ありがとうございました！」と蘭月と修也も笑顔で挨拶。
「ゆりちゃん、良かったで。その調子で頼むわ」
「任せて！」

　お昼時になると、ネコンビにお弁当を買いに来るお客さんが増えてきた。
　その時は忙しいので蘭月と修也もレジ担当になり、会計をしたり、お弁当を温めたり、からあげやフライドポテトなどを用意したり。
（昼飯時のコンビニは超忙しいぜ！　だが、最後までやり遂げてやる！）
　持ち前の根性で仕事を続ける修也を見て「あたしも負けないんだから！」と対抗意識を燃やし、ゆりも自分の仕事をこなしていく。
　そんなふたりを見て、今すぐアルバイトできるのではないかと思う蘭月だった。

　忙しい時間が過ぎると、ふたりは商品補充やレジ打ち、ゴミ捨て等、蘭月に指示されたことを自主的に行っている。
「あたしが店の掃除をしている間、ふたりはレジとかやってな」
　午後になると、客足が少し減るので雑談する余裕も。
「蘭月さん、このお店の普段の様子はどうなんすか？」
　商品補充の手を休め、修也が質問を。
「いろんなお客さんが来るから、けっこうおもろいよ。お客さんで多いんは学生さんとか会社勤めの人かな？　新商品の情報ゲットできるのもおもろいで」
「そうなんすか。話変わりますけど、彼氏、いるんすか？」
「か、彼氏やて！？」
　俯き、顔を赤らめ「お、おるよ……」と答える蘭月に「どんな人！？」と、ゆりが迫る。
　恋バナは、男女問わず興味津々なようだ。

「話の途中だけど、あたし、他のところでもお仕事してみたいからこれで失礼するね。蘭月さん、いろいろとありがとう！」
　別の受け入れ先に行くというゆりに「おつかれさん」と蘭月が渡したのは、ネコンビ商品の割引クーポン券。
「これ、仕事のお礼や。お客さんとして来た時に使って」
「ありがとう！」
「ここでの仕事、すっごく楽しいぜ。俺は最後まで、ここで仕事をさせてもらう」
　修也は、職業体験学習が終わる１６時までネコンビで働いた。